上位の批判的レビュー
5つ星のうち3.0前作"黒鉄"とは似て非なる作品
2020年7月28日に日本でレビュー済み
前作黒鉄は、『人生最高の5作品を選ぶなら必ず入れる』くらいには好きでした
冬目景作品では羊のうたなども好きでしたが、個人的には黒鉄が一番です
あまりにも好きすぎる故に、続編の存在を知りつつも長らく読むのをためらっていましたが、1巻の試し読みが来たことにより、このたび意を決した次第です
さて、前作の主人公迅鉄は、「不気味な仮面は決して外れず」、「刀がなければ口を利くこともできず」、「代わりに口を利く刀も、主と離れすぎればただの物言わぬ刃となり」、「その刀は主とは別の自我を持ち、語る言葉は時に持ち主の意思に反する」という、いったいどうやって話を進める気なんだ?という設定てんこ盛りのキャラでした
しかし、そんな私の心配などどこ吹く風とばかりに、実に見事に物語を回して見せてくれたので、作者のそのワザに私は強い感動を覚え、心底惚れ込んでいました
しかし、本作ではこれらの設定の多くがなかったことにされてしまっています
基本1話完結型だったものが、1本筋のストーリーをなぞる構成になっているのも、前作との大きな相違点です
あとがきにもありましたが、どうやら作者が設定を忘れてしまったわけではなく、本作ではわざと変えているようです
TVシリーズと映画で設定が変わる作品になぞらえていたので、マクロスシリーズのTV版と劇場版の違いのようなイメージなのでしょうか
個人的な感想としては、黒鉄の続編/リブート作品というより、"黒鉄の一部設定やキャラを流用した完全新作"だと思っています
物語の構成上仕方がないことですが、「物言わぬ鉄面皮としゃべる刀の掛け合い」という前作では多く見られた離れ業も、本作1巻時点ではほぼ見られず、大変寂しく感じました
ですので、前作に強い思い入れがあり、その続きを期待している方は注意が必要かと思います
美しい思い出は思い出のままにしておいた方が、もしかしたら幸せかもしれませんよ