カスタマーレビュー

2019年1月6日に日本でレビュー済み
四巻目で完結。読んでいて、とてもフラットで柔らかく、温かな作者さんの目線を感じました。
このお話については、変に続編を意識して作っていない所が潔くて素敵だった!と思ったので、同作者様のまた次の、新たな作品へ思いを寄せております。

特に四巻目では、アメリカ留学で苦い経験をし、トラウマを負ってしまったマチコちゃんという女の子の思いに、凄く共感しました。この箇所を読んで思わず涙ぐんでしまい、マチコちゃんを嗤うことは、自分にはとても出来ないと思いました。
「ムスリムの人たちを怖いと思い込んで、偏見を持っていた。外国の人ってかっこいいなと思って、留学に憧れていただけなんですよね。SNSで外国の風景をバックに撮ってアップすると友達に羨ましがられてそれが嬉しかったりして。でも、本当は生まれ変わって帰りたかったのに」
マスメディアに踊らされてキラッキラに理想化された欧米先進国と欧米人とに憧れ、実際にその「先進国」に行って、人種差別や治安の劣悪さなどの思わぬ壁にぶつかり、この言葉に笑えなくなる日本人は、決して少なくないと思います。
9・11以来、日本では当たり前になっていた、ムスリムの人々は暴力的で怖いという思い込み、その時に反論したかったのに、当時出来なかった無力感を感じていたという、イスラム教徒である西森マリーさんのあとがきにも、深く頷きました。
元々イスラム教のコーランでは、復讐も自殺も禁じていますし、十年ほど前「アラブの春」を、ブログやネットの力だけを使い、暴力を振るう独裁者に対し、非暴力で乗り切り革命を遂げたのも、ムスリムの(エジプトやチュニジアの)若者たちでした。また日本の近くにも、例えばマレーシアなど、イスラム教を信仰する穏やかな国々は沢山あります。
不誠実な三枚舌外交によってパレスチナ問題を引き起こし、パレスチナに住むムスリムの方々をこれほど長く苦しめる原因を作ったのは、日本人が「紳士の国」と褒めるイギリスなどのキリスト教諸国です。この作品では一切触れられていませんが、実はキリスト教・ユダヤ教・イスラム教は全く同じ一人の神様(主・ヤハウェ・アラーと呼び名が異なるだけ)を信仰しており、それなのに何百年も前から、争いと迫害を繰り返している(というより主にキリスト教徒が、ユダヤ人やイスラム教徒を異教徒と呼び迫害しているケースが多い)のです。
核兵器など持っていなかったイラクを爆撃し、夥しい犠牲者と二百万人を超える難民を生み出し、イスラム国が誕生するきっかけとなったのは、今なお世界ダントツで中東に武器を輸出し儲けている国、アメリカです。イラク戦争では、米英兵たちの一部は、アブグレイブ収容所のムスリムの捕虜に性的虐待を加え、写真撮影までしていました。決してテロを擁護するわけではありませんが、現在、主に欧米諸国をターゲットに暗躍する自爆テロは、それら積年の宗教差別の結果、家族を失い帰る家を失い、行き場を失って現れた者たちでもあるのです。
それなのに、欧米先進国の「我々が正義だ」「我々の価値観が一番で、白人が世界一素晴らしいのだ」という声が、あまりに自信たっぷりで大きいものだから、日本人はそれら欧米先進国の悪事に驚いたことをケロッと忘れ去ってしまい、欧米先進国が常に正義に殉じる犠牲者でカッコ良く、ムスリムは凶悪だと思い込んでしまうのです。
「お見合い結婚は幸せな結婚の形ではなく、カッコ悪い」という、それもまた思い込みであり、実際には恋愛結婚によるDV事件もあれば、子供への虐待事件も多く起きてるし、逆にお見合い結婚でも夫婦円満で幸せな家庭も沢山あるのに、それから「大学進学は現役でなくてはカッコ悪い」というのもまた、思い込みで、職に就いてから初めて学問の奥深さに気付く、それも見方によっては学位ほしさに目的なく進学するより遥かに素敵なことなのに、どうして日本人は、というより世界の人々はこうも外面的なものに騙されやすいのでしょう。
自由に服が選べる国に生まれたはずなのに、他の子と同じ服を選ばないと、突然クラスで仲間外れにされるかもしれない、そんな恐怖に駆られる日本人だって、実は精神面ではかなり不自由で暴力的な社会に生きているのかもしれないのに。
ナダちゃんやミラクルさん、サトコちゃんたち、国籍の違うそれぞれの登場人物たちの生き方を通じ、素直にその原点に立ち返らせてくれる、明るくてさらっと読めてしまうようでいて、なかなかに奥の深い漫画でした。サトコちゃんと同じくクリスマスも楽しめる仏教徒ですが、成程なぁ~と思いつつ読みました。
勿論、イスラム教の良い部分だけではなく、一部地域では「名誉の殺人」という深刻な問題も起きていること、ブルカを着ていない女性が撃たれてしまう祖国から逃れ、故郷を失ったアフガニスタン人の女友達パキザさんのことなど、イスラム教(特に原理主義。恐らくパキザさんの祖国の場合はタリバン政権)の持つ闇の部分にも、ちゃんとスポットが当てられています。
「あなたの国の文化を知りたいのも勿論だけど、ナダ、私はあなたを知りたいの」というサトコちゃんは、作者さんご自身の姿なのでしょうか。とても愛おしく思います。サトコちゃんとナダちゃんお二人の未来が幸多きものでありますようにと、願わずにいられませんでした。
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商品の詳細

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