カスタマーレビュー

2021年5月27日に日本でレビュー済み
今や日本でも知らない人間は少ない大人気SFである「三体」シリーズ。
その三部作の最終巻がこの「死神永生」だ。
中国では第二部の「黒暗森林」が一番人気があるらしいが、個人的にはこの「死神永生」を最高傑作に推したい。

以下「黒暗森林」のネタバレも含む感想。

さて、「死神永生」は基本的には「黒暗森林」の正当な続編であり、時間軸もそれに沿って展開していく。
ここで読者は一つの不安を覚えることになる。
すなわち、「黒暗森林」がついに三体世界に対抗する手段を手にした地球世界が彼の文明の侵略を跳ね除ける、という希望の持てる終わり方だったために、その続きを描く「死神永生」ではその希望が全て打ち壊されるのではないかという恐怖だ。

残念ながらそれは的中してしまう。
三体世界と地球世界の宥和は幻想に過ぎず、致命的な隙を見せた人類に対して三体世界は再び牙を剥く。
相手を欺くことを覚えてより完璧になった三体世界の侵略にはいかなる隙も見出だせず、今度こそ人類は彼らに対抗する手段を失った。
このまま支配を受け入れるしかないのかーーと読者が戦々恐々としているところで、とある要因により三体世界は地球世界から手を引く。
だがそれによって読者が恐怖から解放されることはない。
なぜなら、そこまで読んだ読者なら分かっているからだ。
そのとある要因が、実は三体世界などより遥かに危険で、かつどうしようもない死刑宣告であることが。

「死神永生」はあらゆる要素が第二部までとは桁違いにスケールが大きくなる。
時間の単位も、危機の範囲も、ありとあらゆるものが。
本書はそれによって、誰もが持っている「宇宙への根源的恐怖」を呼び起こすことに成功している。
宇宙は人間が不用意に足を踏み入れていい場所ではない、という危機感が増幅され、登場人物たちへの極大な感情移入効果に繋がっている。
つまり物語への没入感が前二冊よりも凄まじく、最高傑作に挙げるのはそれが理由である。

ただし、欠点もいくつかある。
一つは主人公。
今回の主人公は仕方ない状況もあるとはいえ、人類にとって致命的な過ちを二度も犯す。またその原因は論理的思考に基づくものでなく、ほとんどが彼女の感情的な部分によるものなので、嫌悪感を覚える人も多いだろう。
第二部の主人公も続投しているのだが、こちらが常に泰然自若とした態度でいるのもまた対照的に主人公の不安定さを浮き彫りにする。

もう一つは終わり方。
ただしこれは別に終わり方が明確に悪い、というわけでなく、どちらかと言えば「黒暗森林」と比較した場合の話だ。
「黒暗森林」はそこまでの全ての話に決着をつける上に希望の持てる終わり方で、「続編でやることがあるのか?」と言われていたほど綺麗な結末だったため、流石にそれと比べると分が悪い。

中国で「黒暗森林」の方が人気が高いというのは、恐らくこの二つの違いによるものではないだろうか。
特に主人公に関しては「死神永生」の方が人気が無いのは確実だろう。

ただそれでも自分にとって「死神永生」は三部作の中でも読んでいて最ものめり込めた作品だ。
「黒暗森林」まで読んだならこれを読まないのは損をしている。

値段は少々高いけれど、それ以上の価値のある作品だと思う。
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商品の詳細

5つ星のうち4.7
星5つ中の4.7
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