上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0人間と社会を描く冒険譚
2019年10月23日に日本でレビュー済み
とりあえず、あちらとこちら2つの世界が交互に描かれています。
謎が謎を呼び、少しずつ接点が見えてきた頃とも言えますが、そのためか、
情報量の多い話が多くなりました。
しばしば挟まれる、どうでも良さそうなボケやギャグについても、核心部分を隠す
撹乱の意味合いもありそうです。
また、登場人物に味があり、ホテル王を目指す少女があったり、こんな時でも
デモ活動をする人々などが普通に存在しているのが面白かったりします。
大切にアレの部位を持ち歩いていたオッサンとか、異様に人間味を感じますが
『人魚の肉』のような不老不死のアイテムは、こういう世界でも出てきがちです。
ネットから簡単に情報を得られない世界だからこそ、口コミや言い伝えなどに
オカルト要素が交じるのも必然です。
そのお陰もあって、情報量が増えていますが、登場する人々が限られた情報下で
あたふたする姿も作品の味と言えるでしょう。
作品は、ある種の冒険譚と言えますが、このような荒廃した世界が舞台となると
どうしても『生』の部分を主軸に描きがちです。
ラブコメ的な要素を入れるものもありますが、あまり積極的ではありません。
そんな中、この作品が『性』を積極的に描こうとしている点に興味を感じます。
おそらくは、生と性は何らかの核心に関わるキーワードなのでしょう。
生殖という生物的なものや、恋愛といった感情的なものだけでなく、本能優先の
衝動的なものも描かれていて、まだ十分な世界観は掴めませんが、リアルに
人間が生きている様子が伝わってきて、その世界観に引き込まれます。
色々と情報が入り混じった中、分かったようでよく分からない。
もやもやした感じですが、ボーッと考えている暇も与えてくれません。
ええっー?!と声が出そうな場面で次巻に続きます。
発売日に次巻の発売が待ち遠しくなりました。