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2021年9月8日に日本でレビュー済み
私自身、メキシコのアズテカ文明、マヤ文明などの遺跡を訪問したことがあり、中南米の先住民族の文明がスペインによって完膚なきまでに破壊された歴史について何冊かの本を読んだ。
スペインはヨーロッパを起点として西回りに勢力を伸ばし、メキシコ湾、カリブ海の諸国を「西インド諸島」と名付けた。
さて、本書はポルトガルのバスコダガマが切り開いた、ヨーロッパから東回りにアジアに到達するコースについての記述から本論に入る。日本ではバスコダガマはヨーロッパから、アフリカの南端、喜望峰を巡ってインドに到達した英雄として語られることが多いが、本書によれば通商航海とはなばかりで、艦砲射撃で徹底的に途中の諸国を痛めつけ、そのうえで有利な条件で通称を結ぶという威嚇商法であったことがわかる。
ポルトガルは、この航路開拓によってインドネシアをはじめとする香辛料の産地を勢力下に置き、大きな利益を上げることができた。
これをみた、イギリス、オランダ、フランスなどが、それぞれ「東インド会社」なるものを設立し、香辛料貿易に割って入った。本書では、それぞれの国の「東インド会社」の成り立ち、歴史など個別に詳述するのみならず、それがヨーロッパの文化にいかなる影響を与えたかについても説明されている。
わが国の歴史にも大きな足跡を残した東インド会社。日本は、これらの国の武力の餌食にならず、逆に長崎の出島経由でしか貿易を許さないという強い態度に出た。これは、当時のアジア諸国の中で、日本だけが「国民国家」として独立国の体裁を保ち、武力も強かったので、領土的野心をもっていたスペインやポルトガルをお出入り禁止にすることが出来たという。
オランダが出島に居留することによって、多くの混血児が生まれたが、ジャガタラお春など、歌謡曲でお馴染みの人物にまで説明が及んで至れり尽くせりである。
例えば、お茶は、英国の上流階級の嗜みとされているが、東インド会社が中国のお茶を輸入するまで英国にはお茶がなかったなど興味のある話である。
ここには書き尽くせないが、東インド貿易によって隆盛を極めた東インド会社も、英国に端を発した産業革命によって、アジアの綿布を取引すメリットも無くなり、次第に会社としての勢いを失い、最後には消滅してしまう。
本書は東インド会社、およびその周辺の国々の文明と歴史について細かく説明されていて、その学術的価値を認められ中国や韓国でも翻訳されている学術書である。
惜しむらくは、文庫版にギッシリと内容を詰め込んであるので、文字も小さく読みにくい。もう少し大きな活字を使ってくれたら、もっと読みやすかったろう。
一朝一夕に読み終える内容ではないが、暇なときに少しずつ咀嚼しながら読めば、東インド会社の世界史的意義を堪能できるでしょう。
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