いきなりのバイオレンス・シーンに始まる一冊。襲われるは女性刑事レナ・アダムスとその恋人の白バイ警官ジャレド・ロング。殺し屋たちとの肉弾戦と直後に登場したのがウィル・トレント。ややこしいことに彼は潜入捜査中。地方都市メイコン。ジャレドは重症。レナはジャレドの命の危険にショック状態。
修羅場から一転してジョージアの州都アトランタ。噂ではジョージア州にまで市場を拡大してきた姿なき大物犯罪者ビッグ・ホワイティを炙り出すために広域の捜査が展開している。送り込まれるウィル。ウィルの恋人で医師のサラ・リントン。ウィルのパートナーのフェイス・ミッチェル。
このシリーズは潜入捜査官ウィル・トレントのシリーズと銘打っていながら、ウィル以外はほぼ女性ばかり。そしてウィルの他に三人の女性たちの目線で描かれる章(レナ、サラ、フェイス)が多いばかりか、彼女たちの動きがそれぞれに重要なファクターとなり、謎多い事件から多重的に真相という核に迫ってゆくプロットが凝りに凝って、素晴らしい。
司令塔アマンダ・ワグナー。メイコンの捜査指揮官デニース・ブランソンなど、他にも主役を取れそうな濃い女性キャラクターが、それぞれの個性を競い、会話をぶつけ合い、単純に見えた事件の裏側に見えてくる行方不明の子供たち。ネグレクト。DV。小児性愛。昨今の犯罪小説ではもはや馴染みとなった、異常な要素がここでも例外ではなく、暗い世界の住人たちを照らし出そうとしている。
女性作家であるゆえに、会話によるかけひき、情念のぶつかり合い、すれ違い、情熱の濃さ、さらに言えば濃密な母性といったものが、捜査そのものに相当に影響を落とす物語を紡いでくれる。そして最後には、驚愕の真相が待っている。謎の深さと、男性作家ばりのスリリングなアクションが同居した骨太の力作なのだ。
巻末の北上次郎解説によれば本ウィル・シリーズは、ウィルは名ばかりの狂言回しで、実際の主人公は作品毎に上記に挙げた女性たちが交代で務めているのが実情であるらしい。本作にも過去のいきさつとそれによる人間関係の距離感など、会話の端々に出てくるところ、シリーズを順番に読まなかった罰を少なからず受けてしまった。できれば、最初の『三連の殺意』から、さらにできればその前章に当たるサラがヒロインのグラント郡シリーズ(『開かれた瞳孔』一冊しか邦訳されていないし、廃刊なので万単位でしか売っていない様子)から読むとさらに流れや人物相関が理解できて楽しいらしい。
豊富にあるカリン・スローターの著作だが、嬉しいことに本シリーズ最新作が、あちらで何やら大賞を射止めたらしく、今後邦訳も早くなったり増えたりしてくれるのではないかと、期待できる状況なのである。
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ブラック&ホワイト 〈ウィル・トレント〉シリーズ (ハーパーBOOKS) Kindle版
潜入捜査中に起きた警官銃撃事件。
誰が敵で誰が味方か――?
「スローターの新作だから、というだけの理由であとは黙って読まれたい」北上次郎(解説より)
〈ウィル・トレント〉シリーズ最新刊。
素性の知れない犯罪者ビッグ・ホワイティを炙り出すため潜入捜査中の特別捜査官ウィルは、警官の家を狙った強盗事件に出くわす。
犯人は警官夫婦の家に押し入るなり、最初から命を狙っていたかのように発砲した。夫は重体。刑事の妻は反撃のすえ強盗犯一人を殺害する。
襲われたのは、ウィルが取り調べたことのある曰くつきの女刑事だった――。さらに彼女と同じチームの警官が襲撃され……。
誰が敵で誰が味方か――?
「スローターの新作だから、というだけの理由であとは黙って読まれたい」北上次郎(解説より)
〈ウィル・トレント〉シリーズ最新刊。
素性の知れない犯罪者ビッグ・ホワイティを炙り出すため潜入捜査中の特別捜査官ウィルは、警官の家を狙った強盗事件に出くわす。
犯人は警官夫婦の家に押し入るなり、最初から命を狙っていたかのように発砲した。夫は重体。刑事の妻は反撃のすえ強盗犯一人を殺害する。
襲われたのは、ウィルが取り調べたことのある曰くつきの女刑事だった――。さらに彼女と同じチームの警官が襲撃され……。
- 言語日本語
- 出版社ハーパーコリンズ・ジャパン
- 発売日2019/6/17
- ファイルサイズ1313 KB
-
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
素性の知れない犯罪者ビッグ・ホワイティを炙り出すため潜入捜査中の特別捜査官ウィルは、警官の家を狙った強盗事件に出くわす。犯人は警官夫婦の家に押し入るなり、最初から命を狙っていたかのように発砲した。夫は重体。刑事の妻は反撃のすえ強盗犯一人を殺害する。襲われたのは、ウィルが取り調べたことのある曰くつきの女刑事だった―。さらに彼女と同じチームの警官が襲撃され…。 --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
スローター,カリン
エドガー賞にノミネートされた『警官の街』や、発売するやいなやニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストにランクインした『プリティ・ガールズ』、“The Good Daughter”をはじめ、“ウィル・トレント”シリーズや“グラント郡”シリーズで知られるベストセラー作家
鈴木/美朋
大分県出身。早稲田大学第一文学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
エドガー賞にノミネートされた『警官の街』や、発売するやいなやニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストにランクインした『プリティ・ガールズ』、“The Good Daughter”をはじめ、“ウィル・トレント”シリーズや“グラント郡”シリーズで知られるベストセラー作家
鈴木/美朋
大分県出身。早稲田大学第一文学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B07SFCZ7VY
- 出版社 : ハーパーコリンズ・ジャパン (2019/6/17)
- 発売日 : 2019/6/17
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1313 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 514ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 173,885位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年7月3日に日本でレビュー済み
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7人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
ベスト1000レビュアー
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ウィル・トレント・シリーズ第7弾。
しっかりこのシリーズのファンになっている。今作もおもしろい!大どんでん返し。
#4『サイレント』に続いてまたレナが登場、そしてまたもやレナが転勤した先の警察内部のごたごたから始まる。
レナの能力不足によって災難が呼び込まれているわけではないのだが…。むしろ前作よりずいぶん成長している。
レギュラー登場人物の関係が徐々に変化・進行しているシリーズものなので、順番に読んだ方が内容がよくわかる。
私は女性なのでウィルとサラの恋愛場面を読むのが楽しみだ。謎解きやアクション・シーンだけなら味気ない。
今回、危機を経て互いに自分の気持ちを整理し伝え合うところはよかった。
サラはおそらくウィルより5歳年上(#3『ハンティング』その他参照。ちなみに妻アンジーは3歳上)。年下めいたウィルの態度やセリフが愛らしい。
解説で北上次郎氏は「このシリーズは女性陣が主人公でウィルは狂言回しにすぎない」「『血のペナルティ』『罪人のカルマ』ではウィルの影すらない」と記述しているが、あまりにも大げさで偏った意見だ。ウィル・ファンの私は同調できない。今回は特にひどく痛めつけられながらも中心になって事件解決に臨んでいる。レナが主人公?最初と中盤少しとラストに出てくるだけだ。このシリーズはウィルの人格が物語をおもしろくしているとも言えるのに。
他のレビューを見ても、個人によって関心や重点とするところが違うことはわかるが、解説の立場ならもっと公正な視点をもっていただきたい。
とにかくこのシリーズはおもしろい。ウィルとサラの関係はまた1歩前進したがアンジーのことが残されており、これからの展開がますます楽しみだ。
しっかりこのシリーズのファンになっている。今作もおもしろい!大どんでん返し。
#4『サイレント』に続いてまたレナが登場、そしてまたもやレナが転勤した先の警察内部のごたごたから始まる。
レナの能力不足によって災難が呼び込まれているわけではないのだが…。むしろ前作よりずいぶん成長している。
レギュラー登場人物の関係が徐々に変化・進行しているシリーズものなので、順番に読んだ方が内容がよくわかる。
私は女性なのでウィルとサラの恋愛場面を読むのが楽しみだ。謎解きやアクション・シーンだけなら味気ない。
今回、危機を経て互いに自分の気持ちを整理し伝え合うところはよかった。
サラはおそらくウィルより5歳年上(#3『ハンティング』その他参照。ちなみに妻アンジーは3歳上)。年下めいたウィルの態度やセリフが愛らしい。
解説で北上次郎氏は「このシリーズは女性陣が主人公でウィルは狂言回しにすぎない」「『血のペナルティ』『罪人のカルマ』ではウィルの影すらない」と記述しているが、あまりにも大げさで偏った意見だ。ウィル・ファンの私は同調できない。今回は特にひどく痛めつけられながらも中心になって事件解決に臨んでいる。レナが主人公?最初と中盤少しとラストに出てくるだけだ。このシリーズはウィルの人格が物語をおもしろくしているとも言えるのに。
他のレビューを見ても、個人によって関心や重点とするところが違うことはわかるが、解説の立場ならもっと公正な視点をもっていただきたい。
とにかくこのシリーズはおもしろい。ウィルとサラの関係はまた1歩前進したがアンジーのことが残されており、これからの展開がますます楽しみだ。
2019年8月26日に日本でレビュー済み
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アクションシーンの緊迫感や、小さなコマだと思っていた人物があとで別の顔を見せたり、警察組織の縄張り争いとか、自分好みの要素がちりばめられていて、たしかにおもしろくはあったのだが、それと同じくらい、もやもやした感情も残った。
たぶん、ウィルとサラの恋愛(と呼ぶにはヘビーな感じだが)が自分にとっては邪魔だったのだ。
フェイスも、レナも、ほかの女性登場人物も悪役含めて、いきいきとしているのに、サラが出てきてウィルと絡むシーンになると、暗くどんよりするばかりで。
ウィル・トレント・シリーズの次作にサラが出ないといいのだが。
たぶん、ウィルとサラの恋愛(と呼ぶにはヘビーな感じだが)が自分にとっては邪魔だったのだ。
フェイスも、レナも、ほかの女性登場人物も悪役含めて、いきいきとしているのに、サラが出てきてウィルと絡むシーンになると、暗くどんよりするばかりで。
ウィル・トレント・シリーズの次作にサラが出ないといいのだが。
2019年6月19日に日本でレビュー済み
面白かったし、やっぱり感動揺さぶられた。
今作はウィルの潜入捜査とサラの元夫ジェフリーの事件に関与していたレナの夫の襲撃事件から始まる。
冒頭からいきなりの展開でびっくり、ここでまずハートをつかまれる。
ウィルの良さが前面に出ていた。サラに対して、傷ついた少年たちに対して。優しいかった。ウィルとサラが閉じ込められた少年へ
話す場面は何度も読みなおした。感動する涙。
そして、サラに対して愛の告白をする場面でも涙。
サラとレナの対決もあり。とにかくカリンの作風にはやられる。章ごとの展開が上手い、あと読みやすいしね。
個人的んはレナへの印象が変わった、厄介者と思っていたけどとても辛い経験をしていた、これからの人生をぜひ素敵なものにしてほしいと思った。サラもジェフリーもきっと許してくれると思う。
今作はウィルの潜入捜査とサラの元夫ジェフリーの事件に関与していたレナの夫の襲撃事件から始まる。
冒頭からいきなりの展開でびっくり、ここでまずハートをつかまれる。
ウィルの良さが前面に出ていた。サラに対して、傷ついた少年たちに対して。優しいかった。ウィルとサラが閉じ込められた少年へ
話す場面は何度も読みなおした。感動する涙。
そして、サラに対して愛の告白をする場面でも涙。
サラとレナの対決もあり。とにかくカリンの作風にはやられる。章ごとの展開が上手い、あと読みやすいしね。
個人的んはレナへの印象が変わった、厄介者と思っていたけどとても辛い経験をしていた、これからの人生をぜひ素敵なものにしてほしいと思った。サラもジェフリーもきっと許してくれると思う。