一年くらい前にマンガを1巻だけ読んで、「いずれ全巻通読しよう」と思ったまま半ば忘れかけていたらアニメ化され、「観に行こう」と思っていたら上映期間が過ぎてしまい……と、どうにも煮え切らないことを重ねてしまいましたが、リバイバル上映されたので観に行きました。
考えさせられることの多い良作ではありましたが、何せ全七巻の原作を130分に収めているので、かなり端折った感があって不完全燃焼気味だったので、マンガ全巻まとめ買いして一気読みしました。
エッセンスを抽出したアニメ版も悪くないけど、やっぱりディティールの充実しているマンガ版の方がベターですね。登場人物一人一人の心の襞が丁寧に書き込まれていて、マンガ版を読んで初めて腑に落ちることも少なくありませんでした。
1巻のレビューを見ると、「いじめの加害者と被害者が分かりあって、両想いになるとかいくらなんでもご都合主義すぎるだろう」というごもっともな意見も書かれています。それは確かにごもっともで、「意外にすんなり両想いになるんだな」と私も思いました。
だけど、その設定がご都合主義すぎることくらいは、作者だって(編集者も含めて)わかっていないはずはないと思うんです。だから、ただそういうごもっともな批判をぶつけて事足れりというのでは、作品の受け止め方としてはただ入口に立っただけで終わってしまいます。
問題は作者がなぜあえてそういう設定を取ったかということにあるわけです。そこまで考えないて、表面的な批判をぶつけても意味がありません。
私はザックリ言うと「分かり合うことの困難と可能性」を描こうとして、そういう設定を採ったんだろうと解釈しました。作中、「いじめ」のもたらす(あるいは露呈させる)断絶は相当根深いもので、加害者と被害者が両想いになったからといって、全てが水に流されるわけではありません。そういう所はシビアに描かれていると思います。
ヒロインがちょっと「いい子」過ぎるかなとは思いました。重いハンディキャップを負っている人物が、善良で純粋なキャラクターとして描かれやすいということはかねてから指摘されている通りですが、ご多分に漏れずという感じではあります。しかし、ヒロインの内的葛藤が描かれるに至って、「ああ、そういうことだったのか」と思いました。まあ、ある程度は納得できたというか、完全には納得できなかったというか・・・・
1巻のレビューには「現実の難聴者はこんなふうじゃない」という批判も見受けられますが、私はその当否を判断する材料を持ち合わせていないし、そのレビューにも具体的にどう違うのかは書かれていないので、何とも言えません。
非の打ち所のない作品なんてあり得ないという意味では、気になる所が無いないなんてこともあり得ないし、何かしらモヤモヤしたものが残る作品の方が、考える手掛かりになるという意味で、良い作品だとも思います。という意味で、私にとっては良い作品でした。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。
