此処最近の本作はそんなに悪い流れにはなっていないように思える。元々の読者が読みたかったであろう展開は既に破綻し、一時期は最早何も期待する事がないというところまで行ってしまったようにも思えたが、段取りが手元に戻って来ているような気もする。一歩の成長譚というストーリーが千堂戦で結実し、世界王者への道が鷹村対ホークでひとつの到達点を迎えた事を思えば本作はボクシング漫画として既に2度の”最終回”を描いているとも言える。そしてもう一つの終着であった筈の一歩対宮田が流れてしまった後で一種の迷走を迎えていたのがようやく霧が晴れてきたような感覚がある。
この巻で描かれる、過去を振り払ってその先に向かう間柴の姿も悪いものでなく、最近の中では最も熱い展開と思えるし、それが一歩にひとつの示唆を与えているのもこの先の本作の未来に前向きな兆しを感じさせるものである。連載が冗長化する中でも作者の中ではある程度の絵が見えているのではと思わせる。
50巻頃の本作を読んでいた読者が求めていたものとは程遠い内容であるに違いないが、また違ったかたちでスポーツ漫画の傑作と呼べるだけの場所に改めて到達してくれるのではないか、という気がしないでもないし、一時期はただ惰性で読んでいた本作をある程度楽しんで読めるようになった、というのは感慨深いものがある。なので作者には投げ出さずに最後まで描ききって欲しい。
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