カスタマーレビュー

2010年12月20日に日本でレビュー済み
本書はアラスカの自然を愛し、そこに暮らした写真家の講演集である。

10本の講演テープを起こし、それぞれの章トビラには著者の撮ったオーロラやカリブー(トナカイ)、北極海などの美しい写真が配されている。表紙もふくめて計15点の作品は見ているだけで気持ちがなごんでくる。

いろいろな時期に、日本の各地で行った講演を集めた本だから、<アラスカとの出会い>、<白夜>や<オーロラ>、<先住民の暮らし>、<クマやクジラのエピソード>……等々、同じ話題が何度も語られる。
そのため、池澤夏樹氏も解説するように、一週間ぐらいの間を置いて一章ずつじっくり読んでいくのがいいかもしれない。

しかし、二、三話ずつまとめて読んだ私からいわせると、ひとつのエピソードがどのようにズラして語られているか――さながら<変奏曲>を聞くようにして読むのも一興ではないか、と思う。
さほど長くないので、オーロラの例を引いておこう。

《町中では単純にきれいだなと思いますけれど、例えば山の中で一人で見ていると、強いものだと生き物みたいに動くのできれいというよりは怖いと感じます》(第一章)
《タクシーの運転手さんがオーロラを見ながら運転していて危ないなと思っていたのですが、やっぱりアラスカに住んでる人はオーロラが出ると嬉しくてつい見てしまうんだなと思いました》(第二章)
《自然の中では、オーロラの光をあたりの雪が反射して、まるで昼間のような明るさになってしまうんですね。そういう中に一人でいると、ものすごく恐さを感じます》(第五章)

一頭のザトウクジラに一日中ついてまわったり、クマが冬眠から目覚めるところを見ようと雪のなかで三日間も待ち続けたりする話を読むと、アラスカには私たちとはまったく別の時間が流れているんだな、ということを実感する。そして、そこはかとなく<旅へのいざない>をかきたてられる……。

ちなみに、著者のアラスカの写真は「富士フィルム ウェッブ写真美術館」で見ることができる。
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