上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0必死で生きる姿が健気で、切なくて、強くて、どこか優しい。
2014年8月15日に日本でレビュー済み
「言ノ葉ノ花」や「言ノ葉ノ世界」が出版されて、それに合わせてBLCDも発売されたかと記憶しています。
その続編として、また人の心の声が読める受けカンナと、アパートの隣に住む額田の物語が、これです。
前作2本とはほとんど100%関係ないので、この本単品でも全然問題なく、ストーリー把握できます。
今回はちょっと痛い感じが多めでした(攻めが痛い、実質的に痛いシーンが結構あります)。
ヤクザの下っ端と、心の声が聞ける一人ぽっちの青年。
二人は、偶然出会って、次第に、寄り添うようになる。
と、簡単に2行でまるっと表してしまいましたが、もちろんこんな2行では言い表せないいろんな事件や感情の起伏が2人の間にあって、平穏な日々に浸るまでには長い時間と苦しみがあったりします。
そういう意味でちょっと痛いです。
メインは、額田のゆがんですさんだ生活そして性格に、カンナが一生懸命優しい気持ちを提供して、徐々に額田の気持ちに暖かいものを注ぎ込んでいく過程。
そしてサブに、心の声が聞こえる云々が引き起こす些細なささくれが描かれています。
まっこうから、何かしてあげようと頑張るカンナ。
そんなカンナに乱暴な口を聞きながらも、こっちも何とかカンナのためを思って行動する額田。
大した相手でもない恩人のためにすべてを投げ出そうとする刹那的な人生を背負う男ですが、
粗野な中にふと見える優しさが切ない攻めでした。
そんな額田にひょこひょこ無駄な努力をしているだけに見えるカンナですが、実は心が強いのはカンナ。
芯が強く、小さい身体なのにその強さでもって額田を必死で守ろうとする姿がもまた別の意味の切なさを持った受けでした。
全く世界もタイプも違う2人が、どこか共通する部分があって、広い世界で2人でなんとか寄り添って行こうとする姿が健気で、切なくて、思わずなぜか涙をさそわれてしまう作品でした。
既刊2冊とは全くタイプが違う展開ですが、「心の声」シリーズとして、この本もオススメです。