カスタマーレビュー

2019年6月24日に日本でレビュー済み
ネタバレ配慮しません。長いです。

まず、予定調和なりに爽やかにフィナーレを迎えたことに感動しました。
また久美子を当事者に据えて一昨年〜昨年のゴタゴタをリバイバルするという試みは楽しかったです。
ただしその諸問題のリベンジとしては綺麗に決着がついていなかったと感じました。

大きくは真由と麗奈の扱いの酷さで見えてくると思います。

真由のスタンスについては前編で本人が語ったことが全てで、後編で新事実は出ませんでした。
久美子の疑心により裏表のない真由の言動が玉虫色に見えてしまう展開でしたのでこれはまあ当然。
しかし真由も人間なので、入学後に色々思うことがあったはず。そこの描写が薄すぎる。
真由目線たまたま編入したコミュニティのボスが勝手に警戒しだして、対案を必死に呼びかけても拒否され、子分たちが排斥してくる訳です。
オーディションが原因だったのでボスが納得いく結果で収まったら当然のように自分に対する当たりも柔らかくなっていき、フォローもありません。
真由は怒って当然だと思うんですが、感情を持つことを許されていないかのようにどこ吹く風で物語から退場するので、結局久美子の物語を演出するための人形程度の扱いにしか感じられませんでした。
真由が心からこの吹奏楽部を楽しめたかといえば疑問です。その原因を担った久美子が真由へのフォローもろくに行わず、「部員皆が北宇治を好きになってくれたら嬉しい」ってかなり白々しい。
更に言えば今年って、【仮に一昨年香織先輩が再オーデで勝ったルート】と何が違うんでしょうか?

次に麗奈。久美子との衝突から見えてきたのは、結局麗奈は久美子に己のイエスマンでいてほしいだけという事実でした。
彼女のスタンスは、2年生までは「ストイックな彼女が見せる恋する乙女の顔」で許されていますが、今年のように実権を握る立場で公私混同、異見する者皆敵認定は流石に幼稚すぎます。
香織先輩が提唱する、「誰もが誰かの特別。特別な存在も一人の人間だから失敗も受け入れて信じる」がこの作品の答えになるのだと思います。
久美子→麗奈への態度はそれに沿った気持ちの表れだと思います。
しかし麗奈→久美子目線は【反抗してきた信奉者が悔い改めたので赦しを与えた】図以外何物でもない。せめて大好きのハグから伝えた久美子の気持ちは麗奈から自発的に思い至るべきでは?
1年生のときに描かれた、神々しいまでのバディ像は幻想だった、といえば求めすぎでしょうか。

シリーズを通して、「未熟故に屈託を覚え、他者に屈託を与える」という苦さをかなりシニカルに描いてきた作品だと思います。
これまでは主人公の久美子が決して当事者にならず覗き見するように渡り歩くことで、神の視点を維持していた。しかしいざ問題の中心に放り込まれると誰かに屈託を与えてしまい、それを自覚してもこれまでの経験を活かした振舞いができなかった。
それはそれで等身大の高校生らしい有様だと思います。ただ、それでは久美子が主人公であった意味はなんでしょう?
完結作のこの作品では、このシリーズの最終楽章を期待していたのですが、蓋を開けてみればこれまでの楽章の変奏曲だったという感想です。
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