著者のタニヤ・タラガは、カナダ先住民にルーツを持つジャーナリスト、訳者もカナダ在住である。本書は近年明らかになってきた、カナダにおける先住民虐殺の状況を７つのエピソード（7人の若者の早すぎる死）として告発している。現在も続く「先進的民主主義国家」カナダの「黒歴史」に暗澹たる思いがする。
最近、カナダにおける先住民虐殺の歴史が次々に明らかになってきた。先住民のための寄宿学校で多数（125人）の子供たちの集団墓地が発見されたり、多くの（1200人あるいはその数倍の）先住民女性たちが失踪したり殺害されたりしてきた事実も明らかになった。この事実はカナダ政府の調査委員会が明らかにしたことである。「先進的民主主義国家」とされるカナダで、ごく最近までこのような先住民の虐殺があったことに衝撃を受けた。
本書はこのように最近明らかにされたカナダの「黒歴史」のうちのごく一部である、7人の若者たちの死を描いたものである。若者たちはいずれもカナダ北部の先住民居留地からスペリオル湖沿岸のサンダーベイ市の先住民寄宿学校に来ていた。喜んで学校に来たのかあるいは嫌々ながらか、いずれにしても故郷と寄宿学校や都市の環境とのギャップにショックを受けたことであろう。死因は自殺なのか、いじめ等によるものかははっきりしない。このように若者の死が多発しているにもかかわらず、捜査は徹底されず、また予防策も打たれなかった。そもそも寄宿学校なるものは先住民の同化政策として制度化されたが、本書のような事例が多発している以上は、根本的な問題があったとしか考えられない。
アメリカにおける黒人差別は早い時期に「可視化」され、不十分とはいえ対策が打たれてきた。また、政府や企業の要職にある黒人（その他の非白人）も多い。それに比べて、カナダの人種差別対策の遅れは明らかである。カナダの先住民同化政策は、中国のウイグル人同化政策の過酷さ、残酷さと比べても決して自慢できるような代物ではない。文化的虐殺そのものである。アメリカやカナダだけではない。西欧のかつての帝国主義国家（イギリス、スペイン、ポルトガル、フランス、イタリア、ドイツなど）による、かつての植民地での原住民虐殺の歴史は凄まじい。アメリカやカナダにおける自国内の人種差別はこれら西欧諸国の人種差別と軌を一にしている。もちろん、かつての大日本帝国時代の侵略先での原住民虐殺は、上記欧米諸国と同様におぞましいものである。
本書の冒頭に、「アニシナベ族（カナダ先住民の一つ）を導く七つの原則」が掲げられている。その優しさと崇高さとに深く感銘を受けた。われわれは世界各地の先住民たちから学ぶべきであろう。
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