Amazon.co.jp：カスタマーレビュー: 大奥 18 (ヤングアニマルコミックス)

2020年7月7日に日本でレビュー済み

ついに次巻最終…。今回はコロナによる自分自身の環境が激変したことにより、
発売日をすっかり忘れていての遅れた購入になってしまいましたが、
思い残す事が無いように、レビューを書かせて頂きました。

我が家は元々、歴史好きな父の影響で大河ドラマやNHK渾身の作品であった
「坂の上の雲」「真田太平記」のテレビを、海外ドラマと一緒に
私が幼い頃から視聴する環境でした。

戦中生まれの疎開経験をした世代に関わらず、父はアニメやゲームなどの
サブカル文化を高く評価し、宮崎駿を尊敬して富野由悠季監督を始め庵野秀明氏や
前田真宏氏、氷川竜介氏を敬愛し、特に「TV版攻殻機動隊」を製作した
神山健治監督には年上の賢者に対するが如くの賛美を惜しみませんでした。

「これからの時代はな、こういう才能ある若い連中がとんでもない
物を作っていくんだよ。お前達が愛するガンダムや池袋や秋葉原が、世界に
羽ばたいていくんだ」

父が亡くなり今年で13年になりますが未だに記憶に強い言葉が、新撰組ファンで
偶然にも戒名に「誠」の一文字を授かった彼が、まだ勉強不足だった私に
「徳川慶喜は卑怯な腰抜けだ。新撰組を使い捨てにしやがって、自分だけ
さっさと江戸に逃げ帰り、挙句にのうのうと長生きして何の責任も負わなかった」

あの憎しみは、おそらく戦時中に空襲下の東京の街で逃げ惑い疎開先で
それは辛い体験を課された自分達に、終戦後何もしてくれなかった上の人々にも
向けられた恨みであったのだな…と、この年になると理解が出来るのですが、
今回の「大奥」を読み、慶喜公の描写に対して父のあの怒りを思い出さずには
いられませんでした。

父方の男性達は身体が弱く、漫画やアニメ好きだった優しい叔父も50歳で
ある日突然帰らぬ人となったのですが、作中の宮様の胸中を当時の自分に重ねて
また家茂公の「死にたくない」という言葉に、叔父の無念を重ねました。

父も愛した「銀河英雄伝説」の中で、二人目の主人公であるヤン・ウェンリーが
「恒久的な平和など望まない。せめて30年…。孫の代くらいまでの戦争がない年月を
望む。その後は彼らの努力に託したい」という台詞があります。

徳川幕府260年の間、大小様々な事件はあれど確かに大きな戦火に人々が焼かれる惨状は
無かった。
それはこの「大奥」で語られているように、その時代において必死に太平を保持しようと
命を削り魂を燃やして努力してくれた賢人達のお陰なのだと痛感するばかり。
医学が進化し女性の地位が向上し、たくさんの英知と犠牲の上に現在の日本が
立っている。

令和2年の今、世界はコロナウィルスの脅威に晒されてあらゆる面において
激変し、それに対応せざるえない状態が続いています。
「大奥」の一巻を買い始めたあの頃、まさか作品の中に描かれた「赤面疱瘡」の
恐るべきパンデミック現象が、リアルに私達に襲いかかるなど想像もしませんでした。

これからの日本や世界がどうなるのか、私自身もおそらく完全なウィルス終焉を
見届ける事が可能かどうか分かりません。
ただ、作品と同じく病魔に対して戦っている方々がいてくれて、私達も脅かされながらも
変貌せざるえない社会の中で生き続ける為に、協力し合い努力している。
それはいついかなる時代においても変わらない、家茂公の理念とした「人と人の絆」
であると、彼女の死をもって突きつけられた気がします。

父と叔父が亡くなって以来、私は常に2人と共にあると存在を身近に感じ、
食べる物や、見る風景、新作の漫画やアニメ、舞台など三人で共有していると
実感しながら生きています。
黒木の言う通り、宮様の隣にはいつまでも微笑む家茂公がいて、同じ味を楽しみ
同じ庭を眺めていると自身の経験から共感せざるえませんでした。

一巻発売からここまで、私個人や社会情勢も本当に色々な事が起こり、
そして最終巻が出た後もそれは続いていく。
でも、何が起ころうとその時のベストを尽くし生きていきたい。もう今は直接会えない
人達の魂と一緒に生きていると思えばこそ。

よしながふみという、天才と同じ時代に生きられて、この傑作と出会えた幸せを
堪能しつつ、壮大な歴史絵幕の終わりを見届けたいと思います。

169人のお客様がこれが役に立ったと考えています

2020年6月26日に日本でレビュー済み

今巻は、劇的なシーンを直接描くのではなく、有為転変の幕末の影響を受けた人々が、城の中で繰り広げる対話劇といった様相ですが、変わらず見事です。

家茂に代わって、跡継ぎを産もうと、側用人の黒木を閨に召し出すも、そこでの和宮に対する黒木の諫言。
大阪城にて没する間際の家茂の言葉。それを和宮に伝える際の志摩（能登）のふるまい。

徳川幕府という日本史上初の太平の世を築き上げた権力機構。その歯車として、機能してきた大奥。
権力の中には、嫉妬、愛憎、功名心あらゆるものが内包されていました。その中で、赤面疱瘡撲滅を主軸とし、登場人物たちは、強大な何かに抗う人々でした。運命は残酷（しかもそれが史実に忠実！）で、私を含めた読者は「ここで死ぬのはあんまりだ」と思う人々とあまりにも多く出会い過ぎてしまいました。
けど、その残酷な運命の中で、人間が、振り絞る勇気や優しさを見て、涙し、勇気づけられてきました。

われわれは、なぜ物語（フィクション）を愛するのか。そこに人間がいるからだと思います。
この漫画は、人間とは何かを、あぶりだす物語でした。
１９巻が「最終巻」とのこと。戊辰戦争、江戸城無血開城など、徳川のおわりとなるべき出来事が控えており、天璋院、和宮（篤姫）、勝、瀧山、黒木（そして、かわいい、かわいい、仲野）など、われわれが愛してきた生き残った人々による最後の物語が紡がれます。

１９巻が出るまで死にません！！！！！

70人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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旅人生より本当は家が好き

読み手が見たい”心の機微”の場面をきちんと丁寧に描いてくれる。

2020年6月26日に日本でレビュー済み

表紙は瀧山と部屋子の仲野。仲野って”もしかして”。ネタバレになったら嫌なのではっきりは書きませんが。
よしなが先生、相変わらず歴史的落とし込みがうまいのですが、
それ以上に登場人物の場面描写、”心の機微”を描くのが丁寧で上手いですね。
漂う空気感が描ける、というのか。読み手が見たい場面をきちんと丁寧に描いてくれる。
和宮と家茂公、偽装夫婦なんだけど互いに真面目で本気に思う優しさ、無二の親友のような描写がいい。
家茂公の『江戸城に帰りたい…!!』こういうのが描けるのがスゴイ。マンガで久しぶりに泣いた。
このシーンは実際もほんとうに”こう”だったんじゃないか、と！そうよ、”こう”描くのが敬意だよね。
皆で「花びら餅」のシーンもとてもいい。

勝海舟は家茂公を『心底惚れたあのお方』と。
瀧山の回想シーン、瀧山も老中阿部正弘に”そう”だったようで。
『抗えぬ宿命のような』お方。『みな同じような事を言う…』と天璋院。
天璋院も家定公に”そう”、和宮も家茂公に”そう”。

『次回でラスト』と！”そう”だろうなぁ、ちゃんと構築された作品だもの。見事な引き際。
無駄な引き延ばしはしない、作品としてさすが綺麗。そして、この作品で慶喜公は完璧に脇役ですね。

68人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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TOMOKO

時代の峠に差し掛かり、一見ごちゃごちゃして見えるが、実はそうではない。

2020年6月26日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

幕末に生きた一人一人が、時代を牽引する歯車の、欠くことのできない一部品であることが巧く描き出されている。佐幕側、倒幕側、誰を主役にしても難しい時代である。将軍夫婦でさえ、作者はその、主役たる位置付けを瞬間的に眠らせる。家茂の臨終シーンは胸がえぐられるように感極まりないものだが、その死さえ、次の瞬間には、幕末という河の流れのなかに飲み込ませていくのである。巧い、と肌がそばだつほど感服した。実際、新時代への移行にあたって、どれだけの人間が時代の大河に飲み込まれていったことだろうか。上記のことからも分かるように、幕末を描くときに最も難しいのは、恐らく、だれを主人公にしても独走的には描き得ないというところではないだろうか。将軍の死ほど大きな出来事ではないにせよ、作者はその視点を随所に巧みに織り込んでいる。一例を上げればＰ１３５の、勝海舟への瀧山の視線がそれである。たかが一幕臣の旗本が、徳川宗家の主の批判を堂々と述べることに対して、瀧山が世の無常を想うシーンでも、勝ほどの存在でさえ作者は一方的なヒーローとして描いていない。とても均整のとれた視点であろう。しかし一方で作者は、慶喜の「百才あって一誠なし」的イメージを崩さずに用いてもいる。朝廷とはけして争うまいと、血気にはやる若者たちを完璧に抑えこんだ彼の信念は、皮肉にも勝海舟の言葉ではないが、「百年の後に知己を持つ」という形容が相応しいものだったとも解釈できることから、そういう意味でステレオタイプ的イメージを少しでも崩してくれれば、と惜しい気もする。しかしそこはバランスであろう。文句は眠らせる。

いよいよ次巻で「大奥」が幕を閉じる。時代の女主人公、天璋院及び和宮を作者がどう動かしていくのか、楽しみにしている！

30人のお客様がこれが役に立ったと考えています

2020年6月26日に日本でレビュー済み

「大奥」もいよいよ・・・
和宮さんが、正直あまり魅力的でなくて（絵柄も）登場以来、ううううーんと思っていたけど、それはおいといて、号泣した。「大奥」は、雑誌では読んでないんだけど、コミックスは、1巻ごとに号泣ポイントがあって、作者の「うまさ」には感動的ですらある。たぶん一生読み返すと思う名作。

27人のお客様がこれが役に立ったと考えています

2020年6月30日に日本でレビュー済み

幕末を描く多くの作家さんが「誰を」「どこの組織を」「どんな事件に」「時節はいつか」など色々な焦点に絞って創作されているのだと思います。幕末は人々の思惑や組織の政治が複雑に絡まり引き合うのがこの時代の特徴なので、描くのは本当に苦労されると察せられます。
よしながさんの幕末はあくまで大奥に焦点を合わせていますが、この閉鎖された大奥と外界をつなぐ勝、慶喜、孝明帝など最小限の主要人物を描くことで巧みに歴史の激動を読者に伝えようとしています。
ちらっと坂本竜馬の存在もうかがえましたが、竜馬なりのジェンダーフリーと徳川観を語らせるあたりも面白かったです。そういう人物の使い方で歴史を知らない読者にも分かりやすく感情移入できます。
人が多く亡くなった時代です。ひとりひとりの生き様や死やその想いに心を揺さぶられずにはいられない。そんな作品だと感じます。

15人のお客様がこれが役に立ったと考えています

2020年6月28日に日本でレビュー済み

とにかく泣きました。
漫画を読んでこれほどまでに泣くなんて
今まで無かったほど大号泣。

この名作が遂にあと一巻で完結してしまうのですね。
最終巻が楽しみでもあり、淋しくもあり。

13人のお客様がこれが役に立ったと考えています

2020年7月1日に日本でレビュー済み

「空蝉の唐織り衣なにかせん綾も錦も君ありてこそ」

歴史を知っている私達は家茂と和宮に何が起こるか知っている…それでも哀しく美しい物語。
胸に石が積まれていくよう。

豪華絢爛たる描写も少なくなり徳川の終焉へと淡々と進んで行くストーリーに物哀しさを感じます。

次巻は最終巻とのこと。
何度も何度も読み返しながら待っています。

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2020年6月27日に日本でレビュー済み

家茂公が亡くなって、宮さんがお土産になるはずだった西陣織を手に取った場面。その後の2ページに涙。他のシーンもすばらしいのだけど、この2ページが一番泣けたなぁ。次巻がラストで、2021年冬発売とのこと。１巻から楽しみに読んできて、終わってしまうのが切ない。でもラストは知りたい。よしなが先生がどんなラストシーンを描くのか今から楽しみです。

9人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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寂しく、地味で、せわしない

2020年6月28日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

家茂をなすすべもなく失った和宮の悲しみに胸を打たれる。
家茂の「忘れ形見」亀之助とのその後の交流を含め、本巻の見どころだ。
一方、本シリーズの特長でもあったあでやかな絵や景色は、すっかり鳴りを潜める。
また、否応なく進む幕末政治の展開に焦りのようなざわめきを感じる。
本巻の特徴を言えば、寂しく、地味で、せわしない。
マンガとしての魅力、面白さは、シリーズの中で最も低調の部類だろう。
それでもこの『大奥』に惹かれるのは、そうした表現が、時代の不穏な慌ただしさをうまく表しているように思えるからだ。
家茂の死、長州征伐、大政奉還…。いずれも歴史上の重大事件でありながら、「大奥」の者たちにとっては、どこか遠い、曖昧な、そんな絶妙な距離感も、ほどよく描かれている。
作中、瀧山は一橋慶喜の宗家相続を機に、大奥の縮小を行動に移す。
もちろん瀧山としては時代の変化に合わせた対応なのだけれど、私たちは実際の歴史を知っている。
本巻を読んでいて覚えるある種の不愉快さは、15年以上にわたって心待ちにしてきたこの『大奥』が終わろうとしていることを、随所に感じ取ってしまうからだろう。

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