10年ほど発達障害診療に関わっている現場の医師です。
本田秀夫先生の言われる「ボトムアップ」ではなく「トップダウン」の支援、
つまり本人の苦手さを克服させようとお尻をたたくのではなく、
環境側が本人の苦手さを和らげられるよう合理的な配慮に努めながら
本人の特性にともなう強みを生かして社会に貢献していただく、
そのために発達障害当事者の最も致命的な合併症となりうる情緒面での二次障害を予防できるように
家族、学校、友人、会社といった環境側がスキルアップしつつ、
発達障害当事者本人も試行錯誤を通して「世渡り術」のスキルアップを意識していく。
また発達障害当事者は定型発達の人よりもとくに「やりたいこと」にフォーカスして豊かな人生を歩んでいただく。
これらのことは一昔前の指導方針とはかなり異なりますが、
私も経験を通してその通りであると実感しております。
また、そのような方針をお伝えした時に、
かつての指導方針に準じて一昔前の療育などを努力されていた発達障害児の親御さんからは
「かつての努力は一体何だったんだ、そんなにがんばらせなければよかった、もっとやりたいことをやらせておけばよかった」、と言われることが多いです。
小職からは、「今までの努力は決して無駄ではなかったが、もう十分頑張ったのでこれからはこちらの方向性でいきましょう」というような言葉でやんわりと方向修正を促すのですが、
支援の初期からトップダウン式で支援者全員が同じ方向性で支援をしていくことの大切さを痛感する日々です。
ASとADHの重複が非常に多いことも実感しますが、家族、学校、行政は医師の診断名に非常に強く影響されてしまうことも現実であり、今までは診断名をつけることにためらいやもどかしい思いを抱えながら診療しておりましたが、このような画期的な一般書が世の中に出たことで、医師としても非常に気持ちが楽になったと感じております。
ぜひ多くの方に目を通していただきたい良書です☆
——————————————-
(追記)DSM-5につきまして
【以下は米国精神医学会『DSM-5のための計画委員会』が出した報告からの抜粋です。(『DSM-5 研究行動計画』みすず書房,2008)】
*各DSM症候群に特異的な生化学的マーカーは、候補こそ多数提案されているが、1つとして発見されていない(p8)。
*DSM症候群間には高率に併発の存在することが証明されており、したがってDSM症候群がそれぞれほかと明確に区別される病因のあらわれであるとする仮説の基盤は危うい。それだけでなく、疫学的研究が証明してきたように、DSM障害には短期診断さえ不安定なものが多い。トリートメントに至っては特異性欠如がむしろ当たり前である(p8)。
*研究者たちがDSM分類の奴隷になったような適用の仕方をしているために、精神障害の病因研究が妨げられてきた恐れがある(p8)。
*DSM分類が実体化されて疾病と同等と見なされる行き過ぎにまで至れば、それは研究結果の理解を促進するよりも阻害する確率のほうが高くなるだろう(p8)。
*以上述べた現行診断パラダイムの限界のすべてが示唆する通り、もっぱらDSM症候群の洗練に集中した研究では、DSM症候群の基底をなす病因の解明など絶対に成功しないであろう。その解明のためには、現在なお、どういうものとなるのかわからないが、とにかくパラダイム変換が起こる必要があるだろう(p8)。
———————————-
(私見)
DSM-5分類に厳密に従わずに主観的な診断をしていることへの辛辣なレビューが多数の「役に立った」を集めていることに、現場の医師の一人として愕然とした思いを抱きました。
DSMに代表される今日の精神科領域の診断システムには無数の欠陥があり、まさにDSM分類の創始者たちでさえ、現在までに至る精神科領域の症候群的アプローチに対し疑問を示しはじめているのです。
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疾患モデルではなく、ただ少数派なだけ!
「無理に治さなくていいのか!」「目からウロコが落ちた!」と大反響
「こだわりが強い」「うっかり屋」「気が散りやすい」……
発達障害は、じつは疾患モデルではなく、
ただ少数派なだけ!
●発達障害の人は、なぜ独特の行動をとるのか
私は、精神科医として30年あまり、臨床経験の大半を発達障害の診療に費やし、乳幼児から成人まで、さまざまなライフステージの方たちによりそってきました。それだけの期間にわたり、臨床医として活動している例は世界的にもまれです。そのような機会があったからこそ、発達障害のやや不可解な部分について、いろいろと知り、いろいろと考えることができました。その成果をこの本を通じてお伝えします。
発達障害の入門書や解説書はすでにたくさん出ていますが、この本では、私の長い臨床経験から、ほかの発達障害の本にはあまり書かれていないことをお話ししていきたいと思います。それは、発達障害のなかでも割合がかなり多いにもかかわらず、十分に理解されていない人たちの話です。
発達障害にはASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの種類がありますが、じつはそれらの種類のいくつかが重複している人が、かなり多くいらっしゃいます。そして、そうした重複例はかなり多いにもかかわらず、適切に理解され、対応されていないケースがよくみられるのです。
自閉スペクトラム症には「対人関係が苦手」で「こだわりが強い」という特徴があります。そしてADHDには「気が散りやすい」「じっとしていられない」という特徴がみられます。
「こだわりが強いこと」と「気が散りやすいこと」は、一見するとまじりあわない特徴のように思われます。しかし、それらが重複して現れるケースがよくあります。
(「はじめに」より)
●目次
はじめに 発達障害の人の行動や心理によりくわしく
プロローグ 発達障害かもしれない人たち
この人たちが発達障害かどうか、わかりますか?
ケース1 時間にルーズな男の子
第1章 「自閉スペクトラム+注意欠如・多動」な人たち
発達障害の特性は重複して現れることも
なぜ発達障害の特性の重複は理解されにくいのか
第2章 発達障害と「ふつう」はどう違うのか?
発達障害には「強弱」がある
発達障害と「ふつう」の境界線はどこにあるのか
第3章 発達障害の人が「本当の自分」を知る方法
特性の「重複」と「強弱」を考える図
従来の「重複例」と、この本が考える「重複例」
第4章 「やりたいこと」を優先する!
特性がわかったら「環境調整」を
発達の特性への対応には2種類のアプローチがある
環境調整が十分に行えないケースも
第5章 自分が「発達障害かもしれない」と思ったら
発達の特性がある人の「生きづらさ」を軽視しない
微妙な「生きづらさ」からわかることがある
おわりに あらためて、発達障害とはなにか
ほか
「無理に治さなくていいのか!」「目からウロコが落ちた!」と大反響
「こだわりが強い」「うっかり屋」「気が散りやすい」……
発達障害は、じつは疾患モデルではなく、
ただ少数派なだけ!
●発達障害の人は、なぜ独特の行動をとるのか
私は、精神科医として30年あまり、臨床経験の大半を発達障害の診療に費やし、乳幼児から成人まで、さまざまなライフステージの方たちによりそってきました。それだけの期間にわたり、臨床医として活動している例は世界的にもまれです。そのような機会があったからこそ、発達障害のやや不可解な部分について、いろいろと知り、いろいろと考えることができました。その成果をこの本を通じてお伝えします。
発達障害の入門書や解説書はすでにたくさん出ていますが、この本では、私の長い臨床経験から、ほかの発達障害の本にはあまり書かれていないことをお話ししていきたいと思います。それは、発達障害のなかでも割合がかなり多いにもかかわらず、十分に理解されていない人たちの話です。
発達障害にはASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの種類がありますが、じつはそれらの種類のいくつかが重複している人が、かなり多くいらっしゃいます。そして、そうした重複例はかなり多いにもかかわらず、適切に理解され、対応されていないケースがよくみられるのです。
自閉スペクトラム症には「対人関係が苦手」で「こだわりが強い」という特徴があります。そしてADHDには「気が散りやすい」「じっとしていられない」という特徴がみられます。
「こだわりが強いこと」と「気が散りやすいこと」は、一見するとまじりあわない特徴のように思われます。しかし、それらが重複して現れるケースがよくあります。
(「はじめに」より)
●目次
はじめに 発達障害の人の行動や心理によりくわしく
プロローグ 発達障害かもしれない人たち
この人たちが発達障害かどうか、わかりますか?
ケース1 時間にルーズな男の子
第1章 「自閉スペクトラム+注意欠如・多動」な人たち
発達障害の特性は重複して現れることも
なぜ発達障害の特性の重複は理解されにくいのか
第2章 発達障害と「ふつう」はどう違うのか?
発達障害には「強弱」がある
発達障害と「ふつう」の境界線はどこにあるのか
第3章 発達障害の人が「本当の自分」を知る方法
特性の「重複」と「強弱」を考える図
従来の「重複例」と、この本が考える「重複例」
第4章 「やりたいこと」を優先する!
特性がわかったら「環境調整」を
発達の特性への対応には2種類のアプローチがある
環境調整が十分に行えないケースも
第5章 自分が「発達障害かもしれない」と思ったら
発達の特性がある人の「生きづらさ」を軽視しない
微妙な「生きづらさ」からわかることがある
おわりに あらためて、発達障害とはなにか
ほか
- 言語日本語
- 出版社SBクリエイティブ
- 発売日2018/12/5
- ファイルサイズ8935 KB
商品の説明
著者について
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
◎信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部長
特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事
◎精神科医師。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部長。2018年より現職。日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会代議員、日本自閉症協会理事。
◎2013年刊の『自閉症スペクトラム』(小社刊)は12刷5万部のロングセラー。
--このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
◎信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部長
特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事
◎精神科医師。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部長。2018年より現職。日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会代議員、日本自閉症協会理事。
◎2013年刊の『自閉症スペクトラム』(小社刊)は12刷5万部のロングセラー。
--このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
本田/秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。精神科医。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より現職。日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会代議員、日本自閉症協会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。精神科医。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より現職。日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会代議員、日本自閉症協会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
発達障害とは、なんらかの機能や能力が劣っているのではありません。「病気」というよりも、「選好性の偏り」と考えるほうが、ずっと当事者の理解に役立ちます。「選好性」とは「~よりも~を優先する」という心の志向性です。たとえば「対人関係よりもこだわりを優先する」「じっとしていることは苦手だが、思い立ったらすぐに行動に移せる」…そんな視点から発達障害を理解し、無理に「ふつう」に合わせなければ、生活の支障は起こりにくくなります。発達障害の人の行動や心理、支援の方法までを解説。 --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B07KP178JB
- 出版社 : SBクリエイティブ (2018/12/5)
- 発売日 : 2018/12/5
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 8935 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 174ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 2,191位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 6位SB新書
- - 41位医学・薬学
- - 119位科学・テクノロジー (Kindleストア)
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カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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2019年1月3日に日本でレビュー済み
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327人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2018年12月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「自閉スペクトラム症という診断がでたが,当てはまるところと,そうではないところがある。結局,診断が正しいのかどうかわからないという場合,ASDとADHDなど複数の疾患が重複している複雑例が多く,そういった場合には適切に理解され,対応されていない」ということがこの著作の主な趣旨の一つであると思われるが,著者はそもそも自閉スペクトラム症を正しく理解していない。
自閉スペクトラム症の診断基準(DSM-5)の主症状は,「社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥」「行動,興味,活動の限定された反復的な様式」(DSM-5精神疾患の分類と診断の手引 医学書院)と記載されている。著者はこれを「臨機応変な対人関係が苦手」「こだわりが強い」と解釈しているようである。
しかし,DSM-5の診断基準をさらに詳細に読むと「対人的相互反応の欠陥」とは「通常の会話のやりとりができない」「身振りの理解やその使用の欠陥」「非言語的コミュニケーションの完全な欠陥」とあり,「行動,興味,活動の限定された反復的な様式」とは「常同的または反復的な身体の運動」「反響言語」「強度または対象において異常なほど,きわめて限定され執着する興味」などと記載されており,著者のいうところの日常でよくみられるような「対人関係が苦手」「こだわりが強い」という症状とは異質なものである。
著者は以前の著作でも「自閉症スペクトラム」の概念について「自閉症の特徴の強さは連続的に分布する」「自閉症スペクトラムの人は,潜在的に10%は存在する」「障害と非障害の垣根を取り払った連続的な考え方」(自閉症スペクトラム 本田秀夫 SB新書)などと解説しているが,本来医学的に「スペクトラム障害」とは「広範な症状および徴候が種々の組み合わせでみられるような状態または症候群を表す用語(例えばTourette症候群)」(ステッドマン医学大辞典改訂第6版 メジカルビュー社)と記載されており,本質的には同じ病因と考えられるのに(個人内での)発達にともなった症状が多彩に変化してみえる疾患のことをさしている。
全編にわたって自閉スペクトラム症に関して,著者はDSM-5の診断基準や成書を参照せず,主観で診断しているのではないかという疑念を抱かざるを得なかった。このような医師が国立大学医学部の発達医学教室教授であり,学会などの要職に就いていることに対して自閉スペクトラム症児の家族として強い衝撃を受けている。
自閉スペクトラム症児は「対人的相互反応の欠陥」というハンデをもっているため,どうしても個別対応が必須であり,特に幼児期や児童期は一対一での大人との関係性を通じて徐々に社会性を身につける必要性がある。しかしながら,医学的信憑性に乏しい診断を行う医師らによって,「発達障害児」が量産され,本当の意味での配慮を必要としている診断基準に合致した「神経発達障害児」への支援が手薄になるという事態が実際に各地で生じている。「発達障害バブル」「発達障害ビジネス」は一般社会でも話題になっているが,実のところ医師らの医学的神経学的専門性の脆弱さに由来するものではなかろうか。神経発達障害に携わる医師全般への医学的社会的信頼性について抜本的に考え直さざるを得ない内容である。
自閉スペクトラム症の診断基準(DSM-5)の主症状は,「社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥」「行動,興味,活動の限定された反復的な様式」(DSM-5精神疾患の分類と診断の手引 医学書院)と記載されている。著者はこれを「臨機応変な対人関係が苦手」「こだわりが強い」と解釈しているようである。
しかし,DSM-5の診断基準をさらに詳細に読むと「対人的相互反応の欠陥」とは「通常の会話のやりとりができない」「身振りの理解やその使用の欠陥」「非言語的コミュニケーションの完全な欠陥」とあり,「行動,興味,活動の限定された反復的な様式」とは「常同的または反復的な身体の運動」「反響言語」「強度または対象において異常なほど,きわめて限定され執着する興味」などと記載されており,著者のいうところの日常でよくみられるような「対人関係が苦手」「こだわりが強い」という症状とは異質なものである。
著者は以前の著作でも「自閉症スペクトラム」の概念について「自閉症の特徴の強さは連続的に分布する」「自閉症スペクトラムの人は,潜在的に10%は存在する」「障害と非障害の垣根を取り払った連続的な考え方」(自閉症スペクトラム 本田秀夫 SB新書)などと解説しているが,本来医学的に「スペクトラム障害」とは「広範な症状および徴候が種々の組み合わせでみられるような状態または症候群を表す用語(例えばTourette症候群)」(ステッドマン医学大辞典改訂第6版 メジカルビュー社)と記載されており,本質的には同じ病因と考えられるのに(個人内での)発達にともなった症状が多彩に変化してみえる疾患のことをさしている。
全編にわたって自閉スペクトラム症に関して,著者はDSM-5の診断基準や成書を参照せず,主観で診断しているのではないかという疑念を抱かざるを得なかった。このような医師が国立大学医学部の発達医学教室教授であり,学会などの要職に就いていることに対して自閉スペクトラム症児の家族として強い衝撃を受けている。
自閉スペクトラム症児は「対人的相互反応の欠陥」というハンデをもっているため,どうしても個別対応が必須であり,特に幼児期や児童期は一対一での大人との関係性を通じて徐々に社会性を身につける必要性がある。しかしながら,医学的信憑性に乏しい診断を行う医師らによって,「発達障害児」が量産され,本当の意味での配慮を必要としている診断基準に合致した「神経発達障害児」への支援が手薄になるという事態が実際に各地で生じている。「発達障害バブル」「発達障害ビジネス」は一般社会でも話題になっているが,実のところ医師らの医学的神経学的専門性の脆弱さに由来するものではなかろうか。神経発達障害に携わる医師全般への医学的社会的信頼性について抜本的に考え直さざるを得ない内容である。
2018年12月10日に日本でレビュー済み
「発達ナビ」で紹介されているのを見て、読んでみました。
すごく勉強になりました!
私は発達障害児を持つ母親です。子どもは「自閉スペクラム症」の診断を受けています。
この本で紹介している「こだわりが強い」「対人関係は苦手」という特性があります。
(一方で、落ち着きがなく「多動」なので、私は最初、ADHDだと思い込んでいました)
でも、特性には重複があるということなんですね。
先のレビューで、自閉スペクトラム症の診断基準は、「通常の会話のやりとりができない」「身振りの理解やその使用の欠陥」などと述べられていますが、そんなにわかりやすい発達障害のケースはまれなように感じます…。
(この本で、発達の特性には「強弱」があると述べていて、なるほど、と思えました)
うちの子(診断が出ている)も、療育教室で見るほかのお子さんも、「通常の会話のやりとり」はできる部分もあり、ちょっとできない部分もあり……だからこそ悩みが深いともいえます。
自閉スペクトラム症の解説本などで知ったとおりの行動をしないですし…。
また、診断基準どおりではないから、この子は発達障害ではなくて、できないのは「努力の問題」…なんて切り捨てられる懸念を、問題提起しているのではないでしょうか?
この本では、特性には「重複」も「強弱」もあって、だからこそ、発達障害はわかりにくいこと。
「ちょっとAS(自閉スペクトラム)」で「ちょっとADH(注意欠如・多動)」という状態(「症」がつかないような障害が弱い状態))だと診断されない場合があり、でも、特性はあるから、生活に不全感や生きづらさを抱えているという話もしています。
いずれにせよ、うちの子は「対人関係よりもこだわりを優先する」だけで、「ただ人と違っているだけなんだ」と思えるようになったこと(能力が劣っているわけでも、機能が欠損しているわけでもなく)。
遊び方や交流のスタイルが、一般の人(多数派)と違って、「ただ少数派なだけ」というのは、目からウロコでした。
すごく勉強になりました!
私は発達障害児を持つ母親です。子どもは「自閉スペクラム症」の診断を受けています。
この本で紹介している「こだわりが強い」「対人関係は苦手」という特性があります。
(一方で、落ち着きがなく「多動」なので、私は最初、ADHDだと思い込んでいました)
でも、特性には重複があるということなんですね。
先のレビューで、自閉スペクトラム症の診断基準は、「通常の会話のやりとりができない」「身振りの理解やその使用の欠陥」などと述べられていますが、そんなにわかりやすい発達障害のケースはまれなように感じます…。
(この本で、発達の特性には「強弱」があると述べていて、なるほど、と思えました)
うちの子(診断が出ている)も、療育教室で見るほかのお子さんも、「通常の会話のやりとり」はできる部分もあり、ちょっとできない部分もあり……だからこそ悩みが深いともいえます。
自閉スペクトラム症の解説本などで知ったとおりの行動をしないですし…。
また、診断基準どおりではないから、この子は発達障害ではなくて、できないのは「努力の問題」…なんて切り捨てられる懸念を、問題提起しているのではないでしょうか?
この本では、特性には「重複」も「強弱」もあって、だからこそ、発達障害はわかりにくいこと。
「ちょっとAS(自閉スペクトラム)」で「ちょっとADH(注意欠如・多動)」という状態(「症」がつかないような障害が弱い状態))だと診断されない場合があり、でも、特性はあるから、生活に不全感や生きづらさを抱えているという話もしています。
いずれにせよ、うちの子は「対人関係よりもこだわりを優先する」だけで、「ただ人と違っているだけなんだ」と思えるようになったこと(能力が劣っているわけでも、機能が欠損しているわけでもなく)。
遊び方や交流のスタイルが、一般の人(多数派)と違って、「ただ少数派なだけ」というのは、目からウロコでした。
2018年12月30日に日本でレビュー済み
評価の低い方は勘違いされた一般の方と思います。
ASDの核心は知的障害のない方の症状です。重度の方からすると軽度の症状かもしれません。
しかし、本当にASDを理解するために必要な対象化です。軽度のグレーの方も含めて理解していかないといけません。
それは症状は重なるほど複雑化してわかりにくくなるからです。
その意味で軽度も含めて理解していくことは大切です。
なんでも障害にしてしまうことは危険ですが、専門家としては必要な視点です。
当事者だとしても安易な批判は避けるべきでしょう。
ASDの核心は知的障害のない方の症状です。重度の方からすると軽度の症状かもしれません。
しかし、本当にASDを理解するために必要な対象化です。軽度のグレーの方も含めて理解していかないといけません。
それは症状は重なるほど複雑化してわかりにくくなるからです。
その意味で軽度も含めて理解していくことは大切です。
なんでも障害にしてしまうことは危険ですが、専門家としては必要な視点です。
当事者だとしても安易な批判は避けるべきでしょう。