著者はロンドン経済大学の3名の研究者です。
本書は西側先進国である欧米各国での幼児教育の現状と問題点について考察したものです。
著者らは、経済、社会政策、教育の専門家で、「教育の質」と「教育へのアクセスの排除」を切り口に研究を進めていました。
欧米ではEU誕生と移民の流入で経済格差が広がり、その最初の萌芽が幼児教育に現れることに注目しました。
2012年にはロンドン経済大で国際会議を主催し、この問題について各国の研究者と事例や情報を交換しました。
本書は同会議で得た知見をベースにして執筆されたものです。
本書で紹介されているのは欧米の8カ国です。
それぞれ「各国の保育・幼児教育」について、「保育への平等なアクセス」と「質の高い保育を担保する工夫」の観点から切り込んでいました。
限られた財源の中で、コストを抑制しつつ成果をあげるにはどうすればいいのか。
各国の担当者は知恵を絞り、試行錯誤していました。
本書の翻訳・監修には日本国内の研究者があたり、欧米の保育政策を通して日本が抱える保育問題を浮かび上がらせることを目的としていました。
内容は次のようなものです。
・質とコストの両立に苦悩するイギリス
・国が直接管理することで質を向上させたノルウェー
・完成されたシステムを持ちつつも変化への適応を迫られるフランス
・親の側が保育施設を選択できるオランダ
・統合の歪みと移民の流入に翻弄され続けるドイツ
・幼児教育の政策転換を迫られるニュージーランド
・国力を上げるために保育に投資するオーストラリア
・格差大国アメリカの幼児教育
巻末には日本人監訳者による「あとがき」が添えられ、全体を俯瞰しながら日本の幼児教育へ問題提起されていました。
本書の提示する課題は、アクセス、質、コストの三点です。
日本ではこれまで小学校入学前の幼児教育は重視されておらず、長く放置されてきました。
しかし近年は共働き家庭の増加、格差の拡大から、待機児童や無償化の問題が議論の俎上に登ることが増えてきました。
それでも議論は緒に就いたばかりで、この問題の認識について国民のコンセンサスを得るには程遠い状態です。
著者は事例を積み上げてエビデンスを確立する一助となるように、と本書を紹介した経緯を綴っていました。
本書は普段あまり目にすることのない、各国の初等教育の現状が綴られていました。
取り上げられているのは「西側」先進国ですが、非西洋の大国イラン中国、途上国の現状についてはどうなのだろうと想像しました。
文章に翻訳文特有の硬さがありましたが、興味深く読みました。
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保育政策の国際比較 : 子どもの貧困・不平等に世界の保育はどう向き合っているか 単行本(ソフトカバー) – 2018/10/6
ルドヴィクァ・ガンバロ
(著),
キティ・スチュワート
(著),
ジェーン・ウォルドフォーゲル
(著),
山野 良一
(監修),
中西 さやか
(監修),
大野 歩
(翻訳),
鈴木 佐喜子
(翻訳),
田中 葵
(翻訳),
南野 奈津子
(翻訳),
森 恭子
(翻訳)
&
7
その他
購入を強化する
近年、世界各国で保育・幼児教育の推進は重要な政策課題であり、特に貧困によって社会的排除されがちな子どもの育ちを保障する「質の高い保育」に注目が集まっている。本書は欧米8ヵ国の保育政策を概観することを通して、日本が抱える保育問題を照射する。
目次
第1章 はじめに
第2章 【イギリス】保育・幼児教育への平等なアクセスは保証されているのか?
第3章 【ノルウェー】普遍的で質の高い乳幼児期の保育をめざして
第4章 【フランス】質が高く費用負担の少ない保育・幼児教育システムについての教訓
第5章 【オランダ】質の高い保育への平等なアクセス
第6章 【ドイツ】保育・幼児教育におけるアクセスと質をめぐる問題
第7章 【ニュージーランド】乳幼児期の教育とケアに対する政策の転換に関する1つの解説
第8章 【オーストラリア】乳幼児教育と保育:混合市場体制における公正とは?
第9章 【アメリカ】低所得の子どもに対する質の高い幼児教育と保育の提供
第10章 共通した政策上の課題および教訓
監訳者あとがき
目次
第1章 はじめに
第2章 【イギリス】保育・幼児教育への平等なアクセスは保証されているのか?
第3章 【ノルウェー】普遍的で質の高い乳幼児期の保育をめざして
第4章 【フランス】質が高く費用負担の少ない保育・幼児教育システムについての教訓
第5章 【オランダ】質の高い保育への平等なアクセス
第6章 【ドイツ】保育・幼児教育におけるアクセスと質をめぐる問題
第7章 【ニュージーランド】乳幼児期の教育とケアに対する政策の転換に関する1つの解説
第8章 【オーストラリア】乳幼児教育と保育:混合市場体制における公正とは?
第9章 【アメリカ】低所得の子どもに対する質の高い幼児教育と保育の提供
第10章 共通した政策上の課題および教訓
監訳者あとがき
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社明石書店
- 発売日2018/10/6
- ISBN-104750347078
- ISBN-13978-4750347073
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商品の説明
著者について
山野 良一(やまの・りょういち) = 監訳者
沖縄大学人文学部教授。名寄市立大学特命教授。米国・ワシントン大学(セントルイス)社会福祉大学院修士課程修了。研究テーマは、貧困など社会的な不利を抱える子どもや家族についての調査分析など。児童相談所での現場経験や保育者養成校で教員経験を経て、2018年より現職。近著に「発達格差の中の子どもたち―保育と文化資本の観点から」秋田喜代美ほか編『岩波講座 教育 変革への展望 第3巻・変容する子どもの関係』(岩波書店、2016)、『子どもに貧困を押しつける国・日本』(光文社新書、2014)などがある。
中西 さやか(なかにし・さやか) = 監訳者
名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科講師。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期在学中。教育学修士。専門は保育学・幼児教育学。学童保育の現場を経験し、2013年より名寄市立大学短期大学部講師、2016年4月より現職。近著に「ドイツにおける幼児期の学びのプロセスの質をめぐる議論」(『保育学研究』第54巻第2号、2016年)、「ドイツにおける保育の教育的課題の概念化をめぐる議論」(『教育学研究』第81巻第4号、2014年)がある。
沖縄大学人文学部教授。名寄市立大学特命教授。米国・ワシントン大学(セントルイス)社会福祉大学院修士課程修了。研究テーマは、貧困など社会的な不利を抱える子どもや家族についての調査分析など。児童相談所での現場経験や保育者養成校で教員経験を経て、2018年より現職。近著に「発達格差の中の子どもたち―保育と文化資本の観点から」秋田喜代美ほか編『岩波講座 教育 変革への展望 第3巻・変容する子どもの関係』(岩波書店、2016)、『子どもに貧困を押しつける国・日本』(光文社新書、2014)などがある。
中西 さやか(なかにし・さやか) = 監訳者
名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科講師。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期在学中。教育学修士。専門は保育学・幼児教育学。学童保育の現場を経験し、2013年より名寄市立大学短期大学部講師、2016年4月より現職。近著に「ドイツにおける幼児期の学びのプロセスの質をめぐる議論」(『保育学研究』第54巻第2号、2016年)、「ドイツにおける保育の教育的課題の概念化をめぐる議論」(『教育学研究』第81巻第4号、2014年)がある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ガンバロ,ルドヴィクァ
社会排除分析センター(CASE)の研究責任者を務め、現在ロンドン大学教育研究所の縦断研究センターの研究責任者となっている。研究のテーマは、乳幼児期サービス、家族政策、労働市場政策などである
スチュワート,キティ
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の社会政策学准教授であり、社会排除分析センターの研究員である。現在の研究は、子どもの貧困と子どもたちのライフチャンスに関する政策の効果、世帯所得とさまざまな成果との関係に焦点を当てている
ウォルドフォーゲル,ジェーン
ニューヨーク、コロンビア大学ソーシャルワークスクールの子ども・若者問題の予防を専門とするCompton Foundation Centennial教授であり、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の社会排除分析センター(CASE)の客員教授である。公共政策が子ども・家族のウェルビーイングに及ぼす影響について広範に著作がある
山野/良一
沖縄大学人文学部教授。名寄市立大学特命教授。米国・ワシントン大学(セントルイス)社会福祉大学院修士課程修了。研究テーマは、貧困など社会的な不利を抱える子どもや家族についての調査分析など。児童相談所での現場経験や保育者養成校で教員経験を経て、2018年より現職
中西/さやか
名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科講師。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期在学中。教育学修士。専門は保育学・幼児教育学。学童保育の現場を経験し、2013年より名寄市立大学短期大学部講師、2016年4月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
社会排除分析センター(CASE)の研究責任者を務め、現在ロンドン大学教育研究所の縦断研究センターの研究責任者となっている。研究のテーマは、乳幼児期サービス、家族政策、労働市場政策などである
スチュワート,キティ
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の社会政策学准教授であり、社会排除分析センターの研究員である。現在の研究は、子どもの貧困と子どもたちのライフチャンスに関する政策の効果、世帯所得とさまざまな成果との関係に焦点を当てている
ウォルドフォーゲル,ジェーン
ニューヨーク、コロンビア大学ソーシャルワークスクールの子ども・若者問題の予防を専門とするCompton Foundation Centennial教授であり、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の社会排除分析センター(CASE)の客員教授である。公共政策が子ども・家族のウェルビーイングに及ぼす影響について広範に著作がある
山野/良一
沖縄大学人文学部教授。名寄市立大学特命教授。米国・ワシントン大学(セントルイス)社会福祉大学院修士課程修了。研究テーマは、貧困など社会的な不利を抱える子どもや家族についての調査分析など。児童相談所での現場経験や保育者養成校で教員経験を経て、2018年より現職
中西/さやか
名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科講師。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期在学中。教育学修士。専門は保育学・幼児教育学。学童保育の現場を経験し、2013年より名寄市立大学短期大学部講師、2016年4月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 明石書店 (2018/10/6)
- 発売日 : 2018/10/6
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 336ページ
- ISBN-10 : 4750347078
- ISBN-13 : 978-4750347073
- Amazon 売れ筋ランキング: - 365,537位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 1,882位幼児教育一般関連書籍
- - 14,257位教育学一般関連書籍
- カスタマーレビュー:
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