カスタマーレビュー

2019年7月24日に日本でレビュー済み
1970年代から80年代の始めにかけて、マンガ界は日本のサブカルチャ-を世界水準にまで引き上げた時代だった、と思う。山岸涼子、つげ義春、大友克洋、岡田史子、萩尾望都、高野史子のずば抜けた才能が現れた時代であったし、このリストに竹宮恵子・大島弓子を加えれば、いわゆる少女マンガが時代を席巻していた、ともいえる。青年読者もまたかれらの作品に惹きつけられた。

なかでも、萩尾望都は、ヘルマン・ヘッセ、トーマス・マン、ヴェルレーヌ、ボードレール、それにワイルドやビアズリーの濃厚な影響のもとにマンガの中に高度な表現を与えたのである。萩尾望都の初期の到達点は、1972年から76年にかけて断続的に発表された「ポ-の一族」。その表現の文学的な(といってよい)高度さと、時代を往復させる文脈の複雑さゆえに、出版社も含め、はじめは誰も大きな売れ行きを期待していなかったこの作品は、社会現象になるほどの爆発的な売れ行きを記録した。

そして、2016年、40年ぶりにひょいと顔を出した「ポ-の一族: 春の夢」。一話限りかと思っていたら、2018年と19年に雑誌「フラワ-ズ」で「ポ-の一族」が再開された。その冒頭を飾る「ポ-の一族: ユニコ-ン」が単行本として発行されました。(2019年7月 小学館)。

40年前のシリ-ズ、その強度と緊張感そのままに開始された新シリ-ズを手にして、作者の驚異的な持続力に驚嘆する。「モチベ-ションが高いのは10代20代なんですよ。これまで描きたかったことがいっぺんにだっ-と出せる。・・ところが30歳ぐらいになって、はっと気が付くわけです。読者との距離に。はっと気が付くと年をとっているわけです。」と別の場所で言っている。(「萩尾望都」、「文藝」別冊2010年) 30歳をこえてからは、意識的にインプットし続けていかなければ衰えるだけだ、と、1949年生まれの著者は言う。

40年前のシリ-ズが西洋の文学一辺倒だったのに対して、今回のシリ-ズでは、西洋の歌曲やオペラから題材を多く借りている。オペラファンは堪らないのではないか。また、そうでない人は、オペラへの関心が高まるのではないか。それほどの影響力をいまだもつ萩尾望都の傑作の再開である。
29人のお客様がこれが役に立ったと考えています
違反を報告 常設リンク

商品の詳細

5つ星のうち4.6
星5つ中の4.6
534 件のグローバル評価