上位の批判的レビュー
5つ星のうち3.0感動のストーリー、でも
2006年10月7日に日本でレビュー済み
普通学級で学べるけれども、少々知的に遅滞の見られる受けが出てきます。
学校生活では馬鹿だ馬鹿だと言われ続け、自分は他の人よりは馬鹿なんだろうと思っている、
大人になっても「レイザーマン」が大好きでテレビをかかさず見ている、
進学はせずに就職をしようと思ったけれど、面接の場で自分の好きなものを並びたてて、面接官をあきれさせてしまう・・・
そんな彼が一途に大好きな、幼なじみの「クルちゃん」との恋物語。
とても感動的だったのです。一途で健気というのは、私の受けツボにがっちりはまるし、
高校生から社会人という時の流れも一番甘酸っぱく切なさを感じる時間だし、
受けに救われる攻めの心理描写はそれは繊細で、琴線が震えぱなしでした。
けれども、知的に多少の障がいを持った青年を扱った本として、これがどれだけその部分に配慮をしているのか
いや、気にすべきであろうけれども、BL読者としてこういった感想を述べるのは無粋であるのか
誰かを傷つけることになりやしないか、気になってしまって、素直に読むことができませんでした。
天使のように純粋で無垢な青年として受けを描くことは正しいか。攻めが「陸(受け)も一人の人間で、男だった。ただ少し乏しいだけ」といった言葉に傷つくひとはいないだろうか。知恵の遅滞とは、何か「乏しい」ということなのか。
もとより、男性同士というジャンルで、ファンタジーながら同性愛者への偏見を助長しているとの誤解を招く(あるいは一面では真実と思われても仕方がないと思いますが)ことの多いBL。
作者の言葉なり、出版社の見解なりが巻末にあったら、また感想が違っていたかもしれません。
しかし同じように、救われる言葉がたくさんあったのも事実です。
砂原さんらしい、胸が苦しくなるような、切ない響きを持った言葉がたくさんありました。
点数をつけるのがとても難しい作品でした。