カスタマーレビュー

2018年10月15日に日本でレビュー済み
冒頭から引き込まれ一気に読んでしまった。
世間に対して感じる「生きづらさ」の正体が、登場人物を通して目前に迫ってくる心地だ。

徹底的に周りに合わせ、普通であろうとする、36歳女性 コンビニ店員の主人公、古倉。対して「この世界は間違っている」と毒づく男性、白羽。
古倉が価値を置いているのは「コンビニで働くことで、普通の人間っぽく振る舞えるようになる」ことである。
対して、白羽は「結婚して起業する」「誰からも文句を言われない生活をする」ことを目標としている。世間の一般人とは異なる、特別な自分になることで、今まで自分を馬鹿にしてきた人たちを見返すことに価値を置いている。

普通でありたい気持ちと、異質でありたい気持ち。
読み進めていくうちに、私にはこの2人がどこか他人のようには思えなくなった。
序盤では「あぁ、こういう人いるよね」と思っていた。読み進めるにつれ「この2人が持っている要素は、自分の中にも、いや生きている人間すべてにあるんじゃないか」と思えてきた。 この世界で異常なのは古倉と白羽だけ、という描かれ方になっているものの、普通っぽく見える人(店長や妹など)も、飄々としているようで苦しみながら普通を装ってるだけかもしれないのだ。

また、冒頭の唐揚げの描写と、後半の畳み掛けるような唐揚げ棒のくだりが対比になっていたことにも驚いた。一見シンプルで淡々とした描写の中に、こうした仕掛けがしてあると、もう一度読み直したくなる。

作中ではコンビニに喩えられているが、「均一であるよう強制し、教育する場所」として、これは学校だったり会社だったりするんじゃないだろうか。主人公の古倉が制服を着て店員として振舞うことでどこか安心した、という心理もなんとなくわかってしまう。それがいいことなのか、悪いことなのか、他人がジャッジすることはできない。

この本の中には「普通」だと思っていた人たちが「普通じゃなく」見えてくる境界線がハッキリと存在しており、その転換の描き方が淡々としていながらもダイナミック。
読み終わった後も、古倉が「普通って何?」「本当の自分とは?」と問いかけてくるような気がする。
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