カスタマーレビュー

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2021年6月7日に日本でレビュー済み
本作品を全巻揃えていると思っていたが、一部買いそびれていたことに気づいて購入。同様に購入した東京ドーム編15巻の内容はあまり覚えがなかったのだが、本巻の移籍先のパリーグで主人公と先輩コーチが苦境に立つ展開の苦しさや、「ボツイチ」地元アナウンサーの娘と主人公父子との邂逅もよく覚えていた。後者のエピソードなどは連載では何となく唐突で場違いな印象だったが、単行本で通して読むと先輩ピッチャーや故人=娘の父との絡みも含めて情緒的表現の巧緻にやられてしまう。さすがだ。しかおそれを通して主人公の人物像毛が深まる。そうだよな。主人公はこういういいやつなんだよな。そこが主人公の凡庸さにもつながり、物語世界での主人公の立ち居振る舞いのたどたどしさにもつながるのだが、そうだからこそ凡人たる筆者らは主人公に共感することができる。そしてその「凡庸」な主人公がその人物像毛をそのままにリアリティを感じられる範囲での(実は全く非現実的な)成功を収めるというところが本作品・シリーズの肝であり、本作品が長く愛されているのだと実感する。そう考えると「主人公の人物造形」そのものが本作品に最大の絵空事であり、物語の動因であるとわかる。さらに作中のナッツ編やスオピンオフの「夏之介の青春」もその点で軌を一にしていることがわかる。
 まあそんなことに今更気付く自分がボンクラなんだが。
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