ベタですが、中学二年生の時、「ポーの一族」を読んで萩尾望都先生のファンになりました。
それから少しずつ、「トーマの心臓」「11人いる!」「メッシュ」「残酷な神が支配する」など有名な作品をはじめ、すばらしい作品の数々を愛読してきました(もちろんまだまだ未読の作品もあります)。
「銀の三角」は名作のひとつとしてあがるSF超大作だと聞いていましたが、どうにもピンと来ないまま、10年の歳月が経ち、この度「百億の昼と千億の夜」と共に最近の作品を集めようとAmazonでカートに入れる最中、ふいに「銀の三角」もポチしてみようと決意。
買って届いて読んですぐ、後悔。どうしてもっと早く読んでおかなかったのか!と。
「銀の三角」には時間移動、クローン、絶滅した種族、時空のゆがみなど・・・今では当たり前とされるSFの要素が新鮮な輝きを保ったまま、作品の中にとじこめられています(ちなみに時の行き戻りは尋常じゃない。千年万年単位)。
そこに謎めいた吟遊詩人ラグトーリンの紡ぐ幻の音楽が交差し合い、美しいハーモニーを奏でています。SFと音楽の相性最高。いっさいのむだのないつくり。緻密で繊細な作画。ため息が出るほどすばらしい。
と、称賛のすべてを捧げられる自信はあるものの、実のところあらすじを説明しろと言われたらそっちの方はできません。
よしながふみ先生が萩尾先生との対談の中で「銀の三角」を話題に出し、「読んでいる時はどういう話か分かって読んでいるのに読み終わったら誰かに説明しようとしても分からなくなる」というようなことを仰っていました。
まさしくその通りです。読者は萩尾先生によって読む度時間を遡行させられ、記憶に介入され、次読む時には新しい感覚を覚えさせられる・・・
これは萩尾先生が作品に仕組んだ最大の科学装置なのでしょう(たぶん)。
わたしもまた未知の感覚を求めて、何度も萩尾先生にあやつられに、本を開きます。
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