娯楽作品というものは総じてエンターテインメント要素を重視する弊害として、ご都合主義や非現実的なステレオタイプ登場人物などが含まれる場合がよくある。
それ自体は物語自体を魅力的にするツールであり問題でも何でもないのだが、中にはそのようなストーリーに触れた際「あれ、この敵バカすぎじゃね?」とか「こんな超人一人の活躍で片付くんだったら世話ないよ」と感じて冷めてしまう私のような人がいる。
そんなひねくれた方々に御用達なのが本シリーズの著者であるカルロ・ゼン氏の作品だ。彼の描く物語の中では現実はそう甘くない。大きな全体の流れは個々人の努力など一顧だにせず、有能な人々が責任感をもって全力を尽くすにも関わらず、状況はなかなか好転しない。
やっとの思いで問題が解決されても次から次へと新たなるトラブルが舞い込み、登場人物たちは現実の中で血反吐を吐きながらなんとか崩壊を免れようと奔走する。
本来ならばこのようななんの爽快感もないような作品は成立するはずがないのだが、私を含め多くの人々がカルロ・ゼン氏の作品に魅力を感じるのはこれらの作品が最初に述べたようなご都合主義的作品のアンチテーゼになっているからだと考える。
他の作品で排除された現実の苦しさや理不尽を集めて蒸留したようなのが彼の作品だ。そればかり摂取すると諧謔が過ぎて冷笑主義になりかねないので用量には注意だが嗜むぐらいなら代り映えしない多くの作品の中でちょうど良いスパイスになってくれるだろう。
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売国機関 6巻 (バンチコミックス) Kindle版
東部国境地帯での、王国軍増派の動きを掴んだ共和国情報部。王国に対処するため、軍は参謀本部とオペラ座による“合同部隊”を東部に派遣することに――。これは血と鉄で刻む、“戦後を焼き固める物語”。
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2022/1/8
- ファイルサイズ79848 KB
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2022年2月4日に日本でレビュー済み
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役に立った
2022年4月5日に日本でレビュー済み
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幼女戦記が好きでカルロ・ゼンさんの原作ということでつい最近全巻購入して読んでみた。
今のウクライナ情勢と照らして見るとなんとタイムリーなことか。西側と東側の緩衝地帯となったウクライナ情勢そのもの。停戦後のウクライナの姿なのかもしれないし、これからの共和国の姿がウクライナと被るのかもしれない。事実は小説より奇なりとはよく言ったものだと思う。作画がキャラクタの描き分けが曖昧な部分もあって読みづらさもあるが面白い作品です。
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