『はじめの一歩』で一番好きなところは、
森川先生が自分の創ったキャラを研究し、
その弱点や利点、可能性までを、
作品で描こうとしてくれる点です。
その意味で今巻は、
研ぎ澄まされていたと感じました。
どこまで上のレベルにいっても、
それを見せてくれるというのは凄いなと、
いつも驚かされます。
引退した一歩を、それこそ一歩一歩、
現役に近づけているのでしょうが、
そのあまりの堅実ぶりに、
マンガの連載期間と先生の体力を比較し、
大丈夫なのか?
と心配せずにはおれません。
へたをすれば、『未完』の覚悟すら、
胸のうちではされているのかなと、
作風を見て、いつも思います。
長年のファンとしては、
ぜひ先生もファンも納得のいく最後まで、
描いてほしいですし、
描かせてあげてほしいと願っています。
野獣のようなブン回し屋の千堂の強さを、
一歩が理詰めで分析しているシーンが、
今回のお気に入りです。
格闘技は人間と人間の壊しあいなので、
当然、精神論も加わってきます。
それは根性とか勇気といった、
曖昧でフェアなものだけでなく、
恐怖心や反射神経を含めた、
人間のシステムに近いものまでに至り、
発想は『拷問』に近いです。
相手の嫌がることをする。
逆にいえば、させない。
突き詰めれば、それが格闘技であり、
他のスポーツも似た部分はあるでしょうが、
より本能的なもの、
残酷な発想が必要になるのです。
理論が現実に叩き潰されるところを、
格闘技ファンとして、
ぼくは無数に観てきました。
夢や期待も、
ほとんどのものは無惨に潰されます。
森川先生は、それを知っておられるので、
どうしても内容は、
厳しい現実に近いものとなり、
それが一歩の復帰を阻んでいるのも事実かと思います。
だからぼくは、
ただ期待して待ちます。
森川先生はキャラの内面を深く描きつつも、
神の視点で描かれる作家様のため、
今後も、
残酷な現実は、
たくさん描かれていくでしょう。
その度に、キャラクターたちは成長します。
(または、他のキャラの成長の糧となります)
一歩がリカルドとやるまでの道は、
もしかしたら先生にもまだ、
見えていないのかもしれません。
でも、必ずたどり着くと、
信じているのだと思います。
それを、ぼくも信じたいです。
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はじめの一歩(130) (週刊少年マガジンコミックス) Kindle版
ゴンザレスvs.千堂戦の余韻醒めやらぬまま始まったWBAフェザー級世界王者リカルド・マルチネスvs.元WBCフェザー級世界王者ビリー・マッカラム戦。世界タイトルマッチにして事実上の王座統一戦の結末は……一歩は目撃する、神の闘いを、ボクシングの真髄を。その後東京に帰った一歩。見識を深めた一歩が知った、あるチャレンジ……!!
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2021/3/17
- ファイルサイズ82920 KB
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2021年3月17日に日本でレビュー済み
書店で買ったので購入マークはない。単行本は可能な限り書店で買うことにした。電子で出してほしいのだがたぶん出さなそう。
ハンターハンターの連載第1話の主題であるゴンがジンに会うというのと、初期から長きにわたる伏線であったキルアとの別れが32巻で両方回収されるが、その描写に納得できたかと言われると「否」としか言えない。長年伏線張ってたのに描写があっさり過ぎる。ジンがイヌに言うハンター協会十カ条の解釈で選挙の流れを変えられるという伏線もぶん投げ、散々代償の悲劇を思わせぶりにしといてキルアの命令ならノーリスクで聞くナニカで復活するゴン、モラウが「キルアが治したことはゴンには黙っててくれ、頼む」とレオリオに言ったのにキルアが自分からそれをばらす(ハンタという漫画で「頼み」がどういう価値を持つかは読者ならみんな知ってるだろう)、コアラの落書き諸々考えると、たぶんこの32巻の時点で作者の冨樫は一旦色々と投げ出したのだと思われる。
これは本作に関係のある話なので書いた。本作の引き延ばしが過ぎたというのに異論を挟む人は居ないと思うが、最早、こんだけ長く描いたのだからそれ相応の結末に向けたペースでストーリーが進行してくれないと却って困るのである。いきなり、長期連載漫画でよくある「あと何話で完結」みたいなのを本作でやられては堪らない(こういうことを書く漫画は大抵読者が納得できる結末が用意されない)。この期に及んで本作を読んでるのはそんな引き延ばしを惰性だろうがなんだろうが付き合った読者なのであるからして。
この巻ではリカルドの試合が描かれる。前巻にて、本作でここ最近で最高の試合であった千堂対ゴンザレス戦の、リングに残る熱を引き継ごうとするリカルド。対戦相手の実力は申し分ない…が、その熱はリングから次第に引いていく。
かつてリカルドを熱くさせたのは伊達である。彼に敬意を払い、その名前を忘れないとまで言わしめたが、試合自体はリカルドの圧勝であった。つまり、いうなればあの程度の善戦をする相手にすら殆ど出会えてないという事である。ゴンザレスがリカルドに対しどの程度の試合をしたかも推して知るべしというところであろう。
近年の本作ではマチスモというワードがよく出てくるがリカルドも「何故自分のマチスモを理解してくれない」と語る。そんな上り詰めた孤高の存在に並び立つにはいったいどれほどのものを背負い積み重ねる必要があるのか…というのを「3月のライオン」でもやっていたが、同作では最近そのへんは有耶無耶になってきている笑。その理由は本作のリカルドの描写ともちょっと関係あるのだが話が脱線するので書かない。
そんなリカルドと同じ場所に居るのが鷹村である。リカルドと違ってあまり真面目に振る舞わないので解りにくいが、ホーク戦でボクサーとしての彼は極まってしまっている。あの試合では鴨川やジムの仲間たちがかれを支えてくれているが恐らく今の鷹村にその「手」は必要ない。
その鷹村は人外という世界との線を引いてみせたがその伏線も此処に繋がってくる。伊達は愛する女の為に戦った、つまり人外でなく人間として戦った訳だが、リカルドには遠く及ばなかったわけである。ついでに人外というが、あくまでもリカルドや鷹村は人間なのだが、立つ場所が高すぎるので人の常識を逸脱しているという意味で人外なわけである。
前巻にてゴンザレスへの最後の一発を放てた千堂とそれを放つ前に意識が絶たれた一歩、というのはその人外と人間の間に引かれた線を表していると言える。その線を踏み越える覚悟がなかったからこそ一歩は現役を退いたのであり、彼はその後、様々な「学び」を続けている。その学びから導き出される解答として、鷹村の引いた線を超えるのか、伊達から渡されたバトンを受け取るのか、というふたつの選択への答えは既定であろう現役復帰と繋がってくるだろう。
巻の後半ではその鷹村の三階級制覇に向けて話が動き出す。此処で対戦相手の趣味が麻雀とあり、作中で麻雀をやってるシーンも有る。次巻予告をみると次巻でも麻雀のシーンがあるらしい。話によると作者の森川ジョージも麻雀にハマっているとか。ので、ネットで本作の麻雀シーンが笑いのネタにされているのを見かけたことがある。
これ以外に最近、ネットで本作を見かけたのは、泰平を殴って自首しますのくだりと、セコンドとして椅子置きの練習をしてるくだりである。間柴対伊賀や千堂対ゴンザレスなどまったく話題にもせず、こういう嘲笑できそうなシーンだけ切り貼りされているのである。この漫画を読み続けている自分から言わせてもらえば、これらはすべてストーリー上で意味のある描写なのである。例えば泰平をぶん殴るくだりでは一歩の「人外化」が示唆されている。麻雀にしても鷹村の世界戦に向けて「運」というワードが出てくる。この「運」というテーマは次巻でも引き継がれるらしい、というのが予告をみると解る。その「運」を掘り下げるディテールのひとつとしてギャンブルである麻雀を出しているだけだろう。ストーリー的には意味があるのだ。森川本人の趣味が反映されているからなんだというのだ。作者の趣味を作中に反映させる漫画などいくらでもあるだろ。
ギャグ描写は高齢の作者だけあって流石にしんどいものが多く、英語も読めない鴨川ジムの連中、という描写に至っては長期連載が過ぎる作品への自虐だとすら思えるが、久美ちゃんの描写だけは笑った。…なんか、もう「ちゃん」呼びが似合わない女性だけども、私は以前の美少女よりもいまの人間臭い彼女のほうが好きだよ。
世界戦に向け、「運」というテーマを取り入れる理由はなんとなく察せられる。これも長年の伏線としてある、鷹村の目について繋がってくるのだろうと思われる。なんとなく無かったことのようにされた設定っぽいが、たまにそれを匂わせる描写はある。簡単に済まされた試合でも「鷹村の弱点は解っている」と相手が言い、パンチを喰らうシーンが有る。片目だけ、眼球が白く描かれているシーンもあった筈だ。よって、「一歩は弱くなった」やウォーリー戦でのミゲルの警告が一歩のパンドラへの伏線であったのと同様、この伏線も生きていると考えるのが妥当であろう。一歩と同じく、鷹村も爆弾を抱えつつ、孤高の道を進んでいるのだ。鷹村の「世界戦についてのこだわり」というのもその理由は今後はっきりと解るだろうが、そこにつながるのかもしれない。
バイソン戦では、もう鷹村の世界戦でも面白い試合が描けないのか…と落胆したが、同じ頃にやった間柴と千堂の試合も「虎の絵くらい真面目に描けや」といいたくなるひどい有様だったのが最近ではご存知の通りなので、この試合にも期待したくなるではないか。作品のネジのまきなおしはもう完了しているのである。
知らん人がネットで切り貼りされたもんだけみて笑ってるなら別にいいのだが、「最近の本作はマシになってるとか言われてるけどこんな事やってんのか」みたいな意見は真剣にムカつく。「こんだけ長く続いても終わりが見えない」みたいな意見もムカつく。こっちは切り貼りされたもんではなくて全体をみて「マシになってる」と言ってるのであり、「終わり」はある程度は見えてきており、一時期盛大に横道に逸れまくっていたのは否定しないが、現在は一本道をまっすぐ進んでるのだ。よって、毎巻書いておりこの先も書き続けるが、作者はそんな連中の批判は一切無視してほしい。彼らは「読者」ではないのだから。「引き延ばして落ちぶれた漫画」というレッテル(まあ、事実に基づくのだが)を剥がすべく改められた現在の姿をみずにいまでもレッテル貼られた姿しか見ないひとなんぞほっといて、単行本買ってる「読者」の為だけに描いてくれりゃいい。これは何度言っても言い過ぎるということは無いと思う。
引き延ばされたのは事実である。それでおおくのひとが本来求めていたものが読めなくなったのも事実である。作者が明らかにある時期慢心して舐めた内容を描いていたのも事実である。それに失望するか呆れて、去った読者の判断は極めて正しい。今現在の展開はその失望を補って余りある内容だから戻ってきても大丈夫、とはまったく言わない。ネットで切り貼りされたもんで笑いたい人も好きにすればいいよ。でも作者はその手の批判を相手にする必要は一切ない。最初に触れたハンタみたいに適当に話畳まれたら困るもん。引き延ばした話と違和感ないペースで進めてくれりゃいい。そんでも板垣対冴木というしょーもない試合を延々描いてたころと比較すりゃ可能な限りストーリーをコンパクトに纏めているのは読んでるこっちには解っている。この続きも楽しみにしているし無理のないようにやって頂きたい。単行本の表紙絵が毎回なんかテキトーな事くらい大目に見るよ。大事なのは内容だから。
…最近、この漫画を持ち上げまくったレビューを毎回書いてるのだが、他の読者を舐め腐った引き延ばし長期連載漫画家と比べりゃ、最早惰性で読み続けるしか無いと諦めきっていたあの惨状から此処まで持ち直した作者はきちんと評価してあげないといけない。内容も面白いんだし、ネットではろくに読みもせずに嘲笑われてんだから、読者である自分がこんくらい褒めたって別にいいだろう。これも言い過ぎるという事はない。信者扱いされようが知ったことではない。
ハンターハンターの連載第1話の主題であるゴンがジンに会うというのと、初期から長きにわたる伏線であったキルアとの別れが32巻で両方回収されるが、その描写に納得できたかと言われると「否」としか言えない。長年伏線張ってたのに描写があっさり過ぎる。ジンがイヌに言うハンター協会十カ条の解釈で選挙の流れを変えられるという伏線もぶん投げ、散々代償の悲劇を思わせぶりにしといてキルアの命令ならノーリスクで聞くナニカで復活するゴン、モラウが「キルアが治したことはゴンには黙っててくれ、頼む」とレオリオに言ったのにキルアが自分からそれをばらす(ハンタという漫画で「頼み」がどういう価値を持つかは読者ならみんな知ってるだろう)、コアラの落書き諸々考えると、たぶんこの32巻の時点で作者の冨樫は一旦色々と投げ出したのだと思われる。
これは本作に関係のある話なので書いた。本作の引き延ばしが過ぎたというのに異論を挟む人は居ないと思うが、最早、こんだけ長く描いたのだからそれ相応の結末に向けたペースでストーリーが進行してくれないと却って困るのである。いきなり、長期連載漫画でよくある「あと何話で完結」みたいなのを本作でやられては堪らない(こういうことを書く漫画は大抵読者が納得できる結末が用意されない)。この期に及んで本作を読んでるのはそんな引き延ばしを惰性だろうがなんだろうが付き合った読者なのであるからして。
この巻ではリカルドの試合が描かれる。前巻にて、本作でここ最近で最高の試合であった千堂対ゴンザレス戦の、リングに残る熱を引き継ごうとするリカルド。対戦相手の実力は申し分ない…が、その熱はリングから次第に引いていく。
かつてリカルドを熱くさせたのは伊達である。彼に敬意を払い、その名前を忘れないとまで言わしめたが、試合自体はリカルドの圧勝であった。つまり、いうなればあの程度の善戦をする相手にすら殆ど出会えてないという事である。ゴンザレスがリカルドに対しどの程度の試合をしたかも推して知るべしというところであろう。
近年の本作ではマチスモというワードがよく出てくるがリカルドも「何故自分のマチスモを理解してくれない」と語る。そんな上り詰めた孤高の存在に並び立つにはいったいどれほどのものを背負い積み重ねる必要があるのか…というのを「3月のライオン」でもやっていたが、同作では最近そのへんは有耶無耶になってきている笑。その理由は本作のリカルドの描写ともちょっと関係あるのだが話が脱線するので書かない。
そんなリカルドと同じ場所に居るのが鷹村である。リカルドと違ってあまり真面目に振る舞わないので解りにくいが、ホーク戦でボクサーとしての彼は極まってしまっている。あの試合では鴨川やジムの仲間たちがかれを支えてくれているが恐らく今の鷹村にその「手」は必要ない。
その鷹村は人外という世界との線を引いてみせたがその伏線も此処に繋がってくる。伊達は愛する女の為に戦った、つまり人外でなく人間として戦った訳だが、リカルドには遠く及ばなかったわけである。ついでに人外というが、あくまでもリカルドや鷹村は人間なのだが、立つ場所が高すぎるので人の常識を逸脱しているという意味で人外なわけである。
前巻にてゴンザレスへの最後の一発を放てた千堂とそれを放つ前に意識が絶たれた一歩、というのはその人外と人間の間に引かれた線を表していると言える。その線を踏み越える覚悟がなかったからこそ一歩は現役を退いたのであり、彼はその後、様々な「学び」を続けている。その学びから導き出される解答として、鷹村の引いた線を超えるのか、伊達から渡されたバトンを受け取るのか、というふたつの選択への答えは既定であろう現役復帰と繋がってくるだろう。
巻の後半ではその鷹村の三階級制覇に向けて話が動き出す。此処で対戦相手の趣味が麻雀とあり、作中で麻雀をやってるシーンも有る。次巻予告をみると次巻でも麻雀のシーンがあるらしい。話によると作者の森川ジョージも麻雀にハマっているとか。ので、ネットで本作の麻雀シーンが笑いのネタにされているのを見かけたことがある。
これ以外に最近、ネットで本作を見かけたのは、泰平を殴って自首しますのくだりと、セコンドとして椅子置きの練習をしてるくだりである。間柴対伊賀や千堂対ゴンザレスなどまったく話題にもせず、こういう嘲笑できそうなシーンだけ切り貼りされているのである。この漫画を読み続けている自分から言わせてもらえば、これらはすべてストーリー上で意味のある描写なのである。例えば泰平をぶん殴るくだりでは一歩の「人外化」が示唆されている。麻雀にしても鷹村の世界戦に向けて「運」というワードが出てくる。この「運」というテーマは次巻でも引き継がれるらしい、というのが予告をみると解る。その「運」を掘り下げるディテールのひとつとしてギャンブルである麻雀を出しているだけだろう。ストーリー的には意味があるのだ。森川本人の趣味が反映されているからなんだというのだ。作者の趣味を作中に反映させる漫画などいくらでもあるだろ。
ギャグ描写は高齢の作者だけあって流石にしんどいものが多く、英語も読めない鴨川ジムの連中、という描写に至っては長期連載が過ぎる作品への自虐だとすら思えるが、久美ちゃんの描写だけは笑った。…なんか、もう「ちゃん」呼びが似合わない女性だけども、私は以前の美少女よりもいまの人間臭い彼女のほうが好きだよ。
世界戦に向け、「運」というテーマを取り入れる理由はなんとなく察せられる。これも長年の伏線としてある、鷹村の目について繋がってくるのだろうと思われる。なんとなく無かったことのようにされた設定っぽいが、たまにそれを匂わせる描写はある。簡単に済まされた試合でも「鷹村の弱点は解っている」と相手が言い、パンチを喰らうシーンが有る。片目だけ、眼球が白く描かれているシーンもあった筈だ。よって、「一歩は弱くなった」やウォーリー戦でのミゲルの警告が一歩のパンドラへの伏線であったのと同様、この伏線も生きていると考えるのが妥当であろう。一歩と同じく、鷹村も爆弾を抱えつつ、孤高の道を進んでいるのだ。鷹村の「世界戦についてのこだわり」というのもその理由は今後はっきりと解るだろうが、そこにつながるのかもしれない。
バイソン戦では、もう鷹村の世界戦でも面白い試合が描けないのか…と落胆したが、同じ頃にやった間柴と千堂の試合も「虎の絵くらい真面目に描けや」といいたくなるひどい有様だったのが最近ではご存知の通りなので、この試合にも期待したくなるではないか。作品のネジのまきなおしはもう完了しているのである。
知らん人がネットで切り貼りされたもんだけみて笑ってるなら別にいいのだが、「最近の本作はマシになってるとか言われてるけどこんな事やってんのか」みたいな意見は真剣にムカつく。「こんだけ長く続いても終わりが見えない」みたいな意見もムカつく。こっちは切り貼りされたもんではなくて全体をみて「マシになってる」と言ってるのであり、「終わり」はある程度は見えてきており、一時期盛大に横道に逸れまくっていたのは否定しないが、現在は一本道をまっすぐ進んでるのだ。よって、毎巻書いておりこの先も書き続けるが、作者はそんな連中の批判は一切無視してほしい。彼らは「読者」ではないのだから。「引き延ばして落ちぶれた漫画」というレッテル(まあ、事実に基づくのだが)を剥がすべく改められた現在の姿をみずにいまでもレッテル貼られた姿しか見ないひとなんぞほっといて、単行本買ってる「読者」の為だけに描いてくれりゃいい。これは何度言っても言い過ぎるということは無いと思う。
引き延ばされたのは事実である。それでおおくのひとが本来求めていたものが読めなくなったのも事実である。作者が明らかにある時期慢心して舐めた内容を描いていたのも事実である。それに失望するか呆れて、去った読者の判断は極めて正しい。今現在の展開はその失望を補って余りある内容だから戻ってきても大丈夫、とはまったく言わない。ネットで切り貼りされたもんで笑いたい人も好きにすればいいよ。でも作者はその手の批判を相手にする必要は一切ない。最初に触れたハンタみたいに適当に話畳まれたら困るもん。引き延ばした話と違和感ないペースで進めてくれりゃいい。そんでも板垣対冴木というしょーもない試合を延々描いてたころと比較すりゃ可能な限りストーリーをコンパクトに纏めているのは読んでるこっちには解っている。この続きも楽しみにしているし無理のないようにやって頂きたい。単行本の表紙絵が毎回なんかテキトーな事くらい大目に見るよ。大事なのは内容だから。
…最近、この漫画を持ち上げまくったレビューを毎回書いてるのだが、他の読者を舐め腐った引き延ばし長期連載漫画家と比べりゃ、最早惰性で読み続けるしか無いと諦めきっていたあの惨状から此処まで持ち直した作者はきちんと評価してあげないといけない。内容も面白いんだし、ネットではろくに読みもせずに嘲笑われてんだから、読者である自分がこんくらい褒めたって別にいいだろう。これも言い過ぎるという事はない。信者扱いされようが知ったことではない。