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2021年6月30日に日本でレビュー済み
アメコミは量的(長大なストーリー)にも質的(壮大なスケール)にも、異常なほどの大風呂敷を広げておいて、それをキチンと畳むというのが魅力の一つであり、読者を圧倒する部分だと思います。厳密には、よく畳むのに失敗するようですが、そういうものはあまり翻訳されないので、邦訳派は成功例ばかり目にすることができます。巨大風呂敷畳みの手頃かつベストな例というと本当はマーベルじゃなくてDCの三大クライシスや、それに類するメタイベントなどなのかもしれませんが……もちろん、マーベルだって負けていません。本書を翻訳してくださったヴィレッジブックスさんのサイトにいくと、(2021/6時点では)マーベル作品について二つのフローチャートが示されています。この二つのフローチャートこそ、それぞれ長大で壮大な巨大風呂敷畳みの好例でしょう。どちらも膨大な作品数になってしまっているので、気軽にオススメできないのが痛しかゆしなところです。
そして、そんな大風呂敷に、新たな一枚が加わりました。しかも今回、この一冊から始まって、(まだ続くようではありますが、一応)この一冊で終わります。マーベルについての予備知識が必要だと思うので、最初の一冊としては、やっぱりススメられませんが、ある程度は知ってるという人には、最も手頃な例ができたのではないでしょうか。しかも娯楽的な見どころもたくさんあります。
出だしは、「シークレット・エンパイア」以後の、各キャラクタの後日談的なエピソードの集合から始まります。この時点でのビッグスリーが、スティーブ、トニー、オーディンソンでなく、サム、リリ、ジェーンになっているのが象徴的です。一方で、「100万年前のアベンジャーズ」がセレスティアルと戦うという、過去のエピソードが語られます。大昔にアベンジャーズに該当するチームがいたというのが奇抜であり、そのメンバーも面白いところですが(ちゃんと昔からいそうな連中というところが凝ってますが、なによりゴーストライダーの乗り物に注目!)これが単なるお遊びではなく、ちゃんとストーリー的に意味があるというところが素晴らしい。過去のライダーもユニークですが、現代でもバイクでなく車乗りの新ゴーストライダーが登場し、圧倒的な強さを見せます。そして、元祖ビッグスリーも改めて集合。復活するキャラもいたりして、大イベント後の仕切り直しをダイジェストで見ることができます。
そんななか、地底で見つかったセレスティアルが復活。どこかの空間から、ファイナルホストと呼ばれるセレスティアルズも襲来し、謎の昆虫風モンスターも大量に出現。何かを知っているらしいロキも暗躍。未曾有の(マーベル世界では未曾有でもありませんが)危機に、アベンジャーズが挑みます。ビッグスリーの再結集も嬉しいですが、今回、ハルクは不在。かわりにシーハルクが参加します。シーハルクというと、もう少し細身で理性的なイメージがありますが、今回は完全にハルク化しています。
100万年前のアベンジャーズにも意味があると書きましたが、マーベルの世界そのものの成り立ちにまで話が及び、暗黙の了解として誰も気にしてなかったような謎まで解明されます。アメコミというと大味なイメージがあるかもしれませんが、実際には、辻褄合わせにつぐ辻褄合わせで、神経質なほど先行する設定・作品に説明をつけていく傾向があります。その傾向が風呂敷畳みにも繋がっていくわけですが、今回は特大規模・宇宙規模の後付け説明が一冊のなかで行われ、前述通り、とても見事な例になっています。
また、物語的なスケールも巨大ですが、物理的な事象に目をやっても、無敵の巨人セレスティアルに如何にして立ち向かうかという、巨大なものです。逆転劇の第一弾として力で抗うところも十分に度肝をぬく豪快なアイディアが詰まっていますけれども(ソー、シーハルク、ゴーストライダーはともかく、トニーの対抗策の用意周到さと規模はギャグの域)、決定打となる第二弾は、一転して巧妙な発想で、いかにもヒロイックですし、盛り上がります。こちらの畳み方も上手いですし、多段構造にするのも心憎いです。風呂敷が大きいだけでなく、数も多いのに、それぞれ綺麗に収斂させるというのがアメコミ(の成功例)の鮮やかなところだと思います。
100万年前のアベンジャーズという、一見してくだらなくて寒いお遊びから始まって、ちゃんと全てを「なるほど」というところに落とし込む離れ業でありました。

なお、今回はゴーストライダーが主役といってもいいでしょうが(いままで最強説は牽強付会と思ってましたが、ほんとに最強かもしれない)、いろいろと説明してくれるロキも影の主役と言えるでしょう。ロキは昔の爺さんみたいな顔ではなく、優男バージョンですので、ロキファンにも注目かもしれません。最初で最高のアベンジャーというようなことを自称するのも、一理あって、カッコいい。

あと本編とは関係ないですが、ローグとサイロックとガンビットのヴァリアントカバー、超カッコイイですね……。
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商品の詳細

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