途中までは大変面白かった。一冊の漫画にここまで没頭したのは久しぶりだ。
読みごたえがあって、でもずるずると引きこまれる圧倒的な描写力がある。
だが最後はどうなんだろうか。ヒーローが狩られる理由に全然納得がいかない。黒幕もその思想も。
最後まで読み終えると、そこに深いようで浅い。思慮深いようで傲慢で安直な考えがあるように思えてどうしても好きになれなかった。
途中までは濃密な人間描写があり、ヒーローたちには血が通っているのだが、ラストで急に彼らが物分かりの良い人形と化しているように思えて閉口した。
え?それで好いのかお前らって感じで。葛藤する描写もあるにはあるが表面的なだけで答えは出ている感じだ。
これは日本のヒーローものにもよくある。
例えば法で裁けぬ悪を登場人物の一人が不当に殺してしまったとして、最後に誰かが訳知り顔で言うのだ。
「彼のやった事は本当に悪と言えるのだろうか?」
こういう展開が私は嫌いだ。登場人物はまるで中立的な立場でものを言ってるように語るが、そうではない。完全に片方の意見に傾いた独善的な台詞なのだ。これは問いのようでいて答えであり、実の所作者の答えは決まっていて、彼は読者にこう言いたいだけなのだ。
「正しいに決まってるだろ。」
ただそう言うと間が抜けて聞こえるので(もしくは自分が客観的視点に立っていると言う幻想を持っている)こう言う物言いをさせるだけだ。こう言った手法は卑怯であるし、不誠実でもあると考える。
ロールシャッハだけは好きだった。終盤人形と化したヒーロー達の中で最後まで彼だけは人であり、紛れもないヒーローであった。訳知り顔で物を語らず最後まで戦い続けた。
彼は狂人だったが、それは彼が最後まで人であった証だ。
ヒーローとは神様気取りのサイコパスの事ではない。悩み苦しみ、己の矜持を守る為、戦い続ける人間の事だ。
この作品は嫌いだがロールシャッハだけは好きだし彼の生き様に敬意を払いたい。
闘う者には敬意を払うべきなのだ。それがどんな最後を迎えようとも。
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WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books) 単行本 – 2009/2/28
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Who watches the watchmen?(誰が見張りを見張るのか?)
SF文学の最高峰ヒューゴー賞をコミックとして唯一受賞し、
タイム誌の長編小説ベスト100にも選ばれた、グラフィック・ノベルの最高傑作!
アメリカン・コミックスがたどり着いた頂点がここにある――。2009年3月公開映画原作。
岡田斗司夫氏、絶賛!
「日本のコミックは世界イチ」と浮かれるなかれ。
とんでもない黒船がやってきた。
世界一のSFコミックに戦慄した!
全ページ再カラーリングによる完全改訂版。48ページにわたる豪華資料(アラン・ムーア、デイブ・ギボンズによる寄稿、キャラクター設定資料、コンセプトアート、アラン・ムーアの原作原稿、パイロット版)も収録。「なか見!検索」にて第1章を公開中です(好評につき、9月18日まで公開期間が延長となりました)。
1985年、東西冷戦下のアメリカでは、核戦争の危機が目前に迫っていた。そんなある日、ひとりのニューヨーク市民が殺害される。政府により禁止されたヒーロー活動を続けていたロールシャッハは、独自の調査で、殺害されたのが、かつての仲間コメディアンであることを突き止める。これはヒーロー抹殺計画の第一段階なのか? 事件を追ううちに、ヒーローたちはそれぞれの心の闇に直面し、やがて世界を根底から覆す巨大な陰謀に巻き込まれていく……。
SF文学の最高峰ヒューゴー賞をコミックとして唯一受賞し、
タイム誌の長編小説ベスト100にも選ばれた、グラフィック・ノベルの最高傑作!
アメリカン・コミックスがたどり着いた頂点がここにある――。2009年3月公開映画原作。
岡田斗司夫氏、絶賛!
「日本のコミックは世界イチ」と浮かれるなかれ。
とんでもない黒船がやってきた。
世界一のSFコミックに戦慄した!
全ページ再カラーリングによる完全改訂版。48ページにわたる豪華資料(アラン・ムーア、デイブ・ギボンズによる寄稿、キャラクター設定資料、コンセプトアート、アラン・ムーアの原作原稿、パイロット版)も収録。「なか見!検索」にて第1章を公開中です(好評につき、9月18日まで公開期間が延長となりました)。
1985年、東西冷戦下のアメリカでは、核戦争の危機が目前に迫っていた。そんなある日、ひとりのニューヨーク市民が殺害される。政府により禁止されたヒーロー活動を続けていたロールシャッハは、独自の調査で、殺害されたのが、かつての仲間コメディアンであることを突き止める。これはヒーロー抹殺計画の第一段階なのか? 事件を追ううちに、ヒーローたちはそれぞれの心の闇に直面し、やがて世界を根底から覆す巨大な陰謀に巻き込まれていく……。
- 本の長さ464ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館集英社プロダクション
- 発売日2009/2/28
- ISBN-104796870571
- ISBN-13978-4796870573
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
“金曜の夜、ニューヨークで一人の男が死んだ―”1985年、核戦争の危機が目前に迫る東西冷戦下のアメリカで、かつてのヒーローたちが次々と消されていた。これはヒーロー抹殺計画のはじまりなのか?スーパーヒーローが実在する、もうひとつのアメリカ現代史を背景に、真の正義とは、世界の平和とは、人間が存在する意味とは何かを描いた不朽の名作。アメリカン・コミックスがたどり着いた頂点がここにある。全ページ再カラーリングに加え、48ページにわたる豪華資料を収録した完全改訂版。SF文学の最高峰ヒューゴー賞をコミックとして唯一受賞し、タイム誌の長編小説ベスト100にも選ばれた、グラフィック・ノベルの最高傑作。
著者について
(作)アラン・ムーア
1953年イングランド出身。1980年コミックライターとしてデビューし、以降「V フォー・ヴェンデッタ」「フロム・ヘル」などの著作で数々の賞を受賞している稀代の名ライター。その複雑で思慮に富んだストーリーによって1980年以降のコミックスシーンにおいて最も重要なクリエイターの一人に数えられており、その後の全てのコミック作家に影響を与えたと言われている。
(画)デイブ・ギボンズ
1949年イングランド出身。1973年にプロデビューし、「2000A.D.」「ハーレム・ヒーローズ」「ダン・デア」などの作品を手掛ける。
1953年イングランド出身。1980年コミックライターとしてデビューし、以降「V フォー・ヴェンデッタ」「フロム・ヘル」などの著作で数々の賞を受賞している稀代の名ライター。その複雑で思慮に富んだストーリーによって1980年以降のコミックスシーンにおいて最も重要なクリエイターの一人に数えられており、その後の全てのコミック作家に影響を与えたと言われている。
(画)デイブ・ギボンズ
1949年イングランド出身。1973年にプロデビューし、「2000A.D.」「ハーレム・ヒーローズ」「ダン・デア」などの作品を手掛ける。
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登録情報
- 出版社 : 小学館集英社プロダクション (2009/2/28)
- 発売日 : 2009/2/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 464ページ
- ISBN-10 : 4796870571
- ISBN-13 : 978-4796870573
- Amazon 売れ筋ランキング: - 74,223位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 741位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- - 1,171位英米文学研究
- - 67,806位コミック
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2020年1月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この作品がアメコミ初心者に勧められる理由は物語が本書のみで完結しているからです。事前知識無しで読めるアメコミは指で数えられる程度しかありません。
ただ慣れないアメコミであることに加え'86年の古めかしい絵柄や膨大なページ数は初心者向きではないので映画版を事前に観ておくと話が入ってくる分読みやすくなるかもしれません。
この物語はただの勧善懲悪ではなく、ハッピーエンドでもバッドエンドでもない形で終結します。平和であったり正義であったりそれらと真実との葛藤、社会、愛など深いテーマが詰め込まれています。また一人ひとりのキャラクターが完璧で読み終えてアメコミ最高峰と称される訳がわかります。
ストーリーとは一見無関係な海賊のコミックが何度も挿入されています。これはあるキャラクターの心理状態のメタファーだそうです。僕はなんじゃこれって読み飛ばしてましたが一度頭に入れた状態で読むのを勧めます。
ただ慣れないアメコミであることに加え'86年の古めかしい絵柄や膨大なページ数は初心者向きではないので映画版を事前に観ておくと話が入ってくる分読みやすくなるかもしれません。
この物語はただの勧善懲悪ではなく、ハッピーエンドでもバッドエンドでもない形で終結します。平和であったり正義であったりそれらと真実との葛藤、社会、愛など深いテーマが詰め込まれています。また一人ひとりのキャラクターが完璧で読み終えてアメコミ最高峰と称される訳がわかります。
ストーリーとは一見無関係な海賊のコミックが何度も挿入されています。これはあるキャラクターの心理状態のメタファーだそうです。僕はなんじゃこれって読み飛ばしてましたが一度頭に入れた状態で読むのを勧めます。
2018年3月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
究極のリアリティがここにある。
登場人物は全員生きているし、世界も生きている。起こるべくして起こり、なるべくした帰結に向かって誰もが必死に生きている。あまりにも名作であり、真の小説。
ロールシャッハは狂人だが真の男である。ナイトオウルはロールシャッハを理解出来なかったが友達であろうとはした。すべてが過不足なく描かれ、生き切るように書き切られている、心の隅にずっと残って傷を残し続ける物語。
ラストは映画版の方が救いがあって好き。
登場人物は全員生きているし、世界も生きている。起こるべくして起こり、なるべくした帰結に向かって誰もが必死に生きている。あまりにも名作であり、真の小説。
ロールシャッハは狂人だが真の男である。ナイトオウルはロールシャッハを理解出来なかったが友達であろうとはした。すべてが過不足なく描かれ、生き切るように書き切られている、心の隅にずっと残って傷を残し続ける物語。
ラストは映画版の方が救いがあって好き。
2014年1月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分はアメコミ初心者で、この本を買った時も先入観としての「アメコミらしさ」を想像していましたが、そんな先入観は見事にいい意味で打ち砕かれました。個人的には好みの作風・内容で、本当は星5の評価を付けたかったのですが、しかし、もしも自分と同じような初心者で、かつ、軽快・爽快な内容の話が好きだという人が読む場合、良い意味ではなく期待を裏切られる事にもなってしまうのではないかと思い、星4つとさせていただきました。
内容の深い作品、どこかダークな雰囲気が好きな方にはお勧めです。そういった方には逆に、先入観を捨てて読むことを強くお勧めします。本自体も分厚いですし、値段に見合うだけの価値はあると思いますので。
内容の深い作品、どこかダークな雰囲気が好きな方にはお勧めです。そういった方には逆に、先入観を捨てて読むことを強くお勧めします。本自体も分厚いですし、値段に見合うだけの価値はあると思いますので。