上位の批判的レビュー
5つ星のうち3.0歪んだ国家権力の姿!ただし、高杉作品に仕上がっていない感じ!
2002年12月22日に日本でレビュー済み
TKCの飯塚会長の物語である。
国家権力と真実を争う飯塚会長の姿は、現代に住む我々から見れば神々しくさえ映る。
飯塚氏は会計事務所を経営しており、法に沿った形で顧客の節税、制度等を助言を行う役割である。ある時、飯塚氏が考案した「別段賞与」という制度に対して法解釈の上で国家権力側、国税庁と論を異にした。原因を紐解いてゆけば、飯塚氏の税務署等に対する税法解釈の稚拙さ等を記した論文が国家権力を刺激したものだった。国家権力は、飯塚会計事務所の顧客への立ち入り調査等で圧力をかける。
飯塚事務所を日干しにしてゆき、飯塚氏本人に対しては自己批判を強要する。
国民を守る為でなく、面子を守る為だけに権力が”市民”を追い込んでゆく一部始終が書かれている。
丁度今も国は国民の利益を無視して、権力者の利益を得る為に国民を窮地に落としこんでいる。そういうタイミングで書かれたこの本は、的を得た題材であったように思う。
ただし、著者は、実名で書かれる場合があるが、仮に実名で書いたとしても高杉良の作風を損なうものではなかった。
この小説に関しては、いささかこれまでと違和感を感じてしまった。
引用文が長すぎて、物語のスピードを損ねてしまっている。正確を期すための処置だったのかもしれないが、作風を損ねてしまったように思える。
高杉ファンとしてはかなり残念!