まず第一に書かなくてはならないのは、甘い恋人同士の百合作品では無いという事。
この作品は家族にも恋人にも友人にも他人にもなりきれない、絶妙にずれた関係性を見事に描いているお話。
互いに共通した痛みを慰め合う共依存、それを覆い隠す言い訳のような建前。
心の傷を治す事も出来ない不器用さ、泣き顔を笑顔で上塗り出来てしまう器用さ。
ジェットコースターストーリーを読みなれてしまっているともどかしくなるようなマクロな展開ですが、
笑顔のままゆっくり奈落に落ちるような、このゾクゾクする感覚を描いてくれる作家さんは中々いません。
きっと、上記の表現が少しでもピンとくる方はがっちり嵌ってくれることでしょう。
逆に、好きor嫌い、喧嘩or仲良し、みたいなONかOFFではっきりした話じゃないと、
もどかしくて読めないという人にはこの作品は向いていないかもしれないです。
どっちつかず、触れるか触れないか、割り切れない、そんな関係と感情の塊のような作品ですから。
続巻含めて読んでから、またこの巻を読みなおすと違った感覚で読めてまた泣けます。
2巻以降(レビュー時最新7巻まで)も雰囲気はぶれませんので、この巻を買って良いと思った人は、
一気に最新まで買っても後悔はしないと思います。
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