カスタマーレビュー

2019年5月16日に日本でレビュー済み
ミカベルこと美川べるのがカドカワ・レーベル向けに送り出した女子高ギャグ漫画です。

絵柄はパステル調に原色も混ぜて、ゆるふわ系どうでもいい日常モノを志向しつつ……、その実シュールめな、いつものミカベルのギャグ漫画です。
その辺のギャップを売り文句にすることでギャグの本質に萌え系のガワをかぶせた両面立てを狙ったと考えれば、結構欲張って読める作品かもしれません。

新機軸としてはあとがきでミカベルも触れている通り、無表情系……というより、謎の生物枠なヒロイン「美咲亜弥」の取り回しがポイントでしょうか。
変身、分裂、巻が進むごとになんでもござれ。扉絵や煽り絵で本編では絶対しないような表情をしているのがまたガッカリ感を誘って、実にいいです。

フリーダムに動く枠に前例はもちろんありますが、彼女の場合、作品の中でひとりに役割が集約されています。あえて例を挙げるなら『ストレンジ・プラス』の巧美に匹敵する働きっぷりかもしれません。

彼女を中心に「なぜか影が薄いロリおかん」、「デレないツッコミ担当」、「金持ってる男の娘」、「ブレないストーカー」。
以上を合わせた「帰宅部」五人娘がボケと萌え系の空気感を演出するのですが……。

リア充へのルサンチマンを剥き出しにする喪男「速見敦志(34)」が、学園ハーレムの流れになんぞ乗ってたまるかという勢いで、彼女らの好意を無碍にしまくるのがもうひとつのポイントです。
彼の流れを汲んだキャラクターが『レジデン都市505』をはじめに後続作品に度々顔を出すことは、使い勝手の良さと力強さを証明しているようです。

話を回す中で帰宅部の横のボケツッコミに、一人で縦のつながりもあるとはいえ拮抗しているわけですから。

……ま、都合のいい理由でモテまくる主人公へのカウンターといえば聞こえはいいですが、単にこじらせてるだけなんですけどね。
学園ハーレムもののストーリーラインに乗っかっちまえば楽なものを、現実的な観点から逃げまくりますからね速見教諭。鈍感系のソレじゃなくて、誘いに乗ると社会的に殺されるってのはもっともな理由ですし。

やれやれ系ラノベ主人公の成れの果ての雰囲気を漂わせる、中年に差し掛かったオッサン気味な男を主人公に据えるって……。
据えるなと言えばそれまでかもしれませんが、この辺をギャグマンガのプライドじゃあ、据え膳喰ってたまるかってミカベル節と思えば、大好きです。
徹底的に中身のない萌えからのギャグに徹するには画力という「照れ」もあるかもしれませんが、パワフルに笑いをぶつけてくる作風は流石の貫禄です。

どちらにせよ、女子高ハーレム漫画を自称するには厳しくて、直接好意をぶつけてくるのが一巻時点では男の趣味を間違えている「牧島昴」ひとりなのですけれど。
相手を理想化する妄想系のギャグの破壊力が高い高い。
説明だけだと、わりと「いそう」なキャラなんですが、実際の動きを見るとなかなかいないタイプのキャラかもしれません。

あと速見先生は基本、美咲亜弥の繰り出す突拍子の無いボケに対するツッコミ役に徹するのかと思いきや、女性や友達付き合いとの縁の無さから度を越した妬みや憎しみ=ボケを巻き起こし、そこにツッコミが入ります。

そこでツインテールの「桐生沙有」がツッコミ専任に回り、速見先生のみならず満遍なくツッコんでくれることで大体のボケは回ります。
この二人を中心とした掛け合いの中で繰り広げられる、ゆるふわガーリーとオッサンの相剋が本作の見どころ、笑いどころなのですよ。

話は大体「美咲亜弥」が起点となっているのですが、前述の「牧島昴」以外も帰宅部はわりと展開の切り口を提供してくれるメンバーが揃っています。
テンプレも意識するけど、案外いなさそうな面子揃いなので、いつもの展開の読めない読みごたえを提供しつつ、安心のゆるふわ感なのかなって。

衣装などで貴重なかわいい成分を提供しつつ、金持ち設定で話を回し、下ネタもこなせる「小鳥遊真樹」。
「男の娘」について語り、これは教科書に載ってもおかしくないなという二ページに渡る独演は必見です。

反面、低身長の世話焼き知恵袋オカンって需要がありそうなキャラの「桃井乃々」は女子高という舞台と噛み合わせが悪かったのか、レギュラーなのに空気になってしまいましたが。

口調は普通ですし、年齢はあくまで女子高生ですし、特技を生かせる場面も乏しく、ツッコミは他にいるので、相槌打って話を動かすくらいになっています。
反面、決めゴマ以外では、平穏に進行する話の運びを象徴してくれているともいえるのですが。

「五人組」ってのはキャラの括り方として結構優れた区分だと思うのですが、この場合だと速見教員がガッツリ絡んじゃっているのであぶれてしまったのかもしれませんね。

まとめます。
放課後たいして目的の無く集まる部室モノの路線ってグダグダこそ正義であり笑いです。
一時、ジャンルとして隆盛したのもわかります。
ギャグ漫画としてはそれだけで挑んでもよさそうなのに、そこに恋愛の介入を許さない鉄壁のガードを誇る主人公を放り込んだのが実に新しい。

需要があるのかないのかはわからないけれど新機軸を打ち出せたと言って過言ではないかと。
新しすぎて、今も他の追随を許していない気もしますけど。

主人公がデレるようなそうでないような、お約束の日常は全四巻という丁度いいところでまとまっています。
慣れると評価が上がるタイプの漫画なんで、初見は意外と厳しいとも思いましたが、慣れたので星五つで。

表紙に釣られた読者を突き放すようにも迎い入れるようにも思える不思議な作品に仕上がっているように思えました。
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