カスタマーレビュー

2009年1月14日に日本でレビュー済み
南東アラスカを旅する中で、いつからか著者の心をとらえるようになったワタリガラスの伝説。
はなれた土地で生きる別の部族の人びとが、なぜよく似たワタリガラスの神話を語り伝えているのか。
さらに言えばわれわれはどこから来て、どこへ行こうとしているのか。
その大きな問いをひとつの軸に、印象的な写真ととぎすまされた文章でアラスカを切り取ってゆく、息をのむような美しい本。

「森と氷河と鯨」は1995年から「家庭画報」に連載され、予定回数をあと3回のこしたところで、突然の事件によって終了を余儀なくされた。
1996年8月8日、取材のために出かけたカムチャッカ半島で、就寝中のテントをヒグマに襲われ、星野道夫さんはその生涯を閉じる。
だからこの本は、アラスカの自然に魅了され、そこに住む人々を愛しつづけた著者の、最後の旅の記録でもある。

星野道夫さんの本をひらくと、いつも「もうひとつの世界」の気配をはっきりと感じる。
天国とか地獄とか、死後の世界ということとは少しちがう。
今、自分が呼吸して、足を着けて歩いているこの地面のつづきに、海をへだてて、鮭がのぼってくる川や、それを食べにやってくる大きなクマや、地鳴りのように移動するカリブーの巨大な群れがあるのだということ。
「時間」というものは何種類もあって、日常の自分はそのほんの一種類を生きているにすぎないのだと思うと、気持ちが空へ向かってひらけてゆくのを感じる。
どこへでも行けるし、何にでもなれる。心からのぞめば動物にだって、森の木にだって。だから自分はひとりではない。世界に抱かれている。そんなことを思う。
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