カスタマーレビュー

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2019年7月12日に日本でレビュー済み
小学生ぐらいのころ、40年ほど前だろうか、この作品を少年サンデーで読んだ時、恐ろしさで夜眠れなかった。何より、砂漠の描写が頭にこびりついた。重く、暗く、湿った砂が動くこともなく不気味に闇に沈んでいる情景は不気味さを通り越して、こういう地獄なのだと形になって頭に残っている。
パニックとなって己の獣性をむき出しにした大人たちが殺し合い、それが終わっても今度はさらに子供たちも殺し合う。秩序を作り出し一時は成功しても次から次へと絶望的な状況が降りかかってくる。ともかくも第一巻の見せ場はある意味では大人の醜さかもしれない。今時の異世界ものでは考えられない恐怖を描き切った楳図かずお先生は天才と呼ぶにふさわしい。
今読むと描写が独特だったりするが、今のように人体ポーズ集などが少なかった時代であることを思えば、むしろ鋭い観察眼がうかがえる。設定を深く考えると矛盾はあるが、それを超える恐怖は今の作品では味わうことはできない。タイムスリップと学校という組合せの背景に環境汚染を組み合わせたのは当時、SFの流行りが時間旅行だったこと、環境汚染が深刻で社会問題化していたこと、学校を取り巻く状況も貧富の格差などがあったからだが今でも通じるものがある。一つにはそうした社会問題をモチーフに取り込んでもそこに無駄に政治的メッセージをちらつかせなかったのが良かったのだろう。
恐怖SFの金字塔としてkindleで手軽に読めるのは、作中の暗黒の未来以外の世界線に生まれた幸運というものだろう。
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