上位の批判的レビュー
5つ星のうち3.0カイさんに恨みでもあるのだろうか…
2011年6月24日に日本でレビュー済み
原作ではあまりにも魅力的だったカイ・シデンというキャラクターの本格的な転落が、第二巻から始まる。
その凋落ぶりたるや、涙ナシでは見られない。
一巻でセイラさんに殴られたときの情けなさからして、ちょっと引いてはいたが、ここまで容赦なく嬲られることになろうとは…。
なしくずし的に戦争に巻き込まれる等身大の少年主人公アムロが
物語中盤からニュータイプとして覚醒するに伴い、読者からは感情移入が難しくなるのだが、
その感情移入の対象として終盤まで描かれてきたのが原作でのカイ・シデンというキャラだったと思う。
最初は大型免許を所持しているということをハヤトにチクられ、嫌々ガンキャノンに搭乗、ベルファストで一旦戦線離脱し、それでもホワイトベースの仲間を見捨てることができずに戻り、ミハルとの邂逅で戦う理由を見出して成長していくという、原作において最も物語性の強いキャラだったカイさん。
しかしオリジンではもっとも惜しいことに、このカイというキャラの魅力を完全に殺してしまっている。
序盤からノリノリで戦地に向かうカイさん。台詞は「任せちゃってよ、中尉さん」である。カイさんじゃない…。
なおかつ旧ザクにボコられるガンキャノン。悪夢である。
その他、カイさんの伝説的な名台詞の数々は二巻だけに留まらず大幅カットされている。
あまりにも情けない描かれようなので、のちにベルファストで離脱するシーンでも、特に感慨がない。
原作では「カイが船を降りたらやばいだろ!」ってドキドキした名シーンではあるが、
オリジン版ではカイさんがいなくとも、ホワイトベースの戦力はまったく低下しないからである。
オリジンは画力も構成もすばらしい名作なのだが、ところどころで原作のよさを潰してしまっている箇所がある。
カイさんの描きかたはその最たるものなのである。