カスタマーレビュー

2017年9月4日に日本でレビュー済み
戦時中の戦闘機について調べていて、菅野直という人物を知り本書を手に取りました。本屋三件回りましたが置いておらず、Amazonで注文。いい買い物をしたと本気で思いました。

並外れたパイロットとして優秀な記録を持ちながら、海軍の規律破りの常習犯だった菅野直。自由奔放で型破り。命知らずだが部下思い。あふれる魅力は死後もなお尽きず、彼の最期を見届けた者が一人もいない事実から、「もしかしたら生き残っていたんじゃないか」という希望まで抱かせてくれます。
兵学校卒業と同時に太平洋戦争へ駆り出された菅野は、同期生454名のうち62%の282名が戦死するという恐ろしい現実の中、終戦の約二週間前まで戦い続けています。しかしこの戦死率、現代からすると信じられません。
戦後、振り返って戦時中を語るときには、必ずと言っていいほど「反戦」や「平和」をメッセージの根底に込めて語られますが、この著作は戦い続けた菅野ら軍人たちの当時の心情をできるだけ汲み取って語られています。故に、戦うことへの意欲や闘志がいかなるものであったかがよく分かりました。
また、続々と出てくる友や部下たちの戦死も淡々と書き連ねてあります。その一人一人を失った悲しみに浸れないほど日常的に死があり、その中で自分のやるべきことは何かを極限の状態で悟っていた若い兵士たちの心理が、その語り口によく表れています。だからこそ、終戦後に残された彼らの友人や知人、家族らのエピソードは涙無くして読めません。そして、「反戦」や「平和」という言葉は、散っていった若い彼らの無念からくるではなく、残された人々の無念からくる想いなのだということも改めて悟りました。戦争を知らない我々が今までずっと聞いていたのは、「生きたかった!」ではなく、「生きていてほしかった!」という苦しみと悲しみの歴史だということを。

ところで、この著作者である碇義朗氏は大正14年生まれで、菅野直とはわずか4年しか違いません。2017年の現在、存命であれば92歳。彼が本作で語る「現代」とはいつなのか、思わず考えてしまうほど軽快かつ今日的な文体は読みやすく、若い方にもおすすめです。
そして、時代の背景や風景が目に浮かぶような綿密な取材は、碇義朗氏がいかに「事実」を大切にし、「事実」として残すことに尽力したのかが伺えます。彼がこれほどに当時の「事実」を克明に書き記した情熱は一体どこからやってくるものなのか、興味は尽きません。
最後に、気になって調べたところ、本作が出版されたのは1991年で、2017年現在から26年も前になります。碇義朗氏は2012年までご存命だったようです。(ウィキペディアより)
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