上位の批判的レビュー
5つ星のうち3.0稀代の名作になるはずだった作品
2021年9月10日に日本でレビュー済み
今で読んでも面白い、70巻くらいまでは。いじめられっこの気弱な孝行息子がボクシングと出会って人生が変わっていき、それでも根っこは変わらないので日本最強の称号を手にしても礼儀正しい奥手のままで、とキャラもいい。脇役もこれがもう魅力的で、すぐ消えていく対戦相手すら宝の山。ぶっちゃけ作中随一のベストバウトは主人公の試合ではないと思っているくらい。絵も素晴らしく、初期は泥臭さがある上にバランスも狂っているが、これが作者が乗ってくるとどんどん進化していく。
ボクシング漫画と言えば後にも先にも「あしたのジョー」で、これを超える作品は出ないだろうと思っていたが、そこに唯一待ったをかけた作品が「はじめの一歩」だ。太鼓判を持っておすすめできる、令和に読んでも面白い!……70巻くらいまでは。
非常に残念だが、この作品は現在も続いている。そして50巻くらい迷走し続けている。60巻くらいから作者の負担は見えていた。一話のページ数が減り休載が増えてきた。それでも面白さは継続していた。あそこで編集が止めてくれていれば……返す返すも残念である。編集部だってきっと気づいていただろう。しかし世は引き延ばし商法全盛期。一歩もその犠牲になったのだ……。
作者の才能がすべて「はじめの一歩」に吸い取られたことも残念だ。デビュー作でこれだけ書けて、70巻近く面白さ継続して、絵は劣化しない、これだけでも希有な才能だ。作者全盛期の他の作品も読んでみたかったよ……。