謳い文句にあるように、中心は「平安クライムサスペンス」なのだけれど、
そこかしこに挿入された歴史小ネタがうまく筋に絡んでいて、
相変わらず、歴史好きならより楽しめる構成になっている。
本巻では、伴善男によって引き合わされた謎の貴族として、
後に道真と共に宇多天皇を支えることになる源能有が登場する。
能有は「食えない」人物ながら憎めないキャラクターに描かれている。
この時代の特徴でもある文徳天皇の子だくさんと臣籍降下に触れたり、
さりげなく惟喬親王の名前を出して皇位を巡る朝廷内の暗闘をほのめかしたりして、
キャラ設定が史実によってうまく味付けされている。
能有の昼行灯然とした振舞と、妻の張り切りぶりとが対比されているのは、
後の娘たちの運命を考えると、コミカルなだけでない、大事な伏線になっている。
他にも、没落貴族(たぶんチョイ役)の、長岡京時代には繁栄していた、
なんてさりげない回顧も、当時の時代性をうまく取り入れている。
このように下敷きとなった小ネタや後々への伏線を拾いながら読むのは楽しい。
惜しむらくは、肝心の事件がどうも似たような繰り返しで単調なところ。
そもそも本筋が何の話なのかもよく分からなくなってきた。
応天門の変に向けて(?)善男との関係が描かれるなど少しずつ進んではいるけれど、
腹の探り合いが多くて間延びしてしまった感がある。
作中に貞観6年の富士山噴火の記述があるので、応天門の変まであと2年か。
クライマックス(?)へ向けた舞台づくり・キャラづくりをしっかり行っているところ、
と前向きに解釈しておこうかと思う。
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応天の門 11 (BUNCH COMICS) コミック – 2019/7/9
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伴善男に頼まれ、椿の精に惑わされているというある貴族の元を訪れることになった道真。そこで出会ったのは――!? 平安の都で起こる怪事件を、菅原道真&在原業平の最強バディが解き明かす! 累計80万部突破の平安クライム・サスペンス、決断の第11巻!
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2019/7/9
- 寸法12.8 x 1.4 x 18.2 cm
- ISBN-104107722031
- ISBN-13978-4107722034
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カスタマーレビュー
5つ星のうち4.7
星5つ中の4.7
272 件のグローバル評価
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本編、メインは大納言伴善男の依頼に道真がいやいや応えるお話。相変わらず裏でドロドロしたものが渦巻いてそうな内容です。業平に説教されるところまで安定のセットになってきている感じありますね。この話の後に1話完結で白梅が検非違使に疑われるお話が入っているのですが、これが結構笑える系の内容で、息抜きとして非常に良かったです。白梅が健気でかわいくて最高。本編ラストは道真が疑われる話で引きになっていますが、その後ろに載っている番外編も面白系で、今回は割と笑える巻だったのではないかと思います。近丸面白すぎる…。よく見たら腰がカクカク動いてるし。業平の周りはこういうのが集まってくるんだろうか…。なお初回特典は白梅を描いたクリアしおりでした。参考に写真を付けておきます。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2019年7月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前巻は久しぶりに登場した伴善男が菅家に押しかけてきたシーンで終了しました。
前巻ラストでは、道真を訪ねて菅家に押しかけてきた伴善男ですが、道真の父、是善は息子が不必要に政治闘争に巻き込まれることを望んではいないので、白梅に対しても「道真を連れてこい」とは言いませんでした。
しかし、タイミング悪く紀豊国が道真を見つけ、伴善男との対面を果たします。
そこで依頼されてたのは、椿の精に取り憑かれた若い貴族を手助けしてほしいという内容で、道真はしぶしぶ向かいますが…
ここしばらくは政治の舞台から離れて、道真自身の問題に向き合う形で物語は進行してきましたが、本巻でいよいよ道真の将来と貴族間の政治闘争が関わりを持たざるを得ない可能性が明白に道真の前に提示されました。
才は確かに道真自身の道を造りますが、道真が学べるのは自分の家が貴族だからこそ、学ぶには最高の環境があったこそ、いまの道真があることは、決して貴族や政治とは無関係でいられないことを示しています。
関わりが避けられないのであれば、道真が選ぶ道は2つに1つだと作中では業平が道真に諭しますが、果たして道真が今後どういった選択をどういった理由で行うのかもまた作品の見どころだと思います。
「学問は誰が為にあるのか」
未だ答えの出ないこの問いと合わせて、注目していきたいです。
個人的には新しく出てきたあの方と道真のやりとりがとても良かったです。
次の節は、白梅のお話でした。
近ごろ都では美しい髪をもつ女性ばかりが狙われて、髪を切られる事件が起こっている様子。
犯人の特徴がなんと白梅に似ているようで、業平に連れられて向かいますが、すぐに潔白が証明され事件は解決します。
ただ、最近の白梅はどこか浮つき気味でよく外出するとのこと。果たしてその理由とは…?
とても可愛い白梅らしい理由なので、気になる方はぜひ一度読んでご確認ください。
そして本巻最後の節は、なんと道真に殺人の冤罪が被せられ検非違使に捕らわれてしまいます。
道真は理路整然と自分の無実を主張しますが、犯行があった日は偶然か必然か、伴善男に盛られた毒を解毒するために伴家にいた日なので、関わりがあると知られない為に詳しく話せないとしか言えず、状況は改善しません。
頼りの業平は出払っているようで一向に疑いは晴れず、遺族は怒りが収まらず、ますます状況は悪化していきます。
父、是善の耳にも道真が捕らわれていることが伝わり、しかもあの方の情報網に引っかかってしまったようで…
いよいよ物語も盛り上がりをみせてきました今回の表紙は竹。
竹はまっすぐに育ち、また節があることから節度があるといった意味を込められることもあります。
『竹取物語』で翁が竹細工で生計を立てていたように、この頃から竹は身近な植物だったのでしょう。
芸術作品にも竹は題材としてよく取り入れられています。
「歳々年々 人同じからず」
まっすぐに何も変わることなく今が続くわけでなく、道真・業平各々の深いところで何かが変わり始めているのでしょうか。
今回の付録は、待望の白梅の栞でした。
夏らしい透明感のある素材で可愛いです。
次巻も楽しみに待っています。
前巻ラストでは、道真を訪ねて菅家に押しかけてきた伴善男ですが、道真の父、是善は息子が不必要に政治闘争に巻き込まれることを望んではいないので、白梅に対しても「道真を連れてこい」とは言いませんでした。
しかし、タイミング悪く紀豊国が道真を見つけ、伴善男との対面を果たします。
そこで依頼されてたのは、椿の精に取り憑かれた若い貴族を手助けしてほしいという内容で、道真はしぶしぶ向かいますが…
ここしばらくは政治の舞台から離れて、道真自身の問題に向き合う形で物語は進行してきましたが、本巻でいよいよ道真の将来と貴族間の政治闘争が関わりを持たざるを得ない可能性が明白に道真の前に提示されました。
才は確かに道真自身の道を造りますが、道真が学べるのは自分の家が貴族だからこそ、学ぶには最高の環境があったこそ、いまの道真があることは、決して貴族や政治とは無関係でいられないことを示しています。
関わりが避けられないのであれば、道真が選ぶ道は2つに1つだと作中では業平が道真に諭しますが、果たして道真が今後どういった選択をどういった理由で行うのかもまた作品の見どころだと思います。
「学問は誰が為にあるのか」
未だ答えの出ないこの問いと合わせて、注目していきたいです。
個人的には新しく出てきたあの方と道真のやりとりがとても良かったです。
次の節は、白梅のお話でした。
近ごろ都では美しい髪をもつ女性ばかりが狙われて、髪を切られる事件が起こっている様子。
犯人の特徴がなんと白梅に似ているようで、業平に連れられて向かいますが、すぐに潔白が証明され事件は解決します。
ただ、最近の白梅はどこか浮つき気味でよく外出するとのこと。果たしてその理由とは…?
とても可愛い白梅らしい理由なので、気になる方はぜひ一度読んでご確認ください。
そして本巻最後の節は、なんと道真に殺人の冤罪が被せられ検非違使に捕らわれてしまいます。
道真は理路整然と自分の無実を主張しますが、犯行があった日は偶然か必然か、伴善男に盛られた毒を解毒するために伴家にいた日なので、関わりがあると知られない為に詳しく話せないとしか言えず、状況は改善しません。
頼りの業平は出払っているようで一向に疑いは晴れず、遺族は怒りが収まらず、ますます状況は悪化していきます。
父、是善の耳にも道真が捕らわれていることが伝わり、しかもあの方の情報網に引っかかってしまったようで…
いよいよ物語も盛り上がりをみせてきました今回の表紙は竹。
竹はまっすぐに育ち、また節があることから節度があるといった意味を込められることもあります。
『竹取物語』で翁が竹細工で生計を立てていたように、この頃から竹は身近な植物だったのでしょう。
芸術作品にも竹は題材としてよく取り入れられています。
「歳々年々 人同じからず」
まっすぐに何も変わることなく今が続くわけでなく、道真・業平各々の深いところで何かが変わり始めているのでしょうか。
今回の付録は、待望の白梅の栞でした。
夏らしい透明感のある素材で可愛いです。
次巻も楽しみに待っています。
2019年8月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
相変わらず業平の描き方が抑制がきいて絶妙にいい男。
抑制がきいているので惹かれるのだと知りつつ、もっと業平が見たい。。。
抑制がきいているので惹かれるのだと知りつつ、もっと業平が見たい。。。