カスタマーレビュー

2020年5月12日に日本でレビュー済み
B29に誰よりも先頭を切って突っ込んでいく勇猛果敢な戦闘機隊長という一面と、その内面に併せ持つ啄木を愛する繊細な文学青年という一面。
指揮官であっても自分の納得いかないことには絶対に従わなかったという反骨精神と
部下を誰よりも大切にし、気にかけ、弱いものを守ろうとした優しさと思いやり。
そんな相反する、けれど一人の人間の多面性としてそれらを包括して形作られる菅野直の人間性。
読み進めるうちにああ、こういう人だったのかと
読んでいくうちにその深い人間性の魅力にやられた一人です。

兵学校時代の思い出話や飛行学生、三四三空以前の南方の戦いについても
多数の友人知人たちの証言を交えながら戦歴だけではなく菅野直の内面にもフォーカスしていきます。
まるで小説や映画の主人公のような華々しいエピソードを持つ人物でありながら、友人知人から見た菅野大尉はどこか可愛らしく等身大で愛すべき友であったようです。
そして決して品行方正なタイプではなかったとしても部下からは信頼され慕われるという面。

兵学校入学からは一気に太平洋戦争へと向かっていく世情のなかで江田島での兵学校生活はとても厳しいものですがほろ苦く、その学生時代のちょっとしたエピソードにクスっと笑ったりできる部分もありました。
フィリピン戦線~三四三空になると戦況もひっ迫しともに死闘をくぐってきた仲間たちが次々と戦死していく…
ラストの章はページをめくるのが重く辛くて、でもその中で最後まで闘志を燃やした菅野大尉の一筋の爽やかさが強く印象に残り読まずにはいられませんでした。
戦史の丁寧な取材、その人間性に迫った描写、すこしユーモアを交えながらも著者自身の菅野大尉への温かいまなざしを感じられます。

7年後の自分の死を予感させるような中学生時代の菅野大尉自身の詩が載っています。
その死がどんな最後だったのかは誰にも知られることなく逝ってしまった
それがなお切なく彼を偲ばせます
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