上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0田村由美さんって東大医学部に現役合格するタイプだな
2021年12月12日に日本でレビュー済み
素晴らしいのひと言。作者の頭脳、創作に対する誠意、読者へのサービス精神。
こういう漫画家さんを超一流と呼ぶのだろう。
前巻から続いている今回の話は、ポイントが作品の隅々にまで散らばっているため、
ちょっと内容に触れるとネタバレになりかねない。だからあまり突っ込んだことは
書けないんだが……要は「被害者複数の誘拐事件」。そのうちの1人が久能くんと
仲良しの刑事・青砥さんの娘(別れた妻が育ててる)の友香ちゃんで、久能くんが
ほぼ必然的な形で事件に巻き込まれ、解決に参加していく流れ。
この話の見事なポイントは、複数の被害者(子供たち)とその親たちが、並存状態
ではないこと。ボカして言うけど、主犯の奴の思索により、おたがいがものすごく
複雑に影響し合う関係にされてしまう。共闘とも違うし……話の後半からの展開は、
どこの神様が考えたんだって驚かされる。ぜひとも読んでみてください。
展開には触れにくいから断片的に具体的な感想を。
★号泣するDQN臭い夫婦の背中を、慰めるようにさする友香ちゃんは本当いい娘。
終盤ではDQN夫婦もまた……
★青砥刑事が「あっちゃん」と呼ぶ奥さん、なんかすげー人だなと思ったら……
★久能くんの洞察力は相変わらず怖い。一時期より蘊蓄が少なくなったけど、俺は
好きだったのにな。評判よくなかったのかな。事件に直接関わりない話でも内容は
面白いし、本流ともリンクするし、なのに楽しく読んでるって読者は少数派か?
★一応の結末の後、非常に胸糞悪い奴の存在が明かされる多重構造。百倍ムカつく。
★友香ちゃんが赤ん坊の頃の青砥さんとのエピソード、さらーっと描かれてるけど
かなり印象深い。大技も小技も完璧な漫画家さんだわ。
★風呂光さんが相変わらず可愛い。今回の警察側の主役はずっと青砥さんだけど。
★最初から最後まで「あるキーワード」が関わっている。これは出来過ぎかな……
友香ちゃんが言ってたのは偶然だもんね。ちなみにそのワードは12星座のひとつ。
★「動機」については「漫画的によく練ってあるなあ」と感じる人も多いだろうが、
個人的にはちょっと普通の人の感性からは「遠い」かなと思う。明かされた内容は、
ことごとく予想が裏切られる快感を与えてくれたけど。
★すげー嫌な奴として描かれているカマキリ女、妙にかっこいい。造形がうまい。
いやいやいや、シリーズ最高傑作か。4つの蔵のやつも、入れ替わる双子のやつも
素晴らしかったけど(面白さではカエル男の話が絶品だったが、あれは一部描写に
ズルがあった)、今回はその倍は惹き込まれた。