上位の肯定的レビュー
5つ星のうち4.0コピペと写真流用以外は完璧です。
2021年5月27日に日本でレビュー済み
闇金ウシジマくんの作者の新連載の続巻ですが、話の焦点が主人公の九条弁護士にまた戻り、九条の家族関係や独立前の事もだんだん明るみに出てきます。
個人的に本巻のテーマは「父と子」だと思いました。勘当された親と死別した息子、恩師で第二の親と対決する息子、認知症の父親を姥捨山同然に介護施設に押し付けた娘、子を愛して強くなった父、子を喪って弱くなった父など、様々な父と子の愛憎関係が描かれます。
加えて秀逸なのは退廃的な世界観。少子高齢化で衰退していく日本は、高齢者の延命のために現役世代への税金と保険料が年々上がり続け、それがますます少子化を加速させる負のスパイラルに陥ってますが、そういう閉塞感の強い国において介護職という時代の被害者的な立場で働く若者の反骨が痛いほど伝わってきます。
「悪役」をただの底の浅い悪役として登場させるのではなく、どうして悪いことに手を染めて、どうしてそれを正当化するのか。そうしたバックグラウンドを丁寧に描くことで、水戸黄門や巷のなろう小説みたいな一方的な勧善懲悪では終わらせないところが白眉な作者です。
一部にややご都合主義的な部分というか、安易なスマホ破壊みたいなまあそういう展開になるよなーとか読めてしまう所もありますが、それにしても第2巻にして一気に引き込まれるほど話の完成度を上げてきました。続きが本当に気になります。
ただ、一つ大きな問題が作画です。
端的に言うと、顔のコピペと写真の取り込みが多すぎます。特に序盤の九条弁護士がジョギングしたり橋の欄干や河川敷にいる一連のコマは、基本的に写真の上にキャラだけ描いた手抜きであり、台詞すらなく内容的に非常に乏しい場面も目立ちます。
また、レギュラーになるかは分かりませんが、この度弁護士事務所に新しいキャラクターが加わるのですが、彼(?)の作画も恐らく実写…なんでしょうかね。他の人物と比べて浮いていて違和感が強いです。
フルデジタルに移行中でいまだ製作体制を模索してる段階だとは思うのですが、考えてみたらウシジマくんの終盤から似たような傾向は見られたので、この作画部分は最後まで作品のネックの一つになるかもしれません。