上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0心えぐられる
2017年10月15日に日本でレビュー済み
このコンビの方の小説はDOLLを既に読んでますが、DOLLよりもずっと良かったです。
何度か胸を抉られるような、締め付けられるような、そんな瞬間がありました。
近親相姦にはまったく興味はなかったのですが、この小説は萌えだとかそういうことじゃなかったです。
ひとつの物語として完結していて、BLとかそんな問題じゃなかった。
確かに性的なシーンも数多くありますが、これは別にあってもなくても良い。セックスじゃなくてそれが代わりに拷問や暴力だったとしても買って良かったと思えるほど、一本の物語として良くできていたと思います。
反対にただの萌BL目当ての腐女子にはキツいのではないかと思いますが。
主人公に感情移入してからは、胸の痛みが辛い。父親が憎い、愛してる。全くわからないとレビューしている方もいますが、私はよくわかりました。共感・・・というより、主人公ガブリエルに寄り添って物語を終えることが出来た感じです。
ここからネタバレになりますが、
後半に差し掛かる頃には、私は心の中で最後はウリエルに命でガブリエルに償ってほしいと願っていました。
冷静に考えれば彼が死ななければいけないほどの罪を犯したはずもないのに、ガブリエルに感情移入しすぎていたのか、彼のことを心から気の毒に思ったからなのかはわかりませんが、そう望んでいました。
でもこういう小説は、どうせ主人公が自殺して父親は救出されて、指も手術で元通りで、主人公は狂った男として処理させるんだよな〜なんて諦めつつも読み進めていると、ガブリエルが自ら毒を飲むシーンが。
やった!・・・なんて思えず、彼が飲み干して呼吸が荒くなっていく様子を怯えながら読み進め、ついに彼の体が冷たくなった時は、ガブリエルと共にひどい喪失感に打ちひしがれました。
いろんな感情が駆け巡って、切なくて辛くて、でも最後の最後に父親の無償の愛を感じることができました。
私はこの話を救われないバッドエンドとは思えません。ハッピーエンドではないですが、少なくともガブリエルは、何も行動を起こさなかった人生よりは、良い方向に救われたと思います。
ウリエルにとっては辛い最期だったとは思います。自ら毒を飲むというところまで追い詰められた彼の精神状態は、愛よりも諦めや洗脳に近いものがあったと思います。
ただ、読んで良かった。