上位の批判的レビュー
5つ星のうち1.0全体的に薄口風味
2020年8月12日に日本でレビュー済み
評価を下げてしまい、本当に申し訳ありません。ですが、もう徹底的に私の嗜好には合いませんでした...。
何度も途中で読むのを止めようかと迷ったのですが、折角お金を払ったのだし最後まで読めば好きになるかもしれない...と思い直し歯を食いしばって読了したものの、やはりどうしても面白いとは思えず。
ですが、かなりの高評価作品ですし続編も人気の様ですので、ただ私には合わなかっただけでこの辺は好みの違いなのかな...と思っております。
因みに、私が面白いと思えなかった点は下記のとおり。
①主人公に感情移入出来なかった
常に良い子ちゃんの仮面を被っている主人公。根は真面目で努力家であるものの、「理想の自分」を保つ為、優しげな笑顔の下では常に周囲の人間を小馬鹿にしながら悪しざまに罵っています。
しかし「必死に努力して望まれる国江田計を演じている」主人公が、都築潮という人物に出会う事により、偽りの自分を演じる虚しさに気づいてしまう...。そのあたりのくだりに読者の気持ちを惹き付けるのが狙いだったのかも知れませんが、私は全く同情も同調も出来ませんでした。
だって、大人になって社会に出たら、素のままの自分を隠すなんていうのは当然のこと。それを大層な葛藤でもあるかの様に語られても、全く心を動かされません。
それどころか、良い年齢した大の大人の男が、いくら心の中だけとはいえ他人を貶めることでしか社会的な体面を保つ事が出来ないのであれば、それは大問題だと思います。
このあたり、潮と出会って計が精神的な成長を遂げる...ということになれば、また見方も変わって来たと思うのですが、結局、何も変わらないまま終わってしまいガッカリしました。
②リアル感が無い
主人公はストレート。相手の潮も若干曖昧な点は残したものの、恐らく基本的にはストレート。
異性愛者である二人が出会い、互いに惹かれ合う...のは良いのですが、これまでノンケとして生きて来た人間が、突如同性を好きになってしまった事への戸惑いだとか混乱だとか葛藤だとか...そういうものが全く描かれていないのです。
まるでフツーの男女の恋愛モノの様に、何の抵抗も無いまま性行為に至ってしまう二人に、違和感が拭いきれません。
また、主人公が同性である潮を好きになった理由も理解は出来るものの、「そんな理由なら、友人関係でも良かったのでは...?」と、つい意地悪なことを考えてしまう程度のものでした。
ストレートの人間を、同性との恋愛に走らせる程の切羽詰まった何か。友情では収まりきらない程の抑え難い熱い感情。そういったものについての説明が何も無く、さら〜っと、する〜っと、ドラマチックな展開も無いまま恋人関係になってしまいます。
そんな簡単に性的指向って変えられるものなのかな...と疑問を抱かずには居られません。
これがファンタジーだとか、オメガバースだとか、全寮制男子校モノだとか、そういう「非現実」を舞台にした話であるならまだしも、現代日本社会という設定で、しかも業界関係の描写がやけに緻密でリアル感たっぷりな分、余計に恋愛面との比較がアンバランスに思えてしまい、作品の世界に入り込む事が出来ませんでした。
③エロシーンがエロくない
直接的な描写が少なく、何だかよく分からないふわっとした比喩表現でお茶を濁された感が否めません。ドキドキもワクワクもコーフンも何も感じられず...。
そこに至るまでの心理描写が濃厚であればエロシーンが薄くても満足出来たのでしょうが、心理描写も薄味、エロも薄味...となると、私は一体何を読まされたのだろうか...と困惑してしまいます。
ですがこの点については、ガッツリよりも薄味エロが好き、という方もいらっしゃるかと思いますので、あくまでも個人的な好みによるものかとは思います。
以上、辛口レビューになってしまい申し訳ありませんでした。