カスタマーレビュー

2018年7月19日に日本でレビュー済み
近年稀に見る醜い出来となったアニメ「覇穹 封神演義」ですが、他のレビュアーの方も書いている通り、アニメ化による唯一の功績がこの藤崎竜先生自身による「封神演義外伝~仙界導書~」と言えるでしょう。(ライトノベル「封神演義 導なき道へ」も画以外は今ひとつでした)。

画については、表紙を見れば一目瞭然です。何しろ連載終了から約18年が経過しており、フジリュー先生は現在「銀河英雄伝説」も連載中なので多少なりとも画風が変わっている懸念もありましたが、いらぬ心配でした。18年前の生き生きとした紛れもない「封神演義」です。例えば鳥山明先生の「ドラゴンボール」や井上雄彦先生の「スラムダンク」など、十数年を経て描いたイラスト、新装版の表紙などは少なからず当時と変わるものですが、ここまであの頃の画風を維持できること自体驚きです(何より「封神」と「銀河英雄伝説」をきちんと描き分けているということ)。もちろん瞳の描き方など細かく見ていけば変化もあり、近年のフジリュー先生の画風がよい形で作用しています。

ストーリーについてのネタバレは控えますが、読む前はあくまで「外伝」という位置づけなのでゆるい感じの牧歌的な物語を予想していましたが、本編からさまざまなキャラクターが参戦し、レビュータイトルどおり「オールスター」(当然全員ではありませんが )であり「祭」です。ともすれば、大味な物語になりそうなものですが、そこはフジリュー先生、きちんとこの「祭」をストーリーに落とし込み、うまく短編としてまとめられています。個性が強いキャラクターが多いので1コマ登場でもインパクトを残せるのは「封神」ならではですね。「オールスター」というものの「封神」は登場人物数もかなり多いので、当然すべて出すわけにいかない部分を物語の整合性をうまくとることで納得できる展開に仕上げています。今後にも繋がりそうなラストでもあります。

頭脳派ペテン師とおバカの両面ある太公望、四不象のメタ的なツッコミ、変わらないドタバタありシリアスありの「封神演義」の世界は健在です。また、外伝の物語以外には、この外伝を書くに至る経緯をフジリュー先生自身が綴った「あとがきまんが 断崖絶壁今何処外伝」と、キャラクターやエピソードを紹介したガイドページに加え、コミックス23巻&完全版18巻のカバーイラストをカラーで収めた「仙界導書」も収録されており、ファンなら大満足の1冊だと思います。

ファンの期待を地の底まで叩き落としたアニメ「覇穹 封神演義」があるだけに、どうしても甘めに見てしまう部分がありますが、それを差し引いたとしても「封神演義」のファンであれば間違いなく手に入れるべき良書だと思います。そして願わくば、またこのような形でもかまわないので「封神演義」の世界が更新されていくことを期待します。
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