江部鴨村(えべおうそん)「徒然草全講義」、バロン吉本「徒然草」を読みました。
徒然草に感銘をうけたのは、若い頃、本多 顕彰「徒然草入門」を読んだ時です。
序文の「つれづれなるままに、日くらし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」の言葉に、その通りだと膝を打ったものです。
全体に漂う無常観にも惹かれました。
いつか本格的な「徒然草」を読んでやろうと思っていました。
江部鴨村(えべおうそん)「徒然草全講義」は菊判400ページの本格的な徒然草本です。
全243段を、原文、意訳文、用語解釈、著者の解説で描いています。
何度か読みかけましたが、読み続けられません。
わからないところが多いのです。
徒然草の半分くらいは当時の貴族社会の礼儀・作法、しきたり、有毒故実です。
これが活字で読んでもさっぱりわかりません。
面白おかしくもありません。
例えば203段に「勅勘のところに靫(ゆき)かくる作法」とあります。
この「靫(ゆき)」とは何かがわかりません。
ネットで調べて読み進むのはとてつもない時間がかかりますし、「靫(ゆき)」が判ったとしても徒然草の理解に大して役に立ちません。
バロン吉元「徒然草」が大いに役立ちます。
「靫(ゆき)」が家の門にぶら下げられている絵が、写実的なイラストで描かれえいます。
「柔侠伝」で有名なバロン吉元さんが「マンガ日本の古典」シリーズで徒然草を描いています。
全段に渡って素晴らしい絵で徒然草を描いています。
時代考証も確かで、鎌倉時代の服装、建物、家具調度品などが綿密に描かれています。
バロンさんは、しかも独自の歴史的考察を加えて徒然草を解釈して描いています。
表面の文言上には現れない吉田兼好の、後醍醐天皇に対する批判と嫌悪感を描いているのです。
下劣・下品な権力欲、性的放縦に総統な軽蔑と嫌悪感を抱いていたようです。
後醍醐天皇に対する批判的な視点で徒然草を読むと、初めて理解できたといいます。
バロン吉元さんと江部鴨村さんの「徒然草」を同時に読み進めて、よく理解できました。
江戸時代に「徒然草」は「大和論語」と呼ばれて江戸時代からよく読まれていたようです。
現代人にとっては、読んで面白いのは三分の一程度です。
中野孝次「清貧の思想」は徒然草の吉田兼好を始め鴨長明、良寛、池大雅、与謝蕪村、橘曙覧、吉田兼好、松尾芭蕉、西行らの世捨て人的な生き方が共感を呼んでベストセラーになりました。
共通するのは、俗世間から離れた世捨て人的な生き方、仏教的な無常観・死生観が色濃いこと、自然・詩歌を愛でる心でしょうか。
いづれも今日まで読み継がれているのは、視野の広さ、観察のするどさ、関心のこまやかさを見事な文章で表現した結果です。
徒然草は一気に集中して読むには勿体ないです。
毎日、10段づつ一ヶ月近くかけて読み味わいました。
リッチな時間でした。
満足度が大きかった本です。
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