上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0他の異世界モノとは構成から違う
2020年11月13日に日本でレビュー済み
読み進むと分かってきますが、この異世界の「正義」において主人公は絶対悪というべき存在です。
まず、この世界のヒューマン、彼らは他の異世界モノでいうならば、魔族にあたります。
邪神の加護を受け、他の種族を虐げ滅ぼす存在。彼らにより制覇されつつある世界が異世界の真の姿です。
邪悪なヒューマンを助けるために召喚される勇者。
好みでないという理由で廃棄された主人公は地球の神々からこの世界での自由を認められます。
主人公は虐げられた民に同情し、異世界の救済のため立ち上がる・・・とはなりません。
この物語はそんな正邪の逆転に収まる構成ではないからです。
困ったことに主人公は、その理不尽に対してほとんど興味を持ちません。
不快感を感じたり喜ばしさを感じたりはしますが、あくまでそれは表層。
よく、好きの反対は嫌いではなく無関心と言われますが、まさにそれです。
彼にとっては、異世界における正義も悪も一切合切が意味を持っていません。
彼を導く神々もまた、異世界自体に対して興味を持ち合わせません。
なぜかと言えばこの異世界は彼らにとっては、泡沫として消え去る一夜の夢にしか過ぎないからです。
それが主人公の立ち位置です。
異世界という舞台劇の中に、役柄という不自由を与えられずに放り込まれた主人公。
彼は舞台の片隅で、邪神も及ばない権能をふるい、自分の気の向くままに別の物語を演じ始めます。
邪神以外の神々は面白がって主人公を煽り立て、悪人も善人も魔王も勇者も筋立てを見失い右往左往する始末。
かくして異世界は主人公とどう向き合っていくのか、そんなストーリーです。