上位の批判的レビュー
5つ星のうち3.0「殺人は犯罪だから問題作です」とかおっしゃるんでしょうか
2021年7月15日に日本でレビュー済み
虐待とか催眠暗示が問題だとかおっしゃってる方って、江戸川乱歩を読んだらなんと言うんでしょうか。
作中で子供の一人を隠すことを勧めていたり催眠暗示を推奨していれば問題かもしれませんが、決してそういったことはなく、怪しい精神科医が怪しいことをしているわけですからなにが問題なのかよくわかりません。作中の登場人物の法律違反、モラル逸脱を問題にしだしたら、それをあばく探偵も警察も必要なくなってしまいませんか?
江戸川乱歩を読んで「殺人は犯罪だから問題作です」とかなってしまうと寂しい話です。
※以下ネタバレあり注意
それはともかく、双子の見分けを依頼したが実は三つ子だったというのは意外性があってよかったと思います。
いくつか疑問があるとすれば叔父は自分の殺人現場を見てしまった有紀子(当時4歳)を殺したかったわけですが、今度は残りの二人(と使用人夫婦とフワフワ)の失踪の現場を今はもっと大きくなった一人に見せている。大人3人と双子(と思われている)の片方がいなくなれば大騒ぎになるし、その現場を見せる方が危なくないですか?
どう考えても悪手。
まず何より、「当時から入れ替わっていたかもしれない」ことに気づかないのはあまりにも納得しかねる。
だって、見分けがつかない子供が3人いて、そのうち2人だけが表に出てきていて入れ替わり遊びしてるんですよ。俺だったら「見分ける人数が増えた!」ってがっかりすると思う。
それに一人息子を事故で亡くしている人物に対して「その事故を仕組んだのは自分」って言わないでしょ。あの事故の原因は違うとは言ってますが、それなら最初から「君の息子の事故は違う」と言うくらいの気はつかっていい。
作中の登場人物の行為が問題なのではなくて、その行為を読者が納得できるかどうかが問題だと思います。ちょっとこの叔父さんあまりにも行動に甘さがあり、納得できなかった。
細かいところで言うと、伝書鳩の使い方が無理。伝書鳩は「帰巣本能」はあるが、それは「どこで離しても家に帰る」ものであって、A地点B地点を行ったりきたりするものでは無い。ミステリと言うなかれと言いつつ、ミステリなので、細かい間違いがあると信頼性が薄らいでしまうので残念なところ。
後半の誘拐事件についてはまだ始まったばかりなので、次巻以降に期待。