上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0マンガは見た目重視の自分の家宝になる、話がしっくりきた作品(失礼しました→土下座)
2018年8月6日に日本でレビュー済み
この作品との最初の出会いは、8~9年前の書店の少女マンガと少年マンガコーナーの間のスペースでした。(その頃本の配置変えをしていたので偶然目に付いたのです。まだ高校生だったなあ)作者名にクスっときて衝動買いです。
自分の家は「男子、厨房に・・・以下略」の父と「料理が壊滅的に下手で家事も怒鳴られるまでしない」母と弟の4人暮らしです。日常生活が疎かで、人間関係のギスギスした最低の家庭では「マンガ」と「隠れてする料理」が唯一の癒しでした。
ある日言われた父の言葉をレビューを書いているときにも思い出します・・・。「そんな本ばかり見て、たまに見てないところで(ごはん)作ってるらしいな!くだらん!」
今ではありえない言葉ですが、その頃はマンガはまだ「読んでいるやつはクズ」という概念が親の世代で強い時期でした。(うちが頭のイカれた古臭い家庭というのもある)
・・・怒りましたね。家事のできない両親が、家政婦が主役のマンガをチラと一瞥しただけで自分と作品の両方を否定するなんて我慢できませんでした。
マンガという形態ではありますがガキ臭いだけの作品ではない「大人」な作品と感じました。レシピや料理を載せれば売れる最近の流行の安いマンガと違って、この作品のようにその流行の少し前の作品は、「いやらしさを感じない」「自分の考えた物語を見せる」という職人かたぎの魂を感じさせます。
食べることだけでなく、話全体に気を配る(当たり前ですから、作者はこんなこと頭で考えてないでしょうが)作品は今となっては貴重で尊さを感じます。「料理を出すのでなく物語」現代の料理マンガ家には考えて欲しいですね。
話は恋愛や家事をからめながら、人と人との関わりをリアル(現実にほぼ近い俗っぽさ)に且つキレイ(マンガらしく)に描いており、そこに不自然さがなく(←いつも気に入ると書いちゃうセリフ)息継ぎなしで1冊泳ぎ(読み)ました。自分にとっては、人に汚されていない秘境の川に潜ったような、「息継ぎをせず、目を開けてその水の中の光景を見ていたい」作品です。
「家事も極めれば一芸だよなあ」と自分の家庭・教育(放棄)に「怒り」とそれにも勝る「哀れみ」を覚えたのを今思い出しました。主役の荒っぽさを感じる言動にほのかに香る繊細さ(読者にはありありと感じられるはずです)にメロメロです。今で言う「ギャップ萌え」というやつですかね笑(いまさらですが男です)
話がしっかりしていると、主役だけでなく他の登場人物の気持ちも違和感なく受け入れられるものですね。作家ではありませんが神経質なので「人の気」というのは痛烈に分かるし、「料理を食べてもらえない理由」も経験があるからうなづきながら読みました。
家事を少しでもしていれば共感の箇所は随所に散りばめられているので親しみやすいですし、自分みたいに「重く」見たい人にも「軽め」にみたい人にもオススメです。一切家事の気持ちがわからない人が見たらレビューも低評価になるかもしれませんね。最近の料理家気取りのレシピマンガとか家事のノウハウ本ではありません!目に見える「←それら」とは別のそれらを実行するにあたる「人の気」というものを感じ取ってほしいと思いました。