上位の批判的レビュー
5つ星のうち1.0ネタバレ&長文注意
2019年2月6日に日本でレビュー済み
前回からの続きで模擬戦第2回戦、八百万の本領発揮か!?という引きから続く今巻ですが
非常にツッコミ所が多かった為、いくつかの要素に分けて触れていこうかと思うのですが
それでも異常なまでに長くなってしまったので、長文が嫌いな人は要約だけに目を通して
どういうことだ?となった方はその都度長い本文に目を通していただけると幸いです。
成長描写
本来なら、話が進む毎にキャラクターの『成長』が描かれていないとおかしいはずですよね?
だというのに、その成長がわかるどころか、一部のキャラははっきりと『後退』しているようにしか思えませんでした。
具体的に言うと「八百万」と「葉隠」のふたりです。
「真っ先に四人がかりで潰すべきだった」「ピンチからの組み立てこそ本領発揮」といった思わせぶりな振りな引きを見せておいて
善戦もせず敗北し、敗北してまでほかのチームメイトを活かすために作ったアイテムは対策不足でチーム全体が敗北。
だというのに何故か拳道も、ミッドナイトも、3回戦の骨抜も八百万に「リーダーの素質」があると謎の持ち上げをします。
せめて、小型通信機を作って連携を行っていたみたいなのがあれば解るのですが、そういうのもなく無様を晒しただけにしか見えなく、
全く納得できませんでした。
初期の頃の模擬戦で、デクや爆豪達の欠点を指摘しオールマイトを唸らせ、
「常に下学上達!一意専心に挑まねばトップヒーローになどなれませんから」と自信満々に言い放ち、
過去の模擬戦では閃光弾を作り出し攪乱するなどの柔軟な思考を見せた過去の八百万と今巻の八百万を比べてみてくださいよ。
本気で『成長した』と思える人なんか居ますか?
葉隠に至ってはもう論外です。
「透明」という優位性を自ら殺し、声を出し、己の位置を知らしめながら攻撃を行うような無能に成り下がりました。
相対的にそんな彼女相手に手も足も出ずに対応できなかった漫我も無能にしか見えませんよね。
それ以外にも
語尾がガバガバなキノコ
22巻に至っても身内ネタしか掘り下げがない轟
唐突にギャグ漫画みたいなネタキャラムーブをしだすエンデヴァー
2回戦観覧時には八百万が大砲を出した時に「大砲?死んじまうぜ!?」とか言ってたのに自身が参加する3回戦では
「模擬戦でも命かけられない奴ァ」とか矛盾したことを言い出す鉄哲。
子供に「見下したままじゃ~」なんて説教してた割に相変わらず周りを見下しまくりな爆豪。
「落ち着け!」みたいな男言葉を唐突に使いだす麗日。
唐突に出てきた、いい歳に見えて「雑念マシマシ」みたいな幼稚な喋り方をするバカっぽい先代OFA後継者
と、悪い意味で語ることがないです。
しいて成長部分を挙げるなら、轟の「視界を塞いでいた氷技」が改善されたらしいですが、どう改善されたのかが画で示されないので解り難くく、
上述の「八百万のリーダーの素質」とも絡んでくることなのですが
そういった飲み込み辛い部分が、言い訳がましい説明台詞だけで「そういう事になっている」事が非常に多いです。
理屈
勝つにせよ、敗北するにせよ、新技を出すにしろ、何かしら納得できる理屈や描写が必要だと思うのですが、その辺りがどうもおざなりな気がしてなりません。
3回戦を中心に掘り下げていきますが
まず、飯田の「マフラーを引っこ抜くと強いマフラーが生えてくる」→「故に加速能力が上がる」という理屈を一発で飲み込めた人居ますか?
因みに、PCなりスマホなりで調べればすぐ解ることなのですがマフラーは排気や消音の機関なので、そんな部位をいくら強化してもエンジン効率が上がりませんし、
その後の、「レシプロは時間制限ありだろ?」→「いつの話だ!」→「レシプロターボ!(タイムリミット10分)」の流れは、あまりにも間抜けすぎて無意識のうちに「馬鹿じゃねぇの?」と呟く程酷い有様でした。
作者は1つ前の話に描いたことすら覚えていないんですかね?
その他にも
竃の何処に暮らせるスペースがあるのか?(竃で画像検索してみてください)
体全体が回転してる奴をどうやって捕らえたのか、骨抜がゼリー状に柔らかくした地中をどうやって泳いだのか、どうやって地中で位置を把握していたのか?
ポニーは角に乗って宙に浮けるなら、何故初めから空中から索敵を行うなり、高所から隠れながら奇襲を行うなりしなかったのか?
そして4回戦は…
これは本当に「酷い」の一言に尽きます
4回戦開始早々、相変わらず周りを見下しまくりの爆豪から始まり
窮地に陥った耳郎のフォローに入っただけで持ち上げられる爆豪
他が3から4話で模擬戦を終わらせているのに対し、大活躍で2話で終わらせる爆豪と
兎に角「爆豪の成長と活躍」を詰め込んだ話になっています。
しかし、全体的には今までよりも明確に展開が「雑」なうえに勝利へのロジックも酷いと総合的にマイナスであり全く評価点が見当たりませんでした。
まず、耳郎のフォローに入った件なのですが、どう見ても爆豪は分裂した取陰に完全に足止めされていますよね。
例えば大ダメージを受けるのを覚悟でフォローに入り怪我を負いつつも助けた、というのであれば1000万歩譲って解ります。
でも実際は急にワープしたとしか思えないフォローですよね?どうやって取陰の足止めから逃れてフォローに入ったかの理屈はないんですかね?
そこから、一度体制を立て直すために退却するB組と追撃するA組という流れになるのですが、これもおかしいですよね。
だって、凡度が床にセメダインをまき散らしながら逃げていれば少なくとも爆豪以外は確実に足止めできますよね?
取陰は分裂状態で浮けるのなら、音を立てないようにパーツを浮かしつつ物陰に隠し、回復を待てばフィールドとの相性上絶対見つからないですよね。
鎌切は跳躍力と軌道力を活かして高所の鉄パイプを落としてA組の行動を妨害するぐらいは出来たはずでしたよね?
そもそも爆豪ではなく、能力にタイムリミットがある砂糖を狙って足止めしていれば十分勝機はありましたよね?
だというのに、そういった工夫もなく爆豪無双ですよ?正直白けましたね。
要するにそれって一人を活躍させる為に周りを無能にする。その癖ちょっとしたことで持ち上げる。
最近ネットで嘲りやからかいの対象にされる、所謂「出来の悪いなろう」のプロットそのまんまじゃないですか。
ていうか、なろうでさえ読者や主人公には普遍的な技術であっても、異世界の現地人には未知の知識や技術を披露して「流石」じゃないですか。
それに比べて爆豪がやったこと…成長部分は「味方へのフォローや連携が出来た」とのことですが
そんなのは普通科の心操ですら初めから出来てますよ?
言い換えれば、22巻経ってようやく「連携が出来た」出来た程度の成長しかしてないんですよ?
「俺ァ前に進んでんぞ」とか言ってる場合じゃないですよ!
仮に他人へフォローが出来るようになった事を成長と呼ぶにしても、爆豪に与えられていた物語的課題は「イラついて救助を拒否した」精神の問題であって
身内へのフォローという意味での成長なるものと別の問題ですよね?
そもそもが「オールマイトが勝つ姿に憧れた」と公言するほど勝利に固執する性格ですし
せめて、無力な一般市民を身を張って救助するぐらいしてから成長したと言ってほしいものです。
5回戦については…長くなりそうなので詳しく掘り下げるのは次巻に流します。
倫理観
あくまで彼らが目指しているのは『ヒーロー』なんですよね。
この世界の『ヒーロー』は人救けが基本なんですよね?
なら、気管支にキノコ生やすとか、生身だと確実に死ぬレベルの高熱火炎とか、鉄塔を倒すとか、角で突き刺すとか、鉄を溶かす酸とか
そういう容易に他者の生命を奪えるような能力を、何の規制もなく振るわせるってどうなんですかね?
教師陣は第5試合の暴走?以外はぼーっと眺めてるだけで、殺し合いレベルの技の応酬を見ても止めようとする素振りすらありません。
この世界のヒーロー育成学校はヒーローという名目でヴィランでも育てているんですかね?
言葉
全体的に気になったのですが、「ぶっぱ」や「所見殺し」等、やたらとゲームスラングが多用されているのが目につきました。
それを使っているのがゲームを好きそうなキャラや精神的に幼稚なキャラ…死柄木やギリギリな所でデクや峰田辺りが使っているならまだしも
どう見てもゲームとかしてなさそうな骨抜なんかがそういったゲーム用語を使っているのは、凄い違和感があります。
個性名にしても、実際の能力と個性名がいまいち噛み合っていないというか、違和感があるキャラが多い気がします。
全身をバラバラに出来る能力を「トカゲの尻尾切り」ってすんなり飲み込めます?
蜥蜴が「自切」で足や尻尾を切り離すのは外敵から逃げるためのものですし、
「トカゲの尻尾切り」って言葉自体は「目上の者が地位が下の者に責任を押し付けて責任逃れをする」事ですよ?
単純な再生能力だったら、それこそトカゲよりもイモリの方が上らしいですし
身体バラバラと浮遊の何処に「トカゲの尻尾切り」の要素があるのかまるで解りません。
柳の「ポルターガイスト」にしても、ラップ音とかそういう霊的要素がないなら、普通は「テレキネシス」(念力)というんじゃないんですかね?
その辺の設定をもう少し練ってほしいですね。
後、ポニーの英文になぜか和訳じゃなく英語の読みが書いてあるのとか読みにくいし、意味がわからないし、
「レシプロは時限だろ?」みたいな口語が多すぎて一々脳内変換しながら読まないと混乱しますし、単純に読みにくいです。
それと、浅田飴とかスニッカーズとか商品名をぼかさず出すのはいいんですかね?
シュガーラッシュに至ってはもろにD社案件だと思うんですが。
情報
各キャラクターが持つ情報の差にも違和感があります。
第5試合で物間や心操が「デクの遠距離攻撃」について話し合っていたり、
物間が挑発の為に「爆豪がオールマイトを終わらせた」事を引き合いに出していましたが、何故その情報を知っていたんでしょうね?
まず、「遠距離攻撃」のお披露目のジェントル戦は隠蔽されたので遠距離攻撃について知っているのは
デクとオールマイト、ジェントルとラブラバの4人しか知らない筈ですし、「遠距離攻撃」が周知されるイベントもありませんでしたよね?
「オールマイトを終わらせた」にしても、当人たちが吹聴しない限りは、やはりデクとオールマイトと爆豪等の当人達しか知り得ない情報の筈ですよ?
そういったところで作者のご都合が見えてしまって、いまいち盛り上がり切れませんでした。
展開
ワンパターンな展開が非常に多い気がします。
B組襲来→A組迎撃という流れは全5回戦中5回ですし、
新技のお披露目か?という話の引きに関して言うなら
1~3回戦の間に心操、常闇、八百万、飯田と4回もありますよ?
文才がないせいか長々と書いてしまいましたが、要約すると
・キャラは口調も心情もブレブレ
・成長も感じ難いか、描写不足(一部キャラに至っては明確に後退)
・パワーアップや勝利に至るロジックも意味不明
・画での描写より、言い訳みたいな説明台詞でのごり押しで設定を成立させることが多い
・キャラたちは戦闘において最善策どころか最低限度の行動すらとらない事がある
・ばくごうくんはすごい!せいちょうした!(恐らくここが一番大事)
・倫理観が崩壊するルール未整備の殺し合い同然の模擬戦
・それを許容する無能教師陣
・ゲーム用語を多用するのはあまりよろしくくないと思う
・私が言えた義理ではないが、文が解り難く脳内補完が必要な部分がある
・肉体をバラバラに出来る蜥蜴はいない。辞書を引こう。
・キャラが知りえない筈の情報を持っているなら、その理由も描写しよう。
・展開がワンパターンに過ぎる
・本当はデクについても書いていきたいのですが、長くなりそうなので次巻に回します。
ここまで酷評してきましたが、作者がやりたいことは解らないでもないです。
やりたいことの骨組みはしっかりしてるんです。肉付けや骨密度がスカスカなだけで。
だから、次巻はもう少しそこら辺をしっかりして、私が長文を描かないようにしてもらいたいものですね。
ただ、模擬戦でやる必要の分からない暴走展開やあまりにもバカっぽい禿頭の先代を見て
次巻に全く期待が出来ないので星1とします