カスタマーレビュー

2021年2月13日に日本でレビュー済み
単行本で買ってるので購入マークはない。
第1巻では急いでファリンの救助に向かわねばならないので取り敢えず自給自足でモンスター食いながらレッドドラゴンをめざそうという漫画であった。この1巻の最初、第1話の冒頭には1ページだけで物語のプロローグにあたる「千年前に滅びた国の王を名乗る人物が魔術師に囚われており、この魔術師を倒したものには我が国の全てを与えようと言い残して塵になって消えた」という話が出てくる…のだが、1巻のストーリーには一切絡んでこないので、「モンスターを調理して食うコメディ漫画を描くにあたって適当に取ってつけたプロローグ」のようにも見えた…のだが、話が先に進むと、この1ページ部分のほうが物語の核であったと明らかになる。
レッドドラゴンを退治してファリンを救出してハッピーエンド、というのがおそらくは連載開始時の自分を含めた読者の見立てであったと思うのだが、作者は最初からそのさき、言うなればダンジョンのもっと深部にめをむけていたということで、改めて読み返すとそこら中に伏線が散りばめてあるのが解る。
9巻でサキュバスに精気を吸われた状態のライオスが獅子から見せてもらった光景は本作の当初のハッピーエンドだと思われたファリン救出がマルシルが禁忌の古代魔術を使用したことで成立しなくなったあとに用意された第2のハッピーエンドのようでもあったが、こうやって10巻を読むとそう話は単純ではなかろうと解る。
人間とマトモなコミュニケーションが取れずにモンスターに過剰に入れ込むライオスの姿は当初から延々と描かれてきたが、彼を新たなダンジョンの王にしてコトが丸く収まるわけではなさそうというのは9巻後半のミスルンの話からも窺い知れ、カブルーのライオスに対する不安、そしてミスルンの前に現れた山羊が獅子と同じようなモンではないのか、と考えると彼にダンジョンを預けるのは相当不安に思える。
一方でナイトメアによって可視化されたマルシルの不安の源泉、というものもその後もしばしば描かれてきたが、そのへんのマルシルの不安を解消する為の願いというのがこの巻で解る…のだがコレはコレでかなりヤバイほうに発展しそうな考えである。獅子の協力でシスルを制圧さえすればいい、という単純な話では、全く無くなっている。過去にもカナリアにあっさりと無力化されたシスルはラスボスのようだったのが今では他のキャラと大差ないようになっている。なんか外見も可愛らしくなっている。
こうやって構造だけみてみるとライオスとマルシルは無自覚に状況を壊滅的な方向へ運ぼうとしている「無知なる諸悪の根源」にも見え、この2人が世間から疎まれたり、ダンジョン内で他の冒険者から拒絶されたりする理由でもあるようにも思えてくるが、本作は此処に至る旅を連載開始時からずーっとコメディとして描き続けているので、読者はみんなこの2人が好きになっており、状況を留めている側への思い入れのほうが無い、構造と感情が反比例する、という作劇をおそらくは作者は意図してやっていたのだろうと察せられる。
この巻で戦うウサギもファリンもシスルもストーリー自体はどれもかなりハードだが描写は矢張りコメディのようになっている。
客観的にみればもはや険呑としか思えなくなってきたライオスとマルシルだが、それでも読者はこの2人の願いがハッピーエンドに繋がるのを求めるだろう。何故なら2人が好きだからである。ミスルンと同行するカブルーの心配など気にもとめずに楽しげにダンジョン探索を続けている、という対比がカブルー落下後の彼視点の話でも描写されたが、未だに状況の深刻さに気付けてないであろう2人の無邪気ともいえる願いが実を結んで欲しいと思わざるを得ない。
その助けとなるのがチルチャックであり、センシであり、ファリンであり、イヅツミであり、冒険の中で出会った仲間たちであり、片方だけみればいびつな結末を迎えそうな想いを抱くライオスとマルシルの間でさり気に掘り下げられる恋愛フラグであり、それらを束ねて理想的なハッピーエンドへと導くのが、最近は余り意味をもたなくなったように見える”飯”であって欲しいなあと思うのである。
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