上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0熱量は狂気へと至る
2020年12月15日に日本でレビュー済み
「ひゃくえむ」はテーマがスポーツだったせいか、作品に込められた情熱はストレートで暑苦しくも好ましいものだった。が、こちらの「チ」はヤバいわ……テーマも媒体も変わったせいか、すべての皮をかなぐり捨てて本領発揮。もう情熱というより狂気。マジキチの域に達している。それでいて読者の目をぐいぐい引き込んで離さない。こんな地味な表紙からは信じられないほどの情熱、いや魂が籠められている。いっそ恐怖すら感じた。こんな作品を描いてくれて、出版してくれてありがとう。
ちなみにP国といった表記は、逃げではなく星新一のエヌ氏などと同じで個性を抜くためだろう。歴史じゃないんですよ、だから責めないでくださいよ、というスタンスをとりたいなら、もっと簡単に架空の国の名前を付ければ終わる話だ。そこをあえてアルファベット表記にしたのは、主眼が歴史に挑むとかそういったところではなく、魂のあり方であることに注目してほしいゆえの、背景の透明化ではないかと思う。