上位の肯定的レビュー
5つ星のうち4.0リットが可愛い漫画なので、彼女の登場比率と評価がイコールとなる
2020年11月27日に日本でレビュー済み
ひとことに要約すると「リットが可愛いね」と言ってるだけの感想なので、それで納得して頂けるなら読まなくてもいいです。
1巻を読んだ時点で「この漫画は何を描きたいのかよく解らない」という疑問を抱きました。魔王討伐、主人公チート、ハーレム、スローライフなどその是非は兎も角、物語のビジョンが明確であれば、読者もそれを目当てに読めば良いのですがこの漫画はパーティを追い出されたギデオン(偽名レッド)とリットのイチャラブスローライフと、勇者ルーティ中心のシリアス展開が並行して描かれるので、そのふたつのストーリーが先でどう繋がるのかよーわからんのです。これは当初、一冊で一応話が纏まるであろう小説を複数巻跨ぐことになるコミック化に際して原作の再構成を怠った作画担当者の問題かと思いましたが、どうも原作に問題があるよーにしか思えなくなってきました。
客観的に見るとルーティはギデオンの実妹であり、魔王と戦う妹をほったらかして辺境で彼女とスローライフを送る彼はどうかしていると思うのですが。
この巻では子どもに剣術を教えつつ、今の生活は自分で選択したものなんだ自分は今の生活に満足していると良いこと言ってるふうに語りますが、妹らについては「あいつ等なら上手くやってるだろう」とさも他人事なので、追い出されたのを理由に体よくバックレただけにも見えなくないのです。
当初、ギデオンは最初から強いだけの守護者という加護であり、伸びしろがないからこそ追い出されたという理屈がありましたが、彼を追い出したのがパーティ内で人望ゼロのアレスの独断であり、ギデオンはパーティ内で戦闘・政治双方の戦術的中心人物でもあり、前巻でのパーティメンバーの会話からサシで戦えばアレスに勝つほど強いと語られ、更に彼が在籍していた頃から第三者目線でも危うさを持っていたルーティを唯一制御出来る人物である、とギデオンが追い出される必然性は皆無であり、彼自身がアレスの提案を拒否するのが普通なのですが、言われた通りにした理由というのが「アレスとルーティがいい感じっぽいのにふてくされた」くらいしか思いつきません。
そんで、彼の加護が守護者だというのはみんな知ってるわけだから、役に立たずに追い出された、じゃなくて、守護者としての役割を全うした、と考えるのが普通であり、であればパーティからの離脱も不名誉でもなんでもないのだから、騎士団副団長という本来の役職に復帰すればいい、のに、偽名を騙ってスローライフを送ろう、とか言うので、変になってしまうのです。
そんな彼の元にリットが押しかけ女房的にやってきて同棲イチャラブスローライフが始まる訳ですが、前述のようにギデオンは色々と放り出しているので、よく平然とスローライフやっていられるなあ、と思うのですが、彼とリット以外は基本、みんなシリアスに現状を捉えているので、より2人のバカップルっぷりが際立つ仕様となっておるのです。
原作の何が書きたいのかよくわりませんが、此処まで読んだ限りでの印象として、たぶん「パーティを追い出されてしまった男が隠遁生活を始めようと思ったものの、それまでに残してきた人間関係や活躍の影響から、否応なく現実のシリアスな問題に再び巻き込まれていく、ほのぼのスローライフの日常に少しづつ影が差しはじめる」みたいな話を書きたいと思うのですが、基礎設定が前述の通りなので、スローライフ送ろうなんて考えてる悠長な状況じゃないでしょ、ずっとシリアスなままでいなくちゃ駄目じゃん、と思ってしまうのです。
一歩引いて見ると、前巻のアルベールら、シリアスに行動している人たちがマトモなのであって、勇者のルーティを追い詰めてるのは全部アレスが悪いみたいになってますがどう考えても最大の責任はギデオンにあり、ギデオンとリットがスローライフ送ろうとするのはどう考えても間違っており、割と深刻な状況でもちょっと時間が空いて2人きりになるとすぐにイチャついてくるリットがどうかしているのですが、この漫画はそのリットの可愛さこそが最大の魅力になってしまっているというのがいいことかどうか知りませんが偽らざる事実なのであります。
美少女絵として作画的にそれほど洗練されてはいない気もしますがコロコロと表情が変化して愛嬌があるので、単行本表紙みたいにきっちり描いている絵よりも本編のほうが可愛いと思います。
このリットの可愛さを最大限に楽しむには、ストーリーからシリアスを排除してスローライフだけに絞るといいのですが、あいにくそうはならなさそうです。そしてシナリオの構成がとっ散らかり過ぎで、前巻のアルベールも、次巻への引きでやってきたパーティメンバーについてもこの巻では全然進展しません。あっちこっちに話がとび、しょっちゅう回想シーンが入るなど構成が雑然としすぎで、これは恐らく原作の問題であって、最大の魅力たるリットもこの作画担当者に魅力を大幅に引き上げてもらっているとしか思えず、シリアスな展開でも空気を読まずにイチャラブしようとするリット可愛いよね、というオツムの弱い結論に至りましたが、しつこいようですが前述のように彼氏共々色々放り出しているのがノイズになってしまうので困ったものです。
さっさと魔王を屠った最強ヤンデレ妹がバカップルのスローライフに割って入る!みたいなコメディかと思ってたらシリアスのほうがメインなんですねー。
4巻の巻末次巻予告で「シリアスになりそうですが取り敢えずリットが可愛いのでスローライフを!」とか書いてありましたが、あれが原作者を除く、読者、編集者ら本書に関わる全てのひとの総意なのかもしれませんね。